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14_歪の章_29
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次第に遠ざかる背中を、アナクスが物言いたげに見つめる中、
「待って下さい!」
コーギーが立ち上がって呼び止めた。
「…………」
立ち止まり、肩越しに小さく振り返るアナス。
アナクス、ファティマ、ヴァイオレットが各々の思いで見つめる中、
「何を怪しまれているのか知りませんが、話をうやむやにしたまま去られるのは、コチラとしてもスッキリしません」
「……拙者を納得させる答えを答えられるとぉ?」
「貴方が納得するかしないかは貴方の問題であって、僕の知った事ではありません」
(『知った事ではない』と来たでござるかぁ)
アナスは小さな笑みを浮かべ、
「それでぇ?」
「僕たち二人は商談の為に世界を巡っていますが、同時に、身を守る術を得る為に各地の格闘技も学びました。この地でも彼女に教えを請い、僕たち二人の技はその中で生まれた我流であり、ヴァイオレットが答えられなかったのも当然なんです」
物怖じする様子も見せず、真っ直ぐ見据えるコーギーを、アナスは肩越しにしばし見つめると、やがてフッと小さく笑い、
「分かったでござるよ」
再び歩き始めた。四人からは見えない不敵な笑みを浮かべて。
レストランから出て行くアナスを、いつも通りの作り笑顔で見つめるコーギー。
(疎外感から出た「単なる嫌がらせ」だったのでしょうか……無意味に「馬脚を露しただけ」になっていなければ良いのですが……)
立ち尽くしていると、
「すまぬでありんすなぁ」
「え?」
「前は、斯様に嫌味を語る「男の子(おのこ)」ではありんせんした……気分を害したでありんしょう」
呆れ口調で謝罪するアナクスに、
「平気ですよ」
コーギーは笑みを交え、
「もっと素直ではない人物を、僕はよく知っていますからぁ」
遠く離れた南極基地で、
「イッキシッ!」
クシャミをするジャック。
(あぁ? ぁんだ?)
何かの気配に周囲を見回す。
アナクスはコーギーの気遣いに、少しホッとした顔を見せ、
「食事にしんしょう」
コーギーに着席を促し自身も座り、据え置きのメニューを開いて一読し、
「妾は良きとしてぇ」
からかう様な笑みを浮かべてファティマをチラ見、
「「お子様」は、何が良いでありんしょうぉ?」
するとファティマはすかさず、
「ファティマは「オコサマ」じゃないなぉぅ!」
間髪入れずアナクスが、
「プリン付きがありんすぇ?」
「ホントぅなおぅ!」
身を乗り出してまでメニューを覗き込むファティマ。その姿にアナクスはニヤリ。
「なぉぅ!?」
からかわれたと知り、
「ワムぅ! ヒドイなおぅ!」
ファティマは憤慨。
((!?))
