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青木 森

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13_流転の章_33

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 しかし激しい怒りをぶつけあう二人と相反する様に、
「「…………」」
 クローザーの二人はピクリとも動かなかった。
「な、何をしているのですかァ!」
 激昂するロイド。
「さっさとご主人様の言う事を聞かないか! このポンコツ共がァ!」
 胸倉をつかもうとした途端、
 バキッ!
「はべひぃ!」
 動かなかったクローザーの一人に殴り飛ばされ、
(仲間割れ……ですか?)
 ムスカムアが警戒を続ける中、ロイドは頬を抑えて起き上がり、
「ご主人様を殴るとは何事ですか!」
 うろたえ交じりの怒りを以って、殴ったクローザーを見上げると、
「触るでない、この下郎」
「!」
「妾はヌシを主と思うた事などありんせ」
 両手でフードを外し、淡々とした口調で見下ろしたのは、ボリュームのある「長い黒髪」と宝石の様な「赤い瞳」を持ち、口元に妖艶な笑みを浮かべる美しい女性であった。
「ば、馬鹿なぁ……勝手に動いて話すとは……」
 よほどの想定外であったのか、ロイドは腰を抜かした様にへたり込み女性を見上げると、もう一人のクローザーもフードを外しながら、
「最強を目指す我らが、貴様如き下賤の投じたナノマシンで操れたと本気で思うてか!」
 女性と同じ「黒髪」と「赤い瞳」を持った男が、凛然とした顔を露わにした。
「む、村や町を襲撃した時には従順に命令を、」
 驚愕した表情で見上げるロイド。二人が見せる見下した様な笑みから、
「!」
 彼は悟った。
「だ、騙していたのですか……」
「騙していたとは、人聞きが悪いでありんすなぁ」
「左様。目覚めたばかりの拙者どもは、今の時代の現状把握に努めていただけの事でござる」
「初めから……だとぉ……」
 淡々と語る二人に、激しい落ち込みを見せるロイド。心血を注いで開発した「クローザーを操るナノマシン」が、全く用を成していなかった事実を突きつけられ、一人の研究者としてのプライドがズタズタ。
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