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青木 森

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15_宿縁の章_44

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 宇宙へ向けて矢の様に突き進むフォースガルシア――
 クルー達はかつて経験した事が無い重力加速度による圧力から、体ごとシートに押し付けられ、
「「「「「「「「「「グゥグググググッ!!」」」」」」」」」」
 苦悶の声を漏らし歯を食いしばる。そんなさ中、イサミとアリアナは幼いながらも自身の恐怖心を押し殺し、激しく揺さぶられるシートの上で、
「「ダイジョウブだから!」」
 あまりの恐怖で声さえ出す事が出来ないトシゾウとソウシを、姉として両脇からしっかり抱き締める。
 瞬く間に成層圏を駆け抜け、中間圏、熱圏、外気圏を突き破り、宇宙空間へ達するフォースガルシア。
 気が付けば、辺りは闇に光り輝く星々の真っただ中。足元には青く輝く水の星、地球の美しい姿も。
 船体側面下部のスラスターを噴射しながら速度を徐々に落としつつ、静止軌道への遷移を開始。
 音の無い世界。
 つい数分前までの喧騒から一変した嘘の様な静けさに、
「あの世ではなさそうだなぁ~」
 ブリッジクルー達の中から冗談交じりの安堵の声が聞こえ始めると、キャプテンシートの隣の補助イスで、シートベルトに体を固定したままのソフィアが手元のタブレットに集約された現状データを確認しつつ、表情を若干緩め、
「艦長、本艦は予定の静止軌道に乗りました」
「うむ」
 イノウエ艦長は短く頷き、
「通信長、各員に通達。再度「気密の確認」と、「艦内の浮遊物に留意せよ」と」
「アイサっス」
 ナタリーはヘッドセットを操作し、
「あっ、あぁ~聞こえるっスかぁ? みんなゲンキっスかぁ? 艦長より、「気密の確認」と「艦内の浮遊に注意せよ」って通達っスぅ」
 何とも気の抜けた艦内放送に、苦笑いのクルー達。ナタリーの「場を和ませよう」と言う気遣いと理解した上で。
 その頃、治療室では重力加速から解放されたワイスカムアが、
「何とも気の抜けた物言いでありんすなぁ」
 シートベルトを外すとリペアボックスに浮遊して張り付き、小窓からファティマの様子を覗き込み、
「無事の様でありんすなぁ……」
 安堵の笑みを見せた。
『当たり前でしょ! その為にヤマトが順番を譲ってあげたんだから!』
 背後から気色ばんだ声。
「…………」
 振り返ると、横たえるヤマトに覆い被さるジゼが憤慨顔を向けていた。
「じ、ジゼ……お……俺は大丈夫だから……」
 苦悶の表情の中に、笑顔を浮かべるヤマト。
「だってぇ……」
 治療中のファティマにたいする気遣いに、ジゼはそれ以上、不満を口にする事が出来なかった。ヤマトの行為を無下にするのと同じに思えたから。
 しかし、腹の虫がおさまらないジゼは毅然とした表情で、
「でも、覚悟はして!」
「『覚悟』とな?」
「今、この時、この船に乗っているいじょう、アナタ達にも私達と同じ『業』を背負ってもらうわ!」
(ごう?)
 言われている意味が分からず、不思議そうな顔をするワイスカムア。
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