聞き覚えのある言葉と近い呼称「ワム」に、内心ギクリとするコーギーとヴァイオレット。
努めて平静を装っていると、
「ファティ坊、その愛称を人前で使ってはいけないと言った筈でありんしょう?」
優しい物言いではあったが、日頃からよほど注意されていた言葉であったのか、ファティマは猛省する様にシュンと小さくなり、
「ゴメンなさいなぉぅ……オネエサマ……」
するとナムクスはそっと頭を撫で、
「次から気を付ければ良きにありんすぇ。プリンも頼みんしょう」
「はぃ、なぉぅ……」
その落ち込み様に、
「大丈夫ですよ。僕たちは誰にも言ったりしませんからぁ。ねぇ、ヴァイオレット」
「オーホッホッホォ! 当然でございますわぁ! 人の嫌がる事を率先してするほど、あたくしの器は小さき物ではございませんでございますわぁ!」
冗談を交えて言い放って見せたが、結局その日はファティマの笑顔を再び見る事は叶わず、食事を終えたコーギーとヴァイオレットは二人に礼を言い別れ、帰路に就いた。
「待って下さい!」
コーギーが立ち上がって呼び止めた。
「…………」
立ち止まり、肩越しに小さく振り返るアナス。
アナクス、ファティマ、ヴァイオレットが各々の思いで見つめる中、
「何を怪しまれているのか知りませんが、話をうやむやにしたまま去られるのは、コチラとしてもスッキリしません」
「……拙者を納得させる答えを答えられるとぉ?」
「貴方が納得するかしないかは貴方の問題であって、僕の知った事ではありません」
(『知った事ではない』と来たでござるかぁ)
アナスは小さな笑みを浮かべ、
「それでぇ?」
「僕たち二人は商談の為に世界を巡っていますが、同時に、身を守る術を得る為に各地の格闘技も学びました。この地でも彼女に教えを請い、僕たち二人の技はその中で生まれた我流であり、ヴァイオレットが答えられなかったのも当然なんです」
物怖じする様子も見せず、真っ直ぐ見据えるコーギーを、アナスは肩越しにしばし見つめると、やがてフッと小さく笑い、
「分かったでござるよ」
再び歩き始めた。四人からは見えない不敵な笑みを浮かべて。
レストランから出て行くアナスを、いつも通りの作り笑顔で見つめるコーギー。
(疎外感から出た「単なる嫌がらせ」だったのでしょうか……無意味に「馬脚を露しただけ」になっていなければ良いのですが……)
立ち尽くしていると、
「すまぬでありんすなぁ」
「え?」
「前は、斯様に嫌味を語る「男の子(おのこ)」ではありんせんした……気分を害したでありんしょう」
呆れ口調で謝罪するアナクスに、
「平気ですよ」
コーギーは笑みを交え、
「もっと素直ではない人物を、僕はよく知っていますからぁ」
遠く離れた南極基地で、
「イッキシッ!」
クシャミをするジャック。
(あぁ? ぁんだ?)
何かの気配に周囲を見回す。
アナクスはコーギーの気遣いに、少しホッとした顔を見せ、
「食事にしんしょう」
コーギーに着席を促し自身も座り、据え置きのメニューを開いて一読し、
「妾は良きとしてぇ」
からかう様な笑みを浮かべてファティマをチラ見、
「「お子様」は、何が良いでありんしょうぉ?」
するとファティマはすかさず、
「ファティマは「オコサマ」じゃないなぉぅ!」
間髪入れずアナクスが、
「プリン付きがありんすぇ?」
「ホントぅなおぅ!」
身を乗り出してまでメニューを覗き込むファティマ。その姿にアナクスはニヤリ。
「なぉぅ!?」
からかわれたと知り、
「ワムぅ! ヒドイなおぅ!」
ファティマは憤慨。
((!?))
聞き覚えのある言葉と近い呼称「ワム」に、内心ギクリとするコーギーとヴァイオレット。
努めて平静を装っていると、
「ファティ坊、その愛称を人前で使ってはいけないと言った筈でありんしょう?」
優しい物言いではあったが、日頃からよほど注意されていた言葉であったのか、ファティマは猛省する様にシュンと小さくなり、
「ゴメンなさいなぉぅ……オネエサマ……」
するとナムクスはそっと頭を撫で、
「次から気を付ければ良きにありんすぇ。プリンも頼みんしょう」
「はぃ、なぉぅ……」
その落ち込み様に、
「大丈夫ですよ。僕たちは誰にも言ったりしませんからぁ。ねぇ、ヴァイオレット」
「オーホッホッホォ! 当然でございますわぁ! 人の嫌がる事を率先してするほど、あたくしの器は小さき物ではございませんでございますわぁ!」
冗談を交えて言い放って見せたが、結局その日はファティマの笑顔を再び見る事は叶わず、食事を終えたコーギーとヴァイオレットは二人に礼を言い別れ、帰路に就いた。
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