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13_流転の章_45
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扉の向こうに消えた、小さな後ろ姿に、
「くぅ、なんて健気なんだぁ!」
「俺たちは目先の金に釣られて、なんて事をぉ!」
「あんな天使を、金目当てで追いかけ回していたなんてぇ!」
笑顔に浄化され、猛省する大人たち。
ファティマの医療行為はこの病室に限らず、時間(クローザーの女)の許す限り、他の病院にもおよび、かつてこの町で追われる身であった彼女は、今や「救いの天使」と呼ばれ、アイドルと化していた。
そして町の人々の怒りの矛先は、
「「「「「「それに比べてアイツ等はァ!!」」」」」」
その「アイツ等」呼ばわりされた二人は、現町長が用意した三ツ星ホテルのスイートルームに居た。
「「はぁぁああぁぁぁ~」」
大きなため息を吐く二人。
「なんでぇ~ありぃんすぅ~良き大人が「ため息」などぉ~」
自分の事は棚に上げた、クローザーの女の気怠そうな物言いに、
「お主こそぉ~」
クローザーの男が、生き写しの様に気怠そうな返事を返すと、
「宿の主が渡して来たキモノ(着物)と言うこの衣、色と絵柄は艶やかで良いでありんすがぁ~」
帯を前に結び、色とりどりの華が描かれ、豪華な金糸による刺繍が施された煌びやかな打掛を纏ってはいたが、
「動き辛いでありんすぅ~」
鬱陶し気に、着物の裾をヒラヒラさせた。
チラ見えする、シルクの様な透明感を持った素足の太ももに、
「オナゴがか様な振る舞い、はしたないでござるよぉ」
苦言を呈すと、女は妖艶な笑みを浮かべ、
「劣情を催したでありんすかぁ?」
「戯れ事を申すでないでござるよぉ」
軽くあしらい、
「ソナタと拙者は共に最強を目指す者。好敵手であり、男女の仲など超えた関係でござろぅ?」
起き上がった男は、紋付き袴に身を包んでいた。
すると返って来た答えが彼女の予想通りであったのか、
「そうでありんすなぁ」
同意しながらも、クスクス笑っていると、
「この少々動き辛い衣の事でござるが、宿の主に尋ねたところ、ジャパンと言う国の「オイラン(花魁)」と「サムライ(侍)」と言う職の人間が着ていた「キモノ(着物)」と言う衣、らしいでござる」
「はてぇ? この国は、今は「アフリカ」と呼ばれているでありんせん? 何ゆえ妾とヌシは、異国のか様な者の服を着せられんしたぁ?」
首を傾げると、男は興味深げに、
「宿の主の話を信じるならば、「ソナタの国」と「拙者の国」の話し言葉が、ジャパンと言う国で「オイラン」と「サムライ」なる者どもに話されていたそうでござるぅ!」
「犬猿の仲でありんした「ヌシの国」と「妾の国」の言葉が、一つの国の中で話されているでありんすかぁ!?」
「左様でござる。これらの衣は、その者どもの正装だそうでござる」
「…………」
驚きのあまり思わず黙り、
「……天の怒りに触れ、民と共に海の藻屑と消えたヌシの国と妾の国……人の世は巡ると言いんすかぁ、何と数奇で、何と因果な話でありんしょう……」
感慨深げに呟くと、
「然して……」
口元に笑みを浮かべて男を上目遣いに見上げ、
「ヌシの吐息の事由は何でありんすぅ」
すると男は小さく「フッ」と笑って見せ、
「言わずとも、お主なら分かってござろぅ?」
女も笑い返し、
「ムスカムアのクローザーの事でぇありんすなぁ?」
「左様でござる」
ヤレヤレ顔で小さく笑って見せた。
「くぅ、なんて健気なんだぁ!」
「俺たちは目先の金に釣られて、なんて事をぉ!」
「あんな天使を、金目当てで追いかけ回していたなんてぇ!」
笑顔に浄化され、猛省する大人たち。
ファティマの医療行為はこの病室に限らず、時間(クローザーの女)の許す限り、他の病院にもおよび、かつてこの町で追われる身であった彼女は、今や「救いの天使」と呼ばれ、アイドルと化していた。
そして町の人々の怒りの矛先は、
「「「「「「それに比べてアイツ等はァ!!」」」」」」
その「アイツ等」呼ばわりされた二人は、現町長が用意した三ツ星ホテルのスイートルームに居た。
「「はぁぁああぁぁぁ~」」
大きなため息を吐く二人。
「なんでぇ~ありぃんすぅ~良き大人が「ため息」などぉ~」
自分の事は棚に上げた、クローザーの女の気怠そうな物言いに、
「お主こそぉ~」
クローザーの男が、生き写しの様に気怠そうな返事を返すと、
「宿の主が渡して来たキモノ(着物)と言うこの衣、色と絵柄は艶やかで良いでありんすがぁ~」
帯を前に結び、色とりどりの華が描かれ、豪華な金糸による刺繍が施された煌びやかな打掛を纏ってはいたが、
「動き辛いでありんすぅ~」
鬱陶し気に、着物の裾をヒラヒラさせた。
チラ見えする、シルクの様な透明感を持った素足の太ももに、
「オナゴがか様な振る舞い、はしたないでござるよぉ」
苦言を呈すと、女は妖艶な笑みを浮かべ、
「劣情を催したでありんすかぁ?」
「戯れ事を申すでないでござるよぉ」
軽くあしらい、
「ソナタと拙者は共に最強を目指す者。好敵手であり、男女の仲など超えた関係でござろぅ?」
起き上がった男は、紋付き袴に身を包んでいた。
すると返って来た答えが彼女の予想通りであったのか、
「そうでありんすなぁ」
同意しながらも、クスクス笑っていると、
「この少々動き辛い衣の事でござるが、宿の主に尋ねたところ、ジャパンと言う国の「オイラン(花魁)」と「サムライ(侍)」と言う職の人間が着ていた「キモノ(着物)」と言う衣、らしいでござる」
「はてぇ? この国は、今は「アフリカ」と呼ばれているでありんせん? 何ゆえ妾とヌシは、異国のか様な者の服を着せられんしたぁ?」
首を傾げると、男は興味深げに、
「宿の主の話を信じるならば、「ソナタの国」と「拙者の国」の話し言葉が、ジャパンと言う国で「オイラン」と「サムライ」なる者どもに話されていたそうでござるぅ!」
「犬猿の仲でありんした「ヌシの国」と「妾の国」の言葉が、一つの国の中で話されているでありんすかぁ!?」
「左様でござる。これらの衣は、その者どもの正装だそうでござる」
「…………」
驚きのあまり思わず黙り、
「……天の怒りに触れ、民と共に海の藻屑と消えたヌシの国と妾の国……人の世は巡ると言いんすかぁ、何と数奇で、何と因果な話でありんしょう……」
感慨深げに呟くと、
「然して……」
口元に笑みを浮かべて男を上目遣いに見上げ、
「ヌシの吐息の事由は何でありんすぅ」
すると男は小さく「フッ」と笑って見せ、
「言わずとも、お主なら分かってござろぅ?」
女も笑い返し、
「ムスカムアのクローザーの事でぇありんすなぁ?」
「左様でござる」
ヤレヤレ顔で小さく笑って見せた。
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