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本編

2章{アンビシャス ミッション}

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役割を果たした桜が目を覚まし、鳴き声をあげながらオエヴィート学院をのそのそ出ていく。
この合図に今日から全学年、夏季休業が始まる。

この期間を使って、予習と好きな分野の研究ができる。
39度を超える猛暑続きの夏季休業。流石に暑すぎるせいか、クーラーも中々効かない。
私は下着で自室にこもり勉強をしていた。

「インフャット~、入っていいかい?」
ノックしながら質問をするカルビュヂュが聞こえる。
夏季休業恒例、課題を教えてもらう、いや、写しに来たのだろう。

「どうぞ、入ってください。」

「インフャット、課題を  」

やはり、課題を写しに来た。
終わらせた課題を入れたスクールバックを無言で渡そうとすると
私を見たまま後ずさりをする。

「冷たい視線でどうしたのですか?」

「す、すまん。せめて服を着てくれないか?俺出てくから!」

何故か反射的に謝ってカルビュヂュが私の部屋から出ていく。

私の下着が嫌いだったのだろう。仕方なく近くにあった制服に着替え、カルビュヂュを呼ぶ。

「マジで申し訳なかった。」

「?。何もしてないのに謝られると私が困るのですが?」

「インフャットは男の気持ちなんて分からないからな。」

と差別的表現でカルビュヂュに煽られた。

そんな煽り言葉を無視し、終わった課題をカルビュヂュに投げつけ、予習をしに机へ戻る。

「トイジョイさん、普通の会社に40年も働いてたってスゲーよなぁ。」

「そうですね」

「家族旅行に行こうとして事故って、自分だけ残るってつらいよな」

「そうですね」

「その事故以来、インフャットの手紙が来るまで気軽に話す相手がいなかったんだってな」

「  」

トイジョイさんが来たことを父親に話されたのか、カルビュヂュが早口に話をしながらぎこちなく課題を写していく。
あまりにもしつこく話されたので私は無言を貫き通し相手にしないようにしたが効き目はなくカルビュヂュは
マシンガントークを続けた。

マイクロコンピューター9章の予習が終わり私は振り返ると、丁度課題を書き写し終わったのか、カルビュヂュがあくびをする。

予習して、カルビュヂュが課題を写す。そんな繰り返しで夏季休業を消化していく。

夏季休業が始まり、一週間。玄関から大きな声が響いた。

「インフャット~、おるか~?」

今日は父親が休日出勤だったため
私は、画像心理学を閉じ、げんなりしながら玄関へ向かうと
トイジョイさんはおらず、勝手にリビングのソファーに座りいきなり
「インフャットに仕事を与えよう」

嫌な予感がした。夏季休業中、暇だと思い込んでいるのだろう。
「わしと一緒に探してほしい人がおるんじゃ。昔のわしの友人でなぁ、ポルンフイクっていう名前でなぁここから、少し遠いksb地区に住んでてなぁ…。」

「その人がksb地区にまた引っ越してきたから見つけてほしいということですか?」

「さすがインフャット。そのとおりでなぁ」

ksb地区は急行列車に搭乗すれば1時間で済む場所にある。

トイジョイさんが言うにはその友達と、6年前まで手紙でやり取りをしていたのだが、突如音信不通になった言う。
しかし最近、前から頼んでた友人の探偵事務所から連絡が来て、ksb地区にいることが判明したがそれ以上のことはわからなかったという。

「さすがに無理かと思います。探偵でも特定不可能ならば、私でも尚更厳しいです。」

「見つかるかどうかなんて、やってみなきゃ分からないじゃろ?頼むわぁ~。報酬は出すからやぁ」


そして、

「なんで私たちは急行列車に乗ってるのですか?」

「まぁ休みなんだし、いいじゃねぇか。」

トイジョイさんと話してたらいつの間にかカルビュヂュも聞いており、面白そうじゃねぇか!と騒ぎ出し
1対2でksb地区へと向かうことになった。

急行列車が一定の速度で景色を動かしても、トイジョイさんはキョロキョロする。
無言で外を見たり、列車内を見渡したり…。会えるかどうか心配でソワソワしているのだろう。

そんな緊張の糸を切るかのようにカルビュヂュが口を開く。

「といじぃ、見てくれるよ。俺天才だからさぁこいつ持ってきたんだよねぇ」

と取り出したものはksb地区の3Dホログラム地図だった。

「おぉ、こりゃあ偉いもん持ってきたなぁカルビュヂュ。お前さんは気が利くのぉ。」

本当に天才ならば、課題を自分でやるものだと思いながら、参考書を読む。

「しかもなぁ、万が一に備えて、記念でもらったこの、公衆電話一時間無料カードを持ってきたんだぜぇ。」

「おぉ、インフャットより役に立つのぉ。カルビュヂュさんは~。ついてきてもろて安心じゃ。」

困って私の家まで来たくせに、使えないとは、流石に頭にくるものだ。
しかし初対面で会った酷い印象が強く残っており、
こんなに機嫌のよいトイジョイさんは初めて見たかもしれない。

「といじぃが探してるのってどんな友人ってどういう人なんだい?昔の級友とかかい?」

トイジョイさんはカルビュヂュと楽しく話す。

「そんな、なまぬるいもんじゃ~ない。一緒に戦った戦友や。」
「国同士の戦争なんてあったっけか?」
「国同士やない。幻妖の国アガチャル、の内戦に突入させられたんじゃ。」
「あぁ、今はだいぶ落ち着いたけど、昔は酷かったいうしなぁ」
「そうや。お前さんたちはその戦争のこと知ってるんかい?」
「科学を発展させるために幻妖の国アガチャルを内戦状態にしたとかしてないとか、都市伝説で言ってたからなぁ。」

「インフャットはどうや?」

「私は全く分りませんね。」

被害が大きかった。それぐらいしか頭に残ってない。

「そりゃあそうじゃろおうなぁ、何十年前の話じゃからなぁ。」

「戦争法を破って罪のない国民を殺したり村を焼いたりしたとかきいたことがあるんだけどあれほんまなん?」

「あぁ、その通りや」

「終戦後にわしもその事実を知ったんや。昔、この国科学の国ヴェヴェンべ幻妖の国アガチャルの土地を燃やして実験所を建設し、原住民で実験するなんて当たり前じゃった。
科学研究をしていかに殺せるか、生命の本当の弱点はどこかと幻妖の国アガチャルの国民を材料として菌を植え付けたり、解剖したり様々じゃった。

「どうしておんなじ、生命なのにそんなことできるんだ?」

「戦争は人を邪神に変えてしまうんじゃ。でもそれで今の便利な世の中がある。悲しいが戦争で技術力が上がるのは事実なのじゃ。」

「といじぃ達もやっぱり、そんなことしてしまったんか?」

「わしらは弱くてすぐに捕まってしまったからそんなことはしなっかったんじゃ。
というよりわしらは皆、子供や妻がいて、早よ帰りたい早よ帰りたいと
最後尾でずっと流れ弾に気を付けながら警備をしてたんじゃ。」

「それならあまり怖い思いしなくて済んだんだな」

「そんなことない、流れ弾で隣の仲間が死んだりしたんじゃ。もうあの光景はトラウマってものじゃな。」

「マジか。それでその後どうなったん?」

カルビュヂュは興味津々で身を乗り出して質問をし、トイジョイさんは額の汗をタオルで拭きながら答える。

私は見ていた参考書を白紙にし、耳だけはトイジョイさんの方を見ていた。
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