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青木 森

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14_歪の章_6

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 海に面した公園のベンチに座るコーギー。いつもの作り笑顔のまま、
「少しずつ、様子が見えて来ましたねぇ」
 青い海を眺め、雲一つない空を見上げると、
「ふぉおてぇごしゃいあすふぇすふぁねぇ」
「ん?」
 不可解な返事が返り、隣に視線を移すと、買ったばかりのクスクスを膝の上に乗せつつケバブサンドに齧り付くヴァイオレットの姿が。
「お、美味しそうに食べてますね……」
 皮肉も込めて言ったつもりであったが、
「美味ひぃでごじゃいまふゅでぇふゅわよぉ」
 ゴクリと飲み込み、
「コーギーは食べませんのぉ?」
「ハハハ……ヴァイオレット(の食べている姿)を見ているだけで満足ですよ」
 皮肉に皮肉を重ねて言ったつもりが、肝心なところを言われなかったヴァイオレットは勘違い。
「え?」
 ポッと顔を赤らめ、
「こ、公衆面前でぇ告白めいた事をぉ~ハズカシイでございますですわぁ」
 照れを隠すようにケバブサンドに齧り付き、
「…………」
(これは伝わってませんねぇ……)
 変わらぬ作り笑いの中に苦笑いを滲ませ、
「言葉とは難しいモノですねぇ」
「?」
 リスかハムスターの様に両頬を膨らませるヴァイオレットが首を傾げた次の瞬間、
『何処を狙っているでありんすぅ!!』
 憩いの場に鳴り響く女の金切り声。
「せっかくの良いお天気の日に、いったい何事でございますのぉ~」
 呆れ顔で振り返ろうとすると、
「ヤベェヤベェ、始まったぁ」
「憂さ晴らしがまた始まったぞぉ」
 三々五々、公園で休んでいた人々が蜘蛛の子の様に散り始め、
「誰か止めてやれよぉ。あのままじゃ、あの子死んじまうぞぉ」
「だったらオマエが止めろよぉ」
「冗談じゃねぇ、あんなバケモノ相手にぃ! 兵隊が何人死んだと思ってんだ!」
「あの子には可哀想だが、俺達には何にも出来ねぇよぉ」
 後ろめたさ引きずりながら去って行き、
「…………」
(どう言う事でございますですの……)
 重苦しい背中を見送っていると、
「ヴァイオレット! あの女性を見て下さい!」
 切迫したコーギーの声。
(あのジョセイぃいぃぃ?)
 ヴァイオレットは気分を害し、
「あたくしと言う「素晴らしき伴侶」がおりながら、余所のオンナに現を抜かすとは良い度胸で、」
「くだらない冗談はイイですから! とにかく見て下さい!」
(く、くだらないジョウダン……)
 確かに半分ほど冗談ではあったが、素っ気なくツッコまれた事で、些か腑に落ちなさを滲ませつつコーギーの視線の先を辿ると、
「ッ!!」
 驚愕するヴァイオレット。
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