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青木 森

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12.胎動の章_10

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 数日後―――
 ジゼと共に朝食をとるエラ。元よりコミュニケーション能力の高い彼女は、瞬く間にガルシアクルー達と打ち解けたのだが、雨降って地が固まった為か、近しい性格の為か、ジゼとは妙に気が合い、行動を共にする事が多くなっていた。
 そんな和気あいあいとした女子二人を遠巻きに眺め、微かな笑みを浮かべて朝食をとるヤマト。
 すると相席していたマリアが、いつものイタズラな笑みを浮かべ、
「寂しそうですわねぇ~ヤ・マ・ト♪」
「ん? んなこと無いさぁ」
「そうですのぉ?」
「気の合う女友達が出来て、良かったと思ってるよ」
 するとイタズラを仕掛けたマリアの方が不服気に、
「何ですのぉ~ヤマトぉ~その物言いわぁ~。わたくしとは無理して付き合っていたみたいに聞こえますわよぉ~」
「あははは」
 ヤマトは笑ってお茶を濁し、
「それに……」
「それに?」
「俺は、そんな事を言ってる場合じゃない」
 深刻な顔に、
「まぁ……そうですわねぇ……」
 同じ顔してヤマトの隣を見つめるマリア。
 そこには、
「キィ! 後から来た泥棒猫がぁ! 「シセだけの御姉様」からはなれろぉおぉぉぉぉ!」
 二人の間に割って入ろうと、もがくシセ。ヤマトが「そうはさせじ」と腕を掴み、取り押さえていたのである。
「離しなさい、お邪魔虫ィ! このままでは「シセの御姉様」が何処の馬の骨とも知れない女に篭絡されてしまいますぅ!」
(何を言ってんだかぁ)
 呆れ顔のヤマトは、
「普通に、友達として、ジゼに接したらどうなんだ?」
「……シセが「御姉様に」ですか?」
 スッと、平静に振り返り、
「あ、あぁ……」
 少し驚いたヤマトが口籠ると、シセは淡々と、
「お邪魔虫、アナタはギリシャ神話に出て来る『イカロス』をご存知ですか?」
(何の話だ、急に……?)
「一応知ってる。太陽に近づき過ぎて、蝋のツバサが溶けてって、ヤツだろう?」
「ならばお分かりでしょう?」
「?」
 首を傾げるヤマトを前に、シセは崇高な何かを見上げる様に天を仰ぎ、
「ジゼ姉様は太陽その物なのですよぉ! 近づき過ぎればシセは! シセはぁ! ≪はぁああぁぁぁ!≫この身を焼かれてしまう! いえぇ、むしろ焼いてぇ! 御姉様ぁ!」
 ジゼを神々しく見つめ、よろめくシセ。そのまま昇天しそう。
(ダメだな、コイツ……)
(救えませんわぁ……)
 もはや語る言葉が見いだせない、ヤマトとマリア。
 そんな三人の下へ、ジャックがやって来た。
「何を馬鹿やってやがる。シセぇ、オメェ副長に頼まれてた事があったろうがぁ」
「あっ!?」
「「あ」じゃねぇよ。お陰で団体責任とか言われて、俺が説教食らっちまったろうがぁ」
 怒鳴られ過ぎて耳がキンキンするのか、右耳をトントン叩いて見せ、シセが笑って誤魔化していると、アリアナがジッとジャックを見上げ、
「なんで、いるの?」
「はぁ? 何言ってやがる。俺が「居ちゃいけねぇ」みてぇな、」
「テイキジュンカイは?」
「!」
 サッと顔を背けるジャック。背けた先で待っていたイサミ、トシゾウ、ソウシは呆れ顔。物言いたげな無垢な瞳に見つめられ、
「くっ……」
 流石のジャックも良心がチクリと痛み、
「い、一回くらい別に構いやぁ、」
「一回くらい何ですか?」
 背後からソフィアの声。
 ギクリと身を伸ばすジャック。振り向きもせず、
「そうだ、そろそろ俺はぁ定期巡回に行かねぇとなぁ」
 素知らぬフリをして食堂から出て行った。
「まったくぅ!」
 憤慨するソフィアに、
「本当ですね」
 同調するシセであったが、
「アナタもでしょ!」
 すかさずツッコまれ、
「そうですねぇ~~~!」
 慌ててジゼと雑談するエラの下へ、駆け出して行った。
 ご立腹の様子のソフィアに、
「エラに頼み事って、何かあるんですか?」
 ヤマト達が不思議そうな顔すると、ソフィアはニコリと笑い、
「就職活動よぉ♪」
「「「「「「シュウショクカツドウ?」」」」」」

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