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11.交錯の章_1
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時は数日さかのぼり、南極基地の鍛錬所―――
ヤマトと対峙しているにもかかわらず、珍しく、いつも通りの仄暗い表情したナヤス。その姿は一瞬にして消えたが、ヤマトは焦る事無く意識を周囲に開き、
「…………」
神経を張り巡らせる。
ナヤスは消えた訳でない。一瞬のうちに、スティーラーの認識能力を上回るスピードに達し、消えた様に見えただけ。
「…………」
全身の皮膚感覚で、ナヤスが発する「微かな音」ではなく、ナヤスが発する「気」を探るヤマト。
一瞬、肌がヒリつく感覚を覚え、
「ここだァ!」
冷静に、かつ瞬時に体を右にさばきつつ両手で何かを掴み、迫る勢いごと利用して丸め込む様に、床に叩きつけた。いわゆる、柔道の投げ技の一つ『一本背負い』である。
「そこまでぇ!」
艦長の制止を促すひと声が上がった。
床の上で放心する、仰向けのナヤス。ヤマトが掴んだのは彼女の右腕であった。投げ飛ばされるなど思いもしなかったのか、しばし呆けるナヤスに、
「何処か痛めなかったか?」
ヤマトが申し訳なさげな笑みを浮かべて右手を差し出すと、
「お強くなりましたね、ヤマト様ぁ」
ナヤスは差し出された手を取り、立ち上がり、
「単純な格闘戦なら、ウッチはもはや勝てません」
微笑んだが、笑い下手の「般若の様な笑顔」は健在。
(俺の成長を喜んでくれてるんだよな……)
若干不安を抱きながらも、褒められた事と、自身の確かな成長に照れ笑い。
「んな事ないさ。だいたいナヤスが本気だったら、足元にも及ばない」
「いいえ、ヤマト様。戦いとは相手の動きを知り、戦術を立てる事。相手の動きが把握出来るようなった時点で、ヤマト様は今より格段に強くなれます」
「だと良いけどぉ」
笑って見せるヤマトに、
(ウッチ、今イイ事を言いましたぁ! ヤマト様のウッチに対する好感度がアップアップでぇす♪)
内心では良からぬ事を考え、ポッと頬を赤らめていると、
「ハイハイ、ヤマトどいてぇどいてぇ!」
ジゼがヤマトを突き飛ばし、
「次は私の番だよぉ!」
ナヤスの前に立った。
(う、ウッチとヤマト様のスィートタイムをぉおぉぉ!)
あからさまにムッとするナヤス。
「ジゼぇ! 本気で行かせてもらいまぁす!」
「望むところだよ、ナヤス!」
激しい火花を散らす二人の乙女。
そんな二人を、
「気合十分だなぁ」
ヤマトは呑気に見つめ、
「俺も一本取ったくらいで調子に乗ってる場合じゃないな」
心持ちを引き締め直すと、傍らに立つジャックとマリアは、
((朴念仁……))
呆れ顔。
するとシャーロットが「不動の満面の笑顔」を以って、
「ジャックぅ! マリアぁ! よそ見している場合じゃないニャ!」
「う、うっせぇ! わぁてる!」
「わ、分かっておりますわ!」
二人は目隠しをし、シャーロットを審判に鬼ごっこを始めた。
それぞれが今のレベルに合わせた稽古をする中、出産日が近づきつつあったナクアだけは母子の安全を考慮し、トレーニングから外れていた。
ヤマトと対峙しているにもかかわらず、珍しく、いつも通りの仄暗い表情したナヤス。その姿は一瞬にして消えたが、ヤマトは焦る事無く意識を周囲に開き、
「…………」
神経を張り巡らせる。
ナヤスは消えた訳でない。一瞬のうちに、スティーラーの認識能力を上回るスピードに達し、消えた様に見えただけ。
「…………」
全身の皮膚感覚で、ナヤスが発する「微かな音」ではなく、ナヤスが発する「気」を探るヤマト。
一瞬、肌がヒリつく感覚を覚え、
「ここだァ!」
冷静に、かつ瞬時に体を右にさばきつつ両手で何かを掴み、迫る勢いごと利用して丸め込む様に、床に叩きつけた。いわゆる、柔道の投げ技の一つ『一本背負い』である。
「そこまでぇ!」
艦長の制止を促すひと声が上がった。
床の上で放心する、仰向けのナヤス。ヤマトが掴んだのは彼女の右腕であった。投げ飛ばされるなど思いもしなかったのか、しばし呆けるナヤスに、
「何処か痛めなかったか?」
ヤマトが申し訳なさげな笑みを浮かべて右手を差し出すと、
「お強くなりましたね、ヤマト様ぁ」
ナヤスは差し出された手を取り、立ち上がり、
「単純な格闘戦なら、ウッチはもはや勝てません」
微笑んだが、笑い下手の「般若の様な笑顔」は健在。
(俺の成長を喜んでくれてるんだよな……)
若干不安を抱きながらも、褒められた事