333 / 535
11.交錯の章_5
しおりを挟む
場所をキャンピングカーのリビングに移し―――
テーブルを挟んで座るジャックとコーギー、マリアとヴァイオレット。
「「「「…………」」」」
誰も何も言わず、何とも気まずい、重苦しい空気が漂う中、初めに口を開いたのは意外にもジャックであった。
「んでぇ……あんで無関係のオメェがそこに居据わんだぁ?」
不愉快そうに横向く視線の先、
「肉親同士の話し合いは、とかくヒートアップしやすいと言いますからね、私みたいな緩衝材が居た方が、落ち着いて話せますよ。まぁ置物だと思って気になさらないで下さい」
満面の笑顔のエラ。一般的に難しいとされる初対面の人間との間合いに、違和感なくスッと入り込むコミュ力の高さに、
「チッ」
(この男オンナが……)
苦々しくも「スゲェヤツだ」と、顔には出さず心の内で感心していると、
「それより、「コーギーのお兄さん」と「ヴァイオレットのお姉さん」♪」
「「?」」
「なんで、そんな怪しげな格好しているんですか?」
「「怪しげ?」」
以外そうな顔を見合わせるジャックとマリア。完璧な変装であると自負していた二人は、何を指摘されたのか分からず、
「「???」」
何だかんだで、やはり似た者同士である。
(((よく通報されなかった(ですねぇ・でしたねぇ・でございますですわねぇ)……)))
半ば呆れた三人のジト目。
「「!」」
三人の物言いたげな目から、世間と感覚ズレした変装であった事に初めて気付かされるジャックとマリア。思い返してみれば、妹たちの情報を尋ねた時の「町の人達」の反応は、みな一様に引き気味で、引きつった顔。
(((俺・わたくし)の(迫力・神々しさ)に萎縮してた訳(じゃ・では)なく、単に不審者扱いされて(いたのかぁ・いましたのねぇ)……))
込み上げて来る恥ずかしさを平静で装いつつ、変装セット三点を静かに外す二人。
「面白い「お兄さんとお姉さん」ですねぇ♪」
「「…………」」
((は、恥ずかしいぃ……))
コーギーとヴァイオレットが、自分の事の様に赤面して下を向くと、
「でもお二人のお兄さん、お姉さんだけあって、さすが美男美女ですね」
裏表を感じさせない口調で褒めたが、
「それにしてもお二人とも…………」
ジャックとマリアの顔をしげしげ見つめ、
「……私と何処かでお会いした事がありますか?」
「「「「!」」」」
「何故か、何処かでお会いした事がある様な……」
首を傾げると、二人に話しかける切り口を探していたジャックは、正体がバレる事を避ける名目で、
「ケッ、偽名を使うにしても『コーギーとヴァイオレット』だぁ? オメェら女盗賊のつもりかよぉ」
皮肉を込めたニヤケ顔を向けたが、
「「?」」
「?」
きょとん顔の二人とマリア。
確かにジャックの言う通り、大戦前、二人と同じ名前を持った女性二人組が、マフィアの金を盗んで逃避行する映画が上映された時期があった。しかしオーストラリアに居た頃、たまたまテレビで放送されていたのを目にしたジャックと違い、三人が知る筈もなく、そもそも二人が今の名前を選んだのは別々のタイミングで、別々の物からであり、ジャックの言わんとする意味が分からなかったのは無理からぬ話である。
テーブルを挟んで座るジャックとコーギー、マリアとヴァイオレット。
「「「「…………」」」」
誰も何も言わず、何とも気まずい、重苦しい空気が漂う中、初めに口を開いたのは意外にもジャックであった。
「んでぇ……あんで無関係のオメェがそこに居据わんだぁ?」
不愉快そうに横向く視線の先、
「肉親同士の話し合いは、とかくヒートアップしやすいと言いますからね、私みたいな緩衝材が居た方が、落ち着いて話せますよ。まぁ置物だと思って気になさらないで下さい」
満面の笑顔のエラ。一般的に難しいとされる初対面の人間との間合いに、違和感なくスッと入り込むコミュ力の高さに、
「チッ」
(この男オンナが……)
苦々しくも「スゲェヤツだ」と、顔には出さず心の内で感心していると、
「それより、「コーギーのお兄さん」と「ヴァイオレットのお姉さん」♪」
「「?」」
「なんで、そんな怪しげな格好しているんですか?」
「「怪しげ?」」
以外そうな顔を見合わせるジャックとマリア。完璧な変装であると自負していた二人は、何を指摘されたのか分からず、
「「???」」
何だかんだで、やはり似た者同士である。
(((よく通報されなかった(ですねぇ・でしたねぇ・でございますですわねぇ)……)))
半ば呆れた三人のジト目。
「「!」」
三人の物言いたげな目から、世間と感覚ズレした変装であった事に初めて気付かされるジャックとマリア。思い返してみれば、妹たちの情報を尋ねた時の「町の人達」の反応は、みな一様に引き気味で、引きつった顔。
(((俺・わたくし)の(迫力・神々しさ)に萎縮してた訳(じゃ・では)なく、単に不審者扱いされて(いたのかぁ・いましたのねぇ)……))
込み上げて来る恥ずかしさを平静で装いつつ、変装セット三点を静かに外す二人。
「面白い「お兄さんとお姉さん」ですねぇ♪」
「「…………」」
((は、恥ずかしいぃ……))
