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青木 森

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11.交錯の章_13

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 数日後、オーストラリア東の州都ブリスベン―――
 検問を抜けたロイドは北と西に重きを置いた警備網を嘲笑い、難なくこの町に辿り着いていた。
 港に車を止めるロイド。
 乗っていた車はいつの間に乗り換えた(奪った)のか、町の景観に即した一般的な乗用車へと変わっていた。
 降車し、後部座席に置かれたルーカス入りの黒い大袋を、軽々肩に担ぐロイド。
 去る町を、感慨深げに見回し、
「少々名残惜しいですが、この国ともサヨナラですねぇ」
 皮肉を交えた笑みを浮かべていると、
「ケッ、やりたい放題やっといてぇ、駄賃も払わずバックレる気かぁ?」
 何処からともなく小馬鹿にしたような声。
「なんの御用ですか、ワーストさん」
 驚きもせず振り向くと、港に置かれたコンテナの陰から、不敵な笑みを浮かべたジャックが姿を現し、続いてマリア、コーギー、ヴァイオレット、エラの姿も。
 しかしロイドは動じる様子も見せず、
「これはこれは皆さまお揃いで。見た事のない顔が一つありますが、それ以外の元王族の方々は、資料で見た事がありますよぉ」
(やっぱりコイツ……)
 ジャックは三白眼をギラリと光らせ、
「テメェ、誰のクローザーだぁ!」
 ロイドは意外そうな顔を見せると、口元に不快感を感じさせる笑みを浮かべ、
「ワーストにしては頭が回りますねぇ、御明察。いやはや少々感心致しましたぁ」
 ジャックの怒りを助長させようとする物言いである事は明らかであったが、ヤマト達と関わりを持ち、人としての成長を遂げていたジャックは怒るどころか鼻先でフッと笑い飛ばし、
「目覚めたのが今の時代で良かったな、三下ぁ。オメェみたいな粘着質がスティーラー同士の戦いの場に居たら、一位と二位が真っ先に殺してたろぅさ」
「なんだと! 貴様らスティーラー如きが何人束になろうが!」
「んな話はぁどうでもいいィ!」
 ジャックは二の句を遮り、
「先ずは、その御大層に背負ってる大荷物を返しな。この季節外れのブラックサンタがぁ」
「!」
「止めとけぇ! テメェがいくら上位のクローザーだとしても、こっちはスティーラーが二人と、クローザーが二人だ。はなからオメェに勝ち目がねぇのは、馬鹿じゃなきゃ分かんだろぅ? なぁ粘着三下さんよぉ?」
ジャックの後ろには、今にも飛び掛からんとする気迫の目をしたマリア、コーギー、ヴァイオレットそしてエラの姿。
「ククッ!」
 歯ぎしりするロイド。思い通りにいかない事に逆上するかと思いきや、気持ちを切り替える様に、大きく一つ深呼吸し、
「確かに「戦えば」、勝つ見込みはありませんが……そもそも私が、どうやってこの国から出国するつもりか考えていたのですか?」
「はぁ? どうせ、こせけぇ船泥棒でもして逃げるつもりだったんだろうがぁ!」
 ジャックが見下した笑みを浮かべると、
「ハァーハッハッハッ! やはりワーストはワーストでしたねぇ! 考えが浅はか!」
 高笑いに呼応する様に、港のど真ん中に巨大な水柱が上がった。
「何だぁ!?」
「何ですのぉ!?」
 驚くジャックとマリア達の眼前に、水柱と共に姿を現したのは「巨大な潜水艦」。
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