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11.交錯の章_16
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空中で起きた爆発の、球体状の黒煙の中から飛び出す火だるま。
ドガァン! ガラァン!
青いフィールドの消えた潜水艦の上甲板に、投げ捨てられたガラクタの様な音を立て転がると、火だるまはユラリと立ち上がり、
「この『愚民』どもがぁあぁぁぁぁぁっぁ!」
怒りを露わ、右腕を真横に素早く一閃、炎を消し去った。露わになるロイドのおぞましき姿。顔の右半分から肩にかけて人工皮膚が剥がれ落ち、機械体が剥き出しになり、目の虹彩が異様な光を放っていた。
「やはり死にませんでしたかぁ」
眉一つ動かさず、モニタを眺める車イスの男性。室内のオペレーター達が異様な姿に恐れおののく中、平然と、
「二号機作製の良いデータにはなりまし、今回はこれで良しとしましょう」
口元に微かな笑みさえ浮かべ、隣接する強化ガラスに覆われたクリンルームに視線を移した。
そこには棺の様なガラスケースに収められ、眠り続けるクロエの姿が。
「クソどもがァアァァッァあっぁぁぁ!」
逆鱗に触れられた龍の如く激昂するロイド。右手を天にかざし、
「来なさァい!」
頭の天辺からスッポリ隠れるフード付きマントをロードして羽織り、おぞましき姿を隠す。これから始まるであろう激戦の気配に、息を飲んで身構えるジャック達。
しかし、
「侵略は止めだァ! こんな国、ぶっ潰してやるぅ! 覚えていなさい! 必ず後悔させてやる!」
ロイドは三文芝居の様な捨て台詞を吐き、潜水を開始し始めた艦内へと姿を消した。
(こ、来ねぇのか……?)
「チッ!」
心の何処かでホッとしている自身の弱さも含め、悔し気に舌打ちするジャック。ショックを受け、へたり込んでしまったエラを見下ろし、
「この国の闇には、ロクでもねぇ(仲間を平気で見殺しにする)野郎が潜んでるらしいな」
「エラは関係ありません!」
「そうでございますですわぁ!」
咄嗟に、間に割って入るコーギーとヴァイオレット。
必死な顔を向ける二人に、
「んなこたぁわぁ~てるよぉ」
ため息交じりの呆れ顔を見せた次の瞬間、何もない空中の一点に鋭い眼光を飛ばし、手元が見えない位の速さで小型ナイフを投げつけると、
バァン!
何もなかった筈の上空で突如小さな爆発が起き、ナイフが刺さった小型無人機、ドローンが姿を現した。黒煙を上げながら海面に落下するドローン。光学迷彩で姿を隠していたようである。
「ケッ! テメェの国の危機だってぇのに高みの見物たぁ~イイ趣味してやがるぜぇ」
皮肉を交えて吐き捨てるジャックに、マリアはからかい半分、
「それにしても、よくあの船(潜水艦)を破壊しませんでしたわねぇ。以前の貴方でしたら、」
「聞かなくても分かってんだろうがぁ?」
無理にでもジャックの口から理由を言わせたいマリアは、
「さぁ?」
「ケッ。進歩の足りてねぇ現代人の事だ、どんな「手に負えてねぇオモチャ」を載せてるか分かったモンじゃねぇだろうがぁ。んなモノを陸地の近くで沈めてみろ、何が起こるか、」
「ですわよねぇ~♪」
「解説させてんじゃねぇ!」
ふてくされ顔で横を向くジャック。
そんな兄を、いつも通りの作り笑顔の中に「意外」を滲ませ見つめるコーギー。
(あの兄さんが、僕以外の人間に気遣いを……変えたのはマリアですか? それとも……)
かつて出逢ったヤマト達、ガルシアクルーの姿を思い、微かに、嫉妬にも似た感情を抱きつつ、ヴァイオレットと何事か無言でアイコンタクトを交わすと、懐から小瓶を取り出し、素早くエラに匂いを嗅がせ意識を奪った。
「「!?」」
驚くジャックとマリア。二人を前に、コーギーとヴァイオレットは昏睡するエラを抱き支え、
「兄さん、お願いがあります」
「あぁ?」
「御姉様、あたくしからも」
「?」
「「彼女を保護して下さい(でございますですわ)」」
「はぁ? んで俺が、」
ジャックは、さも面倒臭げな顔をしたが、
「分かりましたわ」
「マジか、マリア!?」
「マジですわぁ。この国の闇を見てしまった彼女は、タダでは済まないでしょうから。それに……」
「それに?」
「可愛い妹たちの親友を捨て行く事など、わたくしには出来ませんですわぁ」
小悪魔的な微笑に、
「「マリア御姉様ぁ」」
コーギーとヴァイオレットの心は鷲掴み。
「なっ!?」
(俺の弟まで手なずけやがった、だとぉ!?)
動揺を隠せないジャック。やれやれ顔を装い、
「ケッ、わ、わぁ~たわぁ~たよ。そ、それに、ソイツは一度言ったらテコでも動かねぇ女だしなぁ」
同意する姿に、しめしめ顔で密かに笑い合うマリア、コーギー、ヴァイオレット。
「にしてもオメェ等……」
急に変わる声色に、
「「「?」」」
三人が振り返ると、
「ヤツ(ロイド)の体を見ても驚かなかった……ってことは……知ってたのかぁ? クローザーの体の事を……」
ハッとするマリア。コーギーとヴァイオレットを見つめると、二人は一瞬沈黙した後、
「ハイ……何となく……」
「で、ございますですわぁ……」
諦めともとれる、悟った様な笑顔を浮かべた。
「そうかよぉ」
短く頷くジャック。
「それで、(二人は)これからどうするおつもりですのぉ?」
マリアが不安気な顔をすると、二人は頷き合い、マリアの不安を少しでも軽減させたいと言う思いからなのか、カラッとした表情で、
「「一位と二位を破壊するために造られたクローザーを、破壊しに行きます(でございますですわ)」」
「「!」」
驚きを隠せないジャックとマリア。無謀としか思えない宣言に、
「死にに行くつもりかぁ!」
「無茶ですわぁ!」
血相を変えたが、二人は憂いを感じさせない笑顔で、
「死にに行くつもりはありません。ガルシアの皆さんに、まだ謝罪もしていませんしね」
「で、ございますですわぁ」
緊迫感を伴わない物言いが、むしろジャックにはフラグに感じ、
「……なら、行き先を教えやがれぇ」
「それは出来ません」
「何故ですのぉ!?」
詰め寄るマリアに、コーギーはいつも通りの作り笑顔であっけらかんと、
「兄さんたち、ついて来る気でしょ?」
「「…………」」
的を射られ、思わず黙る二人。しかし、やっと融和出来た妹達だけ危険に晒す事は耐え難く、
「しょ、勝率を上げる為にも当然ですわぁ!」
「お言葉ですが御姉様ぁ、ならば誰がエラを守って下さいますですのぉ?」
「「…………」」
言葉を失う二人。まさに正論である。しかも私情を抜きに「クローザーとの実力差」を鑑みれば、今のジャックとマリアでは足手まとい以外の何物でもない。
ドガァン! ガラァン!
青いフィールドの消えた潜水艦の上甲板に、投げ捨てられたガラクタの様な音を立て転がると、火だるまはユラリと立ち上がり、
「この『愚民』どもがぁあぁぁぁぁぁっぁ!」
怒りを露わ、右腕を真横に素早く一閃、炎を消し去った。露わになるロイドのおぞましき姿。顔の右半分から肩にかけて人工皮膚が剥がれ落ち、機械体が剥き出しになり、目の虹彩が異様な光を放っていた。
「やはり死にませんでしたかぁ」
眉一つ動かさず、モニタを眺める車イスの男性。室内のオペレーター達が異様な姿に恐れおののく中、平然と、
「二号機作製の良いデータにはなりまし、今回はこれで良しとしましょう」
口元に微かな笑みさえ浮かべ、隣接する強化ガラスに覆われたクリンルームに視線を移した。
そこには棺の様なガラスケースに収められ、眠り続けるクロエの姿が。
「クソどもがァアァァッァあっぁぁぁ!」
逆鱗に触れられた龍の如く激昂するロイド。右手を天にかざし、
「来なさァい!」
頭の天辺からスッポリ隠れるフード付きマントをロードして羽織り、おぞましき姿を隠す。これから始まるであろう激戦の気配に、息を飲んで身構えるジャック達。
しかし、
「侵略は止めだァ! こんな国、ぶっ潰してやるぅ! 覚えていなさい! 必ず後悔させてやる!」
ロイドは三文芝居の様な捨て台詞を吐き、潜水を開始し始めた艦内へと姿を消した。
(こ、来ねぇのか……?)
「チッ!」
心の何処かでホッとしている自身の弱さも含め、悔し気に舌打ちするジャック。ショックを受け、へたり込んでしまったエラを見下ろし、
「この国の闇には、ロクでもねぇ(仲間を平気で見殺しにする)野郎が潜んでるらしいな」
「エラは関係ありません!」
「そうでございますですわぁ!」
咄嗟に、間に割って入るコーギーとヴァイオレット。
必死な顔を向ける二人に、
「んなこたぁわぁ~てるよぉ」
ため息交じりの呆れ顔を見せた次の瞬間、何もない空中の一点に鋭い眼光を飛ばし、手元が見えない位の速さで小型ナイフを投げつけると、
バァン!
