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14_歪の章_40
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振り返るヤマト達。
「「「「「「!」」」」」」
そこに立っていたのは、ナヤス。
壁をつっかえ棒代わりに、いつもの「世界中の不幸を背負った様な仄暗い表情」を、より一層暗くして。
「ルムちゃん!」
慌てて駆け寄るシャーロット。脇からかかえる様に支えると、
「ふへぇ」
変わらぬ「下手な微笑(般若の様な顔)」を浮かべ、
「心配し過ぎです……ナヤスは、だいじょうぶです……」
姉に対するツッコミに、以前の様な鋭さは無かった。
「勝算てのは何なんだ!」
急くジャック。ヤマトは宥める様に、
「気持ちは分かるけど落ち着けぇって」
その様に大人の対応で諫められると、自らの振る舞いがひときわ幼く思え、もはや黙るしかなく、苛立ちのはけ口を失ったジャックは、
(女には相変わらず甘ぇ……天然のタラシがぁ)
「聞こえてるぞぉ」
「聞こえる様に言ったんだ」
すねた顔して横向いた。
ヤレヤレ顔してナヤスに笑って見せるヤマト。気遣いに、ナヤスは感謝した(つもりの)笑顔を返し、
「三位以下のクローザーに保存されている、序列一位と二位のクローザーのパーソナルデータを見る限り、二人は確かに強敵ではありますが、付け入るスキが十分ある性格のようでしたから」
「でした?」
過去形の物言いに、ジゼが首を傾げ、
「付け入るスキがあったのに負けたって事は、何か変化があったってこと?」
「ジゼ」
それとなく苦言を呈するヤマトに、ハッとするジゼ。ジャックとマリアの胸中をないがしろにした発言である事に気付き、
「ご、ゴメン……」
慌てて謝罪すると、ジャックは無視する様にソッポを向いたままであったが、マリアは優しくも微笑み返してくれた。
しかし今は、無理をして気遣ってくれた微笑みが、むしろ心に痛かった。
謝罪に謝罪を重ねても、空々しく聞こえるだけである事を理解するジゼ。
(本当にごめん……)
心の内で不穏当であった発言を猛省。大きく凹む中、シャーロットに支えられたナヤスは話を続け、
「何があったかまでは想像も出来ません。ですが、用意周到なお二人が負けたと言う事実は、何かしらのイレギュラーが発生したのだとしか考えられません」
「チッ、ようは何も分からねぇんじゃねぇか。話になんねぇ」
毒づきつつ、
(二人だけで行かせるんじゃなかった……)
心の中では分かれた時の事を今更のように強く後悔し、兄として何も出来なかった無力な自分に奥歯を噛み締めたが、マリアは起きてしまった悲しい現実に浸るより、これから先を見据えた様な凛然とした眼差しで、
「だからと言って、わたくし達のする事に変わりはありませんわ」
「「「「「「!」」」」」」
何をすべきか迷走しそうになったヤマト達に、マリアは明確な道を指し示し、
「確かにそうだなぁ」
「だよね」
同意して頷く彼らに笑顔を向けた。
人をからかい、困っている所を見て楽しむ悪癖があるマリアではあったが、核戦争で混乱に陥りかけたオーストラリアを立て直し、人心を導いたカリスマ性は伊達ではない一面を披露した。
混沌とした中に、光を見い出したヤマト達がクローザーとの決意を新たにするさなか、
「ジャック、後で個人的に話がありますの。よろしくて?」
するとマリアの目から何かを感じ取ったジャックはニヤリと笑い、
「奇遇だなぁ。オレも用があったんだ。なんならぁ今からでもイイぜぇ」
マリアは頷くと、
「そう言う事でございますので皆様、申し訳ありませんが、わたくし達は稽古を先に上がらせていただきますわ」
笑顔を残し、ジャックを連れ立ち去って行った。
去った二人の背中と笑みに、一抹の不安を覚えるヤマトとジゼ。
「…………」
「…………」
お互いの胸の内を確認し合う様に無言でアイコンタクトを交わしていると、
「「!?」」
ジゼが腕を強引に引っ張られ、
「シセの目が黒いうちは、目と目で通じ合いなどさせませぇんよ!」
シセはヤマトに敵意丸出しの目を向けた。
異常事態が判明した直後でありながら変わらぬ姿勢のシセに、思わず苦笑うヤマト達。
「「「「「「!」」」」」」
そこに立っていたのは、ナヤス。
壁をつっかえ棒代わりに、いつもの「世界中の不幸を背負った様な仄暗い表情」を、より一層暗くして。
「ルムちゃん!」
慌てて駆け寄るシャーロット。脇からかかえる様に支えると、
「ふへぇ」
変わらぬ「下手な微笑(般若の様な顔)」を浮かべ、
「心配し過ぎです……ナヤスは、だいじょうぶです……」
姉に対するツッコミに、以前の様な鋭さは無かった。
「勝算てのは何なんだ!」
急くジャック。ヤマトは宥める様に、
「気持ちは分かるけど落ち着けぇって」
その様に大人の対応で諫められると、自らの振る舞いがひときわ幼く思え、もはや黙るしかなく、苛立ちのはけ口を失ったジャックは、
(女には相変わらず甘ぇ……天然のタラシがぁ)
「聞こえてるぞぉ」
「聞こえる様に言ったんだ」
すねた顔して横向いた。
ヤレヤレ顔してナヤスに笑って見せるヤマト。気遣いに、ナヤスは感謝した(つもりの)笑顔を返し、
「三位以下のクローザーに保存されている、序列一位と二位のクローザーのパーソナルデータを見る限り、二人は確かに強敵ではありますが、付け入るスキが十分ある性格のようでしたから」
「でした?」
過去形の物言いに、ジゼが首を傾げ、
「付け入るスキがあったのに負けたって事は、何か変化があったってこと?」
「ジゼ」
それとなく苦言を呈するヤマトに、ハッとするジゼ。ジャックとマリアの胸中をないがしろにした発言である事に気付き、
「ご、ゴメン……」
慌てて謝罪すると、ジャックは無視する様にソッポを向いたままであったが、マリアは優しくも微笑み返してくれた。
しかし今は、無理をして気遣ってくれた微笑みが、むしろ心に痛かった。
謝罪に謝罪を重ねても、空々しく聞こえるだけである事を理解するジゼ。
(本当にごめん……)
心の内で不穏当であった発言を猛省。大きく凹む中、シャーロットに支えられたナヤスは話を続け、
「何があったかまでは想像も出来ません。ですが、用意周到なお二人が負けたと言う事実は、何かしらのイレギュラーが発生したのだとしか考えられません」
「チッ、ようは何も分からねぇんじゃねぇか。話になんねぇ」
毒づきつつ、
(二人だけで行かせるんじゃなかった……)
心の中では分かれた時の事を今更のように強く後悔し、兄として何も出来なかった無力な自分に奥歯を噛み締めたが、マリアは起きてしまった悲しい現実に浸るより、これから先を見据えた様な凛然とした眼差しで、
「だからと言って、わたくし達のする事に変わりはありませんわ」
「「「「「「!」」」」」」
何をすべきか迷走しそうになったヤマト達に、マリアは明確な道を指し示し、
「確かにそうだなぁ」
「だよね」
同意して頷く彼らに笑顔を向けた。
人をからかい、困っている所を見て楽しむ悪癖があるマリアではあったが、核戦争で混乱に陥りかけたオーストラリアを立て直し、人心を導いたカリスマ性は伊達ではない一面を披露した。
混沌とした中に、光を見い出したヤマト達がクローザーとの決意を新たにするさなか、
「ジャック、後で個人的に話がありますの。よろしくて?」
するとマリアの目から何かを感じ取ったジャックはニヤリと笑い、
「奇遇だなぁ。オレも用があったんだ。なんならぁ今からでもイイぜぇ」
マリアは頷くと、
「そう言う事でございますので皆様、申し訳ありませんが、わたくし達は稽古を先に上がらせていただきますわ」
笑顔を残し、ジャックを連れ立ち去って行った。
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「…………」
「…………」
お互いの胸の内を確認し合う様に無言でアイコンタクトを交わしていると、
「「!?」」
ジゼが腕を強引に引っ張られ、
「シセの目が黒いうちは、目と目で通じ合いなどさせませぇんよ!」
シセはヤマトに敵意丸出しの目を向けた。
異常事態が判明した直後でありながら変わらぬ姿勢のシセに、思わず苦笑うヤマト達。
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