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12.胎動の章_27
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数日前の南極基地―――
ヤマト達スティーラーとクローザーは会議室にてイノウエ艦長と副長ソフィアを交え、オーストラリアへの密入国の算段と、放送局の占拠へ向けた計画を話し合っていた。
そこへ扉を跳ね開け、
「私も同行させて下さい!」
エラが乱入して来た。
「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」
驚く一同の視線が集まる中、ジャックは怒り心頭、
「テメェは何言ってやがる!」
立ち上がって怒りを露わにしたが、艦長は平静にそれを制し、
「申し訳ないがエラ君。今回の任は「急襲・急脱」を旨とするスピード重視の任務。我々ガルシアクルーとて、上陸と離脱のバックアップに徹しなければならない程の任務」
「それは分かっていますぅ! ですが、そこを押して何とか!」
尚も食い下がると、ソファアも堪らず参戦し、
「エラさん、艦長の言う通り今回の任務は、」
制しようとすると、
「何か理由があるんだよなぁ?」
責め、諭す様な空気とは異なる風をヤマトが流し込んだ。
「!」
希望の光を見い出し、目を輝かせるエラ。
「ヤマトォ、てめぇ!」
裏切り感じたジャックが目の色を変えたが、ヤマトは動じた様子も、悪びれる様子も見せず、
「理由くらい、聞いても良いんじゃないのかぁ?」
その笑顔に、ジャックはしばし黙り、
「ケっ」
(天然たらしの甘ちゃんがぁ)
「聞こえてるぞ、ジャック」
「聞こえる様に言ったんだ」
不愛想にプイっと背ける顔に、ヤレヤレ顔のヤマト。感謝感激、拝む様に両手を合わせるエラに向き直ると、
「それで? 集中砲火を浴びのが分かってて、どうして、そこまでオーストラリアへ行きたいんだ?」
するとエラは携帯端末を取り出し、
「クロエ副隊長が、この施設で療養している事が分かったんです!」
必死な顔して画面を指差した。
先の任務で唯一生き残った同僚が療養しているとなれば、是が非でも会いに行きたいと思うのが人情であると理解は出来るが、その情報は素人目に見ても「罠」としか思えず、艦長を始め、ジャック達の反応は一様に渋かった。
しかしヤマトは、
「罠と分かっていても、会いに行きたいんだな?」
エラはギュッと唇を噛み締め、真剣な表情でヤマトの目を見据え、
「はい」
「そっか」
決意の固さをくみ取り、笑顔を見せるヤマトであったが、
「それでもダメだ」
「え…………」
言葉を失うエラ。唯一の賛同者と思われたヤマトの拒絶に絶句した。
「エラの命は、エラの物で、どうしようが勝手だ。でもその命は、コーギーとヴァイオレットが守り、ジャックとマリアが託された命でもあるんだ。その命を、罠と知りながら危険の中に投じさせる行為を、みすみす見逃す事は出来ない」
「なら……それならどうして希望を持たせるような言い方をしたんですかァ!」
「感情論を抜きに、冷静に考えた策があるなら協力しても良いと思ったんだ」
「!」
「そして、冷静さを欠いている事が分かった今のエラを、別件でも連れて行く事は出来ない。何故なら、トラブルを招き易くなるからだ」
「…………」
「エラの戦闘力の高さは聞いている。だからトラブルが発生しても、エラや俺達は無事に切り抜けられるだろう。だが不要のトラブルに巻き込まれる一般の人達はタダじゃ済まない。国民を護るガーディアン隊員のエラなら、言われている意味が理解できると思うが……」
「…………」
無関係の人々を巻き込んでしまう可能性を提示されては、反論する事は出来なかった。
うつむき、
「……分かりました……」
言葉少なに背を向け、哀愁を漂わせながら退出するエラ。
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
扉が閉まり、室内に重苦しい空気だけ残ると、ジゼが場を和ませようと、
「上げておいて落とすなんて、ジャックよりサディスティックだねぇ」
からかい口調に、気遣いと理解したヤマトはヤレヤレ顔を向け、
「みんなに守ってもらった命を、大切にしてもらいたいだけだよぉ」
艦長たちと笑顔を向け合った。
一方エラは、会議室の扉が閉まるなり、グッと、気合の入った顔を上げ、
(それなら「誰にも迷惑を掛けない手段」で、副隊長に会いに行きましょう!)
彼女の心は、忠告程度で易々と折れる「細枝」ではなかった。
密かに機材一式そろえ、ヤマト達を乗せた潜水艦に潜り込み、オーストラリアへ上陸を果たしたのである。
コーギーとヴァイオレットでさえ舌を巻く、エラの「したたかさ」と「行動力」ではあるが、計画性の欠落とのアンバランスが、無用のいざこざを招き入れる「トラブルメーカー」たる由縁と言えなくもない。
ヤマト達スティーラーとクローザーは会議室にてイノウエ艦長と副長ソフィアを交え、オーストラリアへの密入国の算段と、放送局の占拠へ向けた計画を話し合っていた。
そこへ扉を跳ね開け、
「私も同行させて下さい!」
エラが乱入して来た。
「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」
驚く一同の視線が集まる中、ジャックは怒り心頭、
「テメェは何言ってやがる!」
立ち上がって怒りを露わにしたが、艦長は平静にそれを制し、
「申し訳ないがエラ君。今回の任は「急襲・急脱」を旨とするスピード重視の任務。我々ガルシアクルーとて、上陸と離脱のバックアップに徹しなければならない程の任務」
「それは分かっていますぅ! ですが、そこを押して何とか!」
尚も食い下がると、ソファアも堪らず参戦し、
「エラさん、艦長の言う通り今回の任務は、」
制しようとすると、
「何か理由があるんだよなぁ?」
責め、諭す様な空気とは異なる風をヤマトが流し込んだ。
「!」
希望の光を見い出し、目を輝かせるエラ。
「ヤマトォ、てめぇ!」
裏切り感じたジャックが目の色を変えたが、ヤマトは動じた様子も、悪びれる様子も見せず、
「理由くらい、聞いても良いんじゃないのかぁ?」
その笑顔に、ジャックはしばし黙り、
「ケっ」
(天然たらしの甘ちゃんがぁ)
「聞こえてるぞ、ジャック」
「聞こえる様に言ったんだ」
不愛想にプイっと背ける顔に、ヤレヤレ顔のヤマト。感謝感激、拝む様に両手を合わせるエラに向き直ると、
「それで? 集中砲火を浴びのが分かってて、どうして、そこまでオーストラリアへ行きたいんだ?」
するとエラは携帯端末を取り出し、
「クロエ副隊長が、この施設で療養している事が分かったんです!」
必死な顔して画面を指差した。
先の任務で唯一生き残った同僚が療養しているとなれば、是が非でも会いに行きたいと思うのが人情であると理解は出来るが、その情報は素人目に見ても「罠」としか思えず、艦長を始め、ジャック達の反応は一様に渋かった。
しかしヤマトは、
「罠と分かっていても、会いに行きたいんだな?」
エラはギュッと唇を噛み締め、真剣な表情でヤマトの目を見据え、
「はい」
「そっか」
決意の固さをくみ取り、笑顔を見せるヤマトであったが、
「それでもダメだ」
「え…………」
言葉を失うエラ。唯一の賛同者と思われたヤマトの拒絶に絶句した。
「エラの命は、エラの物で、どうしようが勝手だ。でもその命は、コーギーとヴァイオレットが守り、ジャックとマリアが託された命でもあるんだ。その命を、罠と知りながら危険の中に投じさせる行為を、みすみす見逃す事は出来ない」
「なら……それならどうして希望を持たせるような言い方をしたんですかァ!」
「感情論を抜きに、冷静に考えた策があるなら協力しても良いと思ったんだ」
「!」
「そして、冷静さを欠いている事が分かった今のエラを、別件でも連れて行く事は出来ない。何故なら、トラブルを招き易くなるからだ」
「…………」
「エラの戦闘力の高さは聞いている。だからトラブルが発生しても、エラや俺達は無事に切り抜けられるだろう。だが不要のトラブルに巻き込まれる一般の人達はタダじゃ済まない。国民を護るガーディアン隊員のエラなら、言われている意味が理解できると思うが……」
「…………」
無関係の人々を巻き込んでしまう可能性を提示されては、反論する事は出来なかった。
うつむき、
「……分かりました……」
言葉少なに背を向け、哀愁を漂わせながら退出するエラ。
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
扉が閉まり、室内に重苦しい空気だけ残ると、ジゼが場を和ませようと、
「上げておいて落とすなんて、ジャックよりサディスティックだねぇ」
からかい口調に、気遣いと理解したヤマトはヤレヤレ顔を向け、
「みんなに守ってもらった命を、大切にしてもらいたいだけだよぉ」
艦長たちと笑顔を向け合った。
一方エラは、会議室の扉が閉まるなり、グッと、気合の入った顔を上げ、
(それなら「誰にも迷惑を掛けない手段」で、副隊長に会いに行きましょう!)
彼女の心は、忠告程度で易々と折れる「細枝」ではなかった。
密かに機材一式そろえ、ヤマト達を乗せた潜水艦に潜り込み、オーストラリアへ上陸を果たしたのである。
コーギーとヴァイオレットでさえ舌を巻く、エラの「したたかさ」と「行動力」ではあるが、計画性の欠落とのアンバランスが、無用のいざこざを招き入れる「トラブルメーカー」たる由縁と言えなくもない。
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