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14_歪の章_15
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一行が男性の飛び出して来た道を辿ると、
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
道の真ん中にファティマと同じ位の男の子と、対峙して立つ、天秤棒の様に剣の収まる鞘を両肩に担ぎ、羽織袴を着た成人男性の姿があった。
石を手に、震えながらも男性を睨んで見上げる男の子に対し、無表情で見下ろす男性は、
((アナスッ!))
思いも寄らぬエンカウント、初遭遇にコーギーとヴァイオレットは息を呑んだ。
男の子とクローザーアナスの間に何が起きたかは不明であるが、周りの大人たちはもらい火を恐れ、我関せずを決め込み、通りに露店を構える店主たちも、良心を断ち切る様に日々の作業に没頭して素知らぬフリを貫いていた。
ただならぬ気配に、門下の女性の一人が露店主にそれとなく、
(何がありましたの?)
小声で尋ねると、店主は男の子と対峙するアナスを横目でチラリと窺い、
(この間の戦いで、あの子の父親がアイツに殺されたらしいんだ)
(報復、と言う訳ですの?)
(子供とは言え、そこまで幼くはないだろ? ただ、何もせずにいられなかったんじゃないのか?)
話を聞いていたコーギーは、
(ッ!)
咄嗟にヴァイオレットの手を掴んだ。
彼女の顔色の変化を見逃さなかったのである。
(何をするつもりですかァ!)
小声で強く苦言を呈するコーギーに対し、今、正に飛び出す寸前であったヴァイオレッは血相を変えて振り返り、
(あの子が殺されてしまいますですわァ! アナスのパーソナルデータをコーギーも知っていますでございますでしょォ!)
(……粗野で、思い通りにならなければスグにキレる危険人物……)
(でしたら!)
小声で言い合いをしている間に、
((!))
門下生の女性たち数名が飛び出し、アナスと男の子の間に立ちはだかった。
「なんのつもりでござる」
赤い瞳の三白眼をギラリと光らせる。
「お、幼子への乱暴など許しませんわ!」
「御姉様に言いつけますわよ!」
恐怖心と必死に戦いながらも凛然とした表情で対したが、周囲の目は冷ややかで、
(余計な事を……)
(誰だ、あの女ども……)
(例の女の手下じゃないの……)
(騒ぎを大きくしてどうする気だ……)
(トバッチリは御免だぞ……)
勇気を称えるどころか、むしろ迷惑顔。
「ッ!」
逆鱗に触れられた様な顔して振り向くヴァイオレット。
(口先だけの野次馬がァ!)
怒り露わに怒鳴り散らそうとしたが、コーギーが掴んだ手を引き、振り返ったヴァイオレットに、
「…………」
無言で静かに、首を横に振って見せ、その顔は、
『今、ここで騒ぎを大きくするのは得策ではありません』
そう言っていた。
「クッ……」
口惜し気にうつむくヴァイオレット。
(分かっていますでございますですわ……)
乱闘必至の気配に、見守る誰もが固唾を呑む中、
「御姉様、ねぇ」
アナスは嘲笑う様に呟くと、
『コゾウ(小僧)ォオォォォオォォォォッ!』
耳がビリビリするほどの声をその場で張り上げ、門下の女性たちの背後でビクリと身を震わせる男児に向けて、
「親の仇である拙者を討ちたいのならばァ! オナゴの背に隠れず! 拙者を脅かすぐらい強くなって見せるでござるよォ!」
笑みを浮かべると、クルリと背を向け歩き出した。
悔しさからなのか、緊張の糸が切れたからなのか、顔をくしゃくしゃにして、その場で声を上げて大泣きし始める男児。
すると彼を探していた母親なのか、泣き声に導かれる様に、一人の女性が慌てた様子で人込みを掻き分け飛び出して来て男児に駆け寄り、身を挺して守る様に抱き締めた。
足を止め、肩越しにチラリと振り返るアナス。
「母親でござるか?」
「…………」
何も答えず、必死の表情で、泣きじゃくる我が子を抱き締める母親。
アナスに背を向け、自身の命を盾に男児を護る姿に、
「童は時として予想外の無謀に出るものござる。その暴れ馬の手綱を握るは親の務め。しっかり握るでござるよ、我が子を死地へ追いやりたくなくばな」
視線をアナクスの門下の女性たちに移し、
「それはお主らも同じでござる。己の力量を過信すると……早死にするでござるよ」
穏やかな口調とは裏腹に、射貫く様な赤い眼光。
「「「「「「「…………」」」」」」
恐れながらも物言いたげな目で、親子を護る盾として立つ彼女たちを置き去りに、再び歩き始めた。
すると、
(ケッ! 結局何もしねぇのかよぉ)
人込みの中から、囁く様なヤジが漏れ聞こえ、
「…………」
立ち止まるアナス。
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
道の真ん中にファティマと同じ位の男の子と、対峙して立つ、天秤棒の様に剣の収まる鞘を両肩に担ぎ、羽織袴を着た成人男性の姿があった。
石を手に、震えながらも男性を睨んで見上げる男の子に対し、無表情で見下ろす男性は、
((アナスッ!))
