CLOUD(クラウド)

青木 森

文字の大きさ
上 下
506 / 535

15_宿縁の章_18

しおりを挟む
 衝撃による雪煙吹きすさぶ中、
「ば、馬鹿……やろォ……が……」
 よろよろと起き上がるジャックと、
「だ、誰が……おバカ……ですの……」
 フラつきながらも起き上がるマリア。
「それにしても……何でございましょう……」
「あぁ?」
「まるで……まるで巨大な壁を相手に戦っている様な……昔味わった事のある無力感を、既視感として感じますわぁ……」
 困惑した笑みを浮かべ、悠然と待ち構えるアナクスとアナスを見据えると、ジャックは皮肉った笑みを浮かべ、
「そりゃあそうだろうよ」
「え?」
 きょとん顔のマリアを横目に立ち上がり、
『旧知の顔に随分なご挨拶じゃねぇかァ! なぁ、ワイスカムアとナアクスカムアさんよぉ!』
「「!」」
 驚く二人と、
「な!?」
 二人以上の驚きを見せるマリアと、フードの二人。
「何を言ってますのジャック! 二人は意識ごと消去されてぇ!」
「理屈なんざぁ知らねぇ!」
 ジャックは言い放ち、
「今までの事をよくよく考えて見りゃ、分かりそうな話じゃねぇか。変態的な最強へのこだわり、俺への毛嫌い、そして何より、俺の事を『粗忽者』と言いやがった」
「「…………」」
「俺を粗忽者呼ばわりで見下しやがるのは絶望神ナアクスカムア(アナス)、テメェだけだったからなぁ!」
「…………」
 信じ難い推測にマリアが言葉を取り戻せずにいると、アナスは「ハッハッハ」と高笑いを一つ上げ、
「万年かかって、やっと人並みの頭になったでござるか、ナムクスカムア(ジャック)!」
「チッ」
 いつもの様に逆上せず、小さく舌打ちするジャック。
 それには理由があった。
 スティーラーとは国を護り、相手の国を奪う、言うなれば戦闘のスペシャリスト。
 対してクローザーはその圧倒的火力を以って、裏切り者のスティーラーを破壊する為に造られた者であり、実戦経験は乏しい者達の集まり。ジャックはその一点にこそ付け入る隙があると思っていたのだが、結果は最悪、目の前の二人はスティーラーの戦闘経験値と、クローザーの攻撃力を兼ね備えた最強の戦士であった。
 顔には出さず、
(ちとやべぇな……)
 内心に焦りを覚えると、
「いけませんわァ!」
 マリアは参戦の動きを見せたフードの二人を声で制し、
「ジャック! 貴方もですわ!」
「あぁ?」
「わたくし達の務めを忘れましたの!」
「!」
(コイツ等のチカラを推し量る事と、戦闘力の可能な限りのそぎ落とし!)
 クローザーと同等の身になり、心の何処かに勝てるつもりの自分が居たことに気付かされ、
「チッ」
(マリアに諭されるとはなぁ)
 舌打ちしながらも自らを嘲り笑い、
「皆まで言うんじゃねぇ、ハナから分ぁ~てんだよ!」
 アナスとアナクスとなった、ナアクスカムアとワイスカムアを見据え、
「足引っ張っんじゃねぇぞ、「二面の死神」ィ!」
「わたくしより下位の「狂気神」に言われたくありませんわぁ♪」
 二人は笑い合い、
「「リスト、ロードォ!」」
 得意武器を手に構え直し、
「行くぞ!」
「行きますわよ!」
 走り出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお
ファンタジー
【書籍化します!】2022年12月下旬にレジーナブックス様から刊行されることになりました! 定番の転生しました、前世アラサー女子です。 前世の記憶が戻ったのは、7歳のとき。 ・・・なんか、病的に痩せていて体力ナシでみすぼらしいんだけど・・・、え?王女なの?これで? どうやら亡くなった母の身分が低かったため、血の繋がった家族からは存在を無視された、みそっかすの王女が私。 しかも、使用人から虐げられていじめられている?お世話も満足にされずに、衰弱死寸前? ええーっ! まだ7歳の体では自立するのも無理だし、ぐぬぬぬ。 しっかーし、奴隷の亜人と手を組んで、こんなクソ王宮や国なんか出て行ってやる! 家出ならぬ、王宮出を企てる間に、なにやら王位継承を巡ってキナ臭い感じが・・・。 えっ?私には関係ないんだから巻き込まないでよ!ちょっと、王族暗殺?継承争い勃発?亜人奴隷解放運動? そんなの知らなーい! みそっかすちびっ子転生王女の私が、城出・出国して、安全な地でチート能力を駆使して、ワハハハハな生活を手に入れる、そんな立身出世のお話でぇーす! え?違う? とりあえず、家族になった亜人たちと、あっちのトラブル、こっちの騒動に巻き込まれながら、旅をしていきます。 R15は保険です。 更新は不定期です。 「みそっかすちびっ子王女の転生冒険ものがたり」を改訂、再up。 2021/8/21 改めて投稿し直しました。

魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。

ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は 愛だと思っていた。 何度も“好き”と言われ 次第に心を寄せるようになった。 だけど 彼の浮気を知ってしまった。 私の頭の中にあった愛の城は 完全に崩壊した。 彼の口にする“愛”は偽物だった。 * 作り話です * 短編で終わらせたいです * 暇つぶしにどうぞ

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

未来人が未開惑星に行ったら無敵だった件

藤岡 フジオ
ファンタジー
四十一世紀の地球。殆どの地球人が遺伝子操作で超人的な能力を有する。 日本地区で科学者として生きるヒジリ(19)は転送装置の事故でアンドロイドのウメボシと共にとある未開惑星に飛ばされてしまった。 そこはファンタジー世界そのままの星で、魔法が存在していた。 魔法の存在を感知できず見ることも出来ないヒジリではあったが、パワードスーツやアンドロイドの力のお陰で圧倒的な力を惑星の住人に見せつける!

処理中です...