何もなかった筈の上空で突如小さな爆発が起き、ナイフが刺さった小型無人機、ドローンが姿を現した。黒煙を上げながら海面に落下するドローン。光学迷彩で姿を隠していたようである。
「ケッ! テメェの国の危機だってぇのに高みの見物たぁ~イイ趣味してやがるぜぇ」
皮肉を交えて吐き捨てるジャックに、マリアはからかい半分、
「それにしても、よくあの船(潜水艦)を破壊しませんでしたわねぇ。以前の貴方でしたら、」
「聞かなくても分かってんだろうがぁ?」
無理にでもジャックの口から理由を言わせたいマリアは、
「さぁ?」
「ケッ。進歩の足りてねぇ現代人の事だ、どんな「手に負えてねぇオモチャ」を載せてるか分かったモンじゃねぇだろうがぁ。んなモノを陸地の近くで沈めてみろ、何が起こるか、」
「ですわよねぇ~♪」
「解説させてんじゃねぇ!」
ふてくされ顔で横を向くジャック。
そんな兄を、いつも通りの作り笑顔の中に「意外」を滲ませ見つめるコーギー。
(あの兄さんが、僕以外の人間に気遣いを……変えたのはマリアですか? それとも……)
かつて出逢ったヤマト達、ガルシアクルーの姿を思い、微かに、嫉妬にも似た感情を抱きつつ、ヴァイオレットと何事か無言でアイコンタクトを交わすと、懐から小瓶を取り出し、素早くエラに匂いを嗅がせ意識を奪った。
「「!?」」
驚くジャックとマリア。二人を前に、コーギーとヴァイオレットは昏睡するエラを抱き支え、
「兄さん、お願いがあります」
「あぁ?」
「御姉様、あたくしからも」
「?」
「「彼女を保護して下さい(でございますですわ)」」
「はぁ? んで俺が、」
ジャックは、さも面倒臭げな顔をしたが、
「分かりましたわ」
「マジか、マリア!?」
「マジですわぁ。この国の闇を見てしまった彼女は、タダでは済まないでしょうから。それに……」
「それに?」
「可愛い妹たちの親友を捨て行く事など、わたくしには出来ませんですわぁ」
小悪魔的な微笑に、
「「マリア御姉様ぁ」」
コーギーとヴァイオレットの心は鷲掴み。
「なっ!?」
(俺の弟まで手なずけやがった、だとぉ!?)
動揺を隠せないジャック。やれやれ顔を装い、
「ケッ、わ、わぁ~たわぁ~たよ。そ、それに、ソイツは一度言ったらテコでも動かねぇ女だしなぁ」
同意する姿に、しめしめ顔で密かに笑い合うマリア、コーギー、ヴァイオレット。
「にしてもオメェ等……」
急に変わる声色に、
「「「?」」」
三人が振り返ると、
「ヤツ(ロイド)の体を見ても驚かなかった……ってことは……知ってたのかぁ? クローザーの体の事を……」
ハッとするマリア。コーギーとヴァイオレットを見つめると、二人は一瞬沈黙した後、
「ハイ……何となく……」
「で、ございますですわぁ……」
諦めともとれる、悟った様な笑顔を浮かべた。
「そうかよぉ」
短く頷くジャック。
「それで、(二人は)これからどうするおつもりですのぉ?」
マリアが不安気な顔をすると、二人は頷き合い、マリアの不安を少しでも軽減させたいと言う思いからなのか、カラッとした表情で、
「「一位と二位を破壊するために造られたクローザーを、破壊しに行きます(でございますですわ)」」
「「!」」
驚きを隠せないジャックとマリア。無謀としか思えない宣言に、
「死にに行くつもりかぁ!」
「無茶ですわぁ!」
血相を変えたが、二人は憂いを感じさせない笑顔で、
「死にに行くつもりはありません。ガルシアの皆さんに、まだ謝罪もしていませんしね」
「で、ございますですわぁ」
緊迫感を伴わない物言いが、むしろジャックにはフラグに感じ、
「……なら、行き先を教えやがれぇ」
「それは出来ません」
「何故ですのぉ!?」
詰め寄るマリアに、コーギーはいつも通りの作り笑顔であっけらかんと、
「兄さんたち、ついて来る気でしょ?」
「「…………」」
的を射られ、思わず黙る二人。しかし、やっと融和出来た妹達だけ危険に晒す事は耐え難く、
「しょ、勝率を上げる為にも当然ですわぁ!」
「お言葉ですが御姉様ぁ、ならば誰がエラを守って下さいますですのぉ?」
「「…………」」
言葉を失う二人。まさに正論である。しかも私情を抜きに「クローザーとの実力差」を鑑みれば、今のジャックとマリアでは足手まとい以外の何物でもない。
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