思いも寄らぬエンカウント、初遭遇にコーギーとヴァイオレットは息を呑んだ。
男の子とクローザーアナスの間に何が起きたかは不明であるが、周りの大人たちはもらい火を恐れ、我関せずを決め込み、通りに露店を構える店主たちも、良心を断ち切る様に日々の作業に没頭して素知らぬフリを貫いていた。
ただならぬ気配に、門下の女性の一人が露店主にそれとなく、
(何がありましたの?)
小声で尋ねると、店主は男の子と対峙するアナスを横目でチラリと窺い、
(この間の戦いで、あの子の父親がアイツに殺されたらしいんだ)
(報復、と言う訳ですの?)
(子供とは言え、そこまで幼くはないだろ? ただ、何もせずにいられなかったんじゃないのか?)
話を聞いていたコーギーは、
(ッ!)
咄嗟にヴァイオレットの手を掴んだ。
彼女の顔色の変化を見逃さなかったのである。
(何をするつもりですかァ!)
小声で強く苦言を呈するコーギーに対し、今、正に飛び出す寸前であったヴァイオレッは血相を変えて振り返り、
(あの子が殺されてしまいますですわァ! アナスのパーソナルデータをコーギーも知っていますでございますでしょォ!)
(……粗野で、思い通りにならなければスグにキレる危険人物……)
(でしたら!)
小声で言い合いをしている間に、
((!))
門下生の女性たち数名が飛び出し、アナスと男の子の間に立ちはだかった。
「なんのつもりでござる」
赤い瞳の三白眼をギラリと光らせる。
「お、幼子への乱暴など許しませんわ!」
「御姉様に言いつけますわよ!」
恐怖心と必死に戦いながらも凛然とした表情で対したが、周囲の目は冷ややかで、
(余計な事を……)
(誰だ、あの女ども……)
(例の女の手下じゃないの……)
(騒ぎを大きくしてどうする気だ……)
(トバッチリは御免だぞ……)
勇気を称えるどころか、むしろ迷惑顔。
「ッ!」
逆鱗に触れられた様な顔して振り向くヴァイオレット。
(口先だけの野次馬がァ!)
怒り露わに怒鳴り散らそうとしたが、コーギーが掴んだ手を引き、振り返ったヴァイオレットに、
「…………」
無言で静かに、首を横に振って見せ、その顔は、
『今、ここで騒ぎを大きくするのは得策ではありません』
そう言っていた。
「クッ……」
口惜し気にうつむくヴァイオレット。
(分かっていますでございますですわ……)
乱闘必至の気配に、見守る誰もが固唾を呑む中、
「御姉様、ねぇ」
アナスは嘲笑う様に呟くと、
『コゾウ(小僧)ォオォォォオォォォォッ!』
耳がビリビリするほどの声をその場で張り上げ、門下の女性たちの背後でビクリと身を震わせる男児に向けて、
「親の仇である拙者を討ちたいのならばァ! オナゴの背に隠れず! 拙者を脅かすぐらい強くなって見せるでござるよォ!」
笑みを浮かべると、クルリと背を向け歩き出した。
悔しさからなのか、緊張の糸が切れたからなのか、顔をくしゃくしゃにして、その場で声を上げて大泣きし始める男児。
すると彼を探していた母親なのか、泣き声に導かれる様に、一人の女性が慌てた様子で人込みを掻き分け飛び出して来て男児に駆け寄り、身を挺して守る様に抱き締めた。
足を止め、肩越しにチラリと振り返るアナス。
「母親でござるか?」
「…………」
何も答えず、必死の表情で、泣きじゃくる我が子を抱き締める母親。
アナスに背を向け、自身の命を盾に男児を護る姿に、
「童は時として予想外の無謀に出るものござる。その暴れ馬の手綱を握るは親の務め。しっかり握るでござるよ、我が子を死地へ追いやりたくなくばな」
視線をアナクスの門下の女性たちに移し、
「それはお主らも同じでござる。己の力量を過信すると……早死にするでござるよ」
穏やかな口調とは裏腹に、射貫く様な赤い眼光。
「「「「「「「…………」」」」」」
恐れながらも物言いたげな目で、親子を護る盾として立つ彼女たちを置き去りに、再び歩き始めた。
すると、
(ケッ! 結局何もしねぇのかよぉ)
人込みの中から、囁く様なヤジが漏れ聞こえ、
「…………」
立ち止まるアナス。
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