コーギーとヴァイオレットが、自分の事の様に赤面して下を向くと、
「でもお二人のお兄さん、お姉さんだけあって、さすが美男美女ですね」
裏表を感じさせない口調で褒めたが、
「それにしてもお二人とも…………」
ジャックとマリアの顔をしげしげ見つめ、
「……私と何処かでお会いした事がありますか?」
「「「「!」」」」
「何故か、何処かでお会いした事がある様な……」
首を傾げると、二人に話しかける切り口を探していたジャックは、正体がバレる事を避ける名目で、
「ケッ、偽名を使うにしても『コーギーとヴァイオレット』だぁ? オメェら女盗賊のつもりかよぉ」
皮肉を込めたニヤケ顔を向けたが、
「「?」」
「?」
きょとん顔の二人とマリア。
確かにジャックの言う通り、大戦前、二人と同じ名前を持った女性二人組が、マフィアの金を盗んで逃避行する映画が上映された時期があった。しかしオーストラリアに居た頃、たまたまテレビで放送されていたのを目にしたジャックと違い、三人が知る筈もなく、そもそも二人が今の名前を選んだのは別々のタイミングで、別々の物からであり、ジャックの言わんとする意味が分からなかったのは無理からぬ話である。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
超克の艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
「合衆国海軍ハ 六〇〇〇〇トン級戦艦ノ建造ヲ計画セリ」
米国駐在武官からもたらされた一報は帝国海軍に激震をもたらす。
新型戦艦の質的アドバンテージを失ったと判断した帝国海軍上層部はその設計を大幅に変更することを決意。
六四〇〇〇トンで建造されるはずだった「大和」は、しかしさらなる巨艦として誕生する。
だがしかし、米海軍の六〇〇〇〇トン級戦艦は誤報だったことが後に判明。
情報におけるミスが組織に致命的な結果をもたらすことを悟った帝国海軍はこれまでの態度を一変、貪欲に情報を収集・分析するようになる。
そして、その情報重視への転換は、帝国海軍の戦備ならびに戦術に大いなる変化をもたらす。
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
未来人が未開惑星に行ったら無敵だった件
藤岡 フジオ
ファンタジー
四十一世紀の地球。殆どの地球人が遺伝子操作で超人的な能力を有する。
日本地区で科学者として生きるヒジリ(19)は転送装置の事故でアンドロイドのウメボシと共にとある未開惑星に飛ばされてしまった。
そこはファンタジー世界そのままの星で、魔法が存在していた。
魔法の存在を感知できず見ることも出来ないヒジリではあったが、パワードスーツやアンドロイドの力のお陰で圧倒的な力を惑星の住人に見せつける!
「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
アデル・オルラド、30歳。
彼は、22歳の頃に、前世の記憶を取り戻した。
約1000年前、アデルは『魔術学』の権威ある教授だったのだ。
現代において『魔術』は完全に廃れていた。
『魔術』とは、魔術式や魔術サークルなどを駆使して発動する魔法の一種だ。
血筋が大きく影響する『属性魔法』とは違い、その構造式や紋様を正確に理解していれば、所持魔力がなくとも使うことができる。
そのため1000年前においては、日常生活から戦闘、ものづくりまで広く使われていたのだが……
どういうわけか現代では、学問として指導されることもなくなり、『劣化魔法』『雑用魔法』扱い。
『属性魔法』のみが隆盛を迎えていた。
そんななか、記憶を取り戻したアデルは1000年前の『喪失魔術』を活かして、一度は王立第一魔法学校の教授にまで上り詰める。
しかし、『魔術学』の隆盛を恐れた他の教授の陰謀により、地位を追われ、王都をも追放されてしまったのだ。
「今後、魔術を使えば、お前の知人にも危害が及ぶ」
と脅されて、魔術の使用も禁じられたアデル。
所持魔力は0。
属性魔法をいっさい使えない彼に、なかなか働き口は見つからず、田舎の学校でブラック労働に従事していたが……
低級ダンジョンに突如として現れた高ランクの魔物・ヒュドラを倒すため、久方ぶりに魔術を使ったところ、人生の歯車が再び動き出した。
かつて研究室生として指導をしていた生徒、リーナ・リナルディが、彼のもとを訪れたのだ。
「ずっと探しておりました、先生」
追放から五年。
成長した彼女は、王立魔法学校の理事にまでなっていた。
そして、彼女は言う。
「先生を連れ戻しに来ました。あなたには再度、王立第一魔法学校の講師になっていただきたいのです」
、と。
こうしてアデルは今度こそ『魔術学』を再興するために、再び魔法学校へと舞い戻る。
次々と成果を上げて成りあがるアデル。
前回彼を追放した『属性魔法』の教授陣は、再びアデルを貶めんと画策するが……
むしろ『魔術学』の有用性と、アデルの実力を世に知らしめることとなるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる