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14_歪の章_31
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夜闇に乗じて町を出るコーギーとヴァイオレット――
砂地に足を取られながら砂漠を進むと、
「あぁ、もぅ歩き難いでございますですわぁ!」
早速へそを曲げるヴァイオレット。
そんな彼女にコーギーは、いつも通りの作り笑顔にからかいを交え、
「もぅ少し町から離れたら車をロードしますからぁ、それまで文句を言わないで下さぁい」
「わ、分かっていますでございますですわぁ!」
(あたくしの精神年齢は、それほど幼くありませんでございますですわぁ)
憤慨して見せると、予想通りのリアクションであったのかコーギーは「ははは」と笑い、
「少し残念な気もしますねぇ」
「何がでございますですかぁ?」
「形が違えば、本当の友人になれたかも知れません……」
アナクスを想い、笑顔の中に寂しさを滲ませた途端、
「胸ですのぉ!?」
「は?」
「あたくしだって「それなりに」ありますでございますですのに、そんなに豊満な胸がよろしいのでございますですのぉ! キィーーーッ!」
無論、落ち込みを見せるコーギーを励まそうとしたヴァイオレットの気遣いから出た冗談ではあるが、気遣いに気遣いで応える様にコーギーも、
「そうですねぇ~あって困るモノではないですからぁ」
「まぁ!?」
二人は顔を見合わせ、
「「プッ、ハハハハハハ!」」
噴き出し笑い。
「あの丘を越えたら車をロードしましょう」
「ですわねぇ。町からの視界の影にもなりますし」
夜の静寂に包まれた砂漠の中を、ひた歩いた。
同時刻、二人が去った町のとあるホテル。灯りが消えた一室で、ベッドからむくりと起き上がる小さな人影。
「といれ、なぉぅ……」
眠気まなこを擦ってベッドから降りるのは、ファティマ。寝室から出て行くと、仄暗い部屋には無人となったベッドだけがポツンと残された。
コーギーとヴァイオレットは砂地の丘を登り切り、頂上から麓を見下ろし、
「やっと下りですね」
「あと少しで、砂まみれからの解放でございますですわぁ」
下りへと、足を踏み出し、
「「!」」
その足を止めた。
トイレから出るファティマ。扉を閉め、重たい瞼を擦りながら灯りの消えたリビングに差し掛かると、
「…………」
異様な静けさに足を止めた。
(なんか……しずかなおぅ……)
深夜なのだから当然ではあるが、人の気配と言う物が全く感じられなかった。
寝息が聞こえて来ず、ベッドのきしむ物音の一つさえ聞こえて来ない。
「…………」
小さな胸に去来する、言い知れぬ胸騒ぎ。
不安感から眠っていた意識は急速に目覚め始め、
「ッ!」
何かに気付き、慌てて寝室に駆け戻り灯りを点ける。
(ワム(アナクス)がいないなぉぅ!)
先ほどまで自身が寝ていたベッドを凝視。
毎夜毎夜、無理矢理侵入して来るアナクスの姿が、影も形も無かったのである。
眠りに就く直前までは確かに居た。
いつも通り強引に添い寝され、眠りに就くまでの通過儀礼の様に「出て行け」「行かない」のお約束を経験した事実は、未だ半分寝ぼけた頭でいようとも間違いようがない。
「!」
寝室を飛び出し、室内の灯りを点け走り、勢いそのまま別室の扉を開け放つファティマ。
アナスの部屋である。
砂地に足を取られながら砂漠を進むと、
「あぁ、もぅ歩き難いでございますですわぁ!」
早速へそを曲げるヴァイオレット。
そんな彼女にコーギーは、いつも通りの作り笑顔にからかいを交え、
「もぅ少し町から離れたら車をロードしますからぁ、それまで文句を言わないで下さぁい」
「わ、分かっていますでございますですわぁ!」
(あたくしの精神年齢は、それほど幼くありませんでございますですわぁ)
憤慨して見せると、予想通りのリアクションであったのかコーギーは「ははは」と笑い、
「少し残念な気もしますねぇ」
「何がでございますですかぁ?」
「形が違えば、本当の友人になれたかも知れません……」
アナクスを想い、笑顔の中に寂しさを滲ませた途端、
「胸ですのぉ!?」
「は?」
「あたくしだって「それなりに」ありますでございますですのに、そんなに豊満な胸がよろしいのでございますですのぉ! キィーーーッ!」
無論、落ち込みを見せるコーギーを励まそうとしたヴァイオレットの気遣いから出た冗談ではあるが、気遣いに気遣いで応える様にコーギーも、
「そうですねぇ~あって困るモノではないですからぁ」
「まぁ!?」
二人は顔を見合わせ、
「「プッ、ハハハハハハ!」」
噴き出し笑い。
「あの丘を越えたら車をロードしましょう」
「ですわねぇ。町からの視界の影にもなりますし」
夜の静寂に包まれた砂漠の中を、ひた歩いた。
同時刻、二人が去った町のとあるホテル。灯りが消えた一室で、ベッドからむくりと起き上がる小さな人影。
「といれ、なぉぅ……」
眠気まなこを擦ってベッドから降りるのは、ファティマ。寝室から出て行くと、仄暗い部屋には無人となったベッドだけがポツンと残された。
コーギーとヴァイオレットは砂地の丘を登り切り、頂上から麓を見下ろし、
「やっと下りですね」
「あと少しで、砂まみれからの解放でございますですわぁ」
下りへと、足を踏み出し、
「「!」」
その足を止めた。
トイレから出るファティマ。扉を閉め、重たい瞼を擦りながら灯りの消えたリビングに差し掛かると、
「…………」
異様な静けさに足を止めた。
(なんか……しずかなおぅ……)
深夜なのだから当然ではあるが、人の気配と言う物が全く感じられなかった。
寝息が聞こえて来ず、ベッドのきしむ物音の一つさえ聞こえて来ない。
「…………」
小さな胸に去来する、言い知れぬ胸騒ぎ。
不安感から眠っていた意識は急速に目覚め始め、
「ッ!」
何かに気付き、慌てて寝室に駆け戻り灯りを点ける。
(ワム(アナクス)がいないなぉぅ!)
先ほどまで自身が寝ていたベッドを凝視。
毎夜毎夜、無理矢理侵入して来るアナクスの姿が、影も形も無かったのである。
眠りに就く直前までは確かに居た。
いつも通り強引に添い寝され、眠りに就くまでの通過儀礼の様に「出て行け」「行かない」のお約束を経験した事実は、未だ半分寝ぼけた頭でいようとも間違いようがない。
「!」
寝室を飛び出し、室内の灯りを点け走り、勢いそのまま別室の扉を開け放つファティマ。
アナスの部屋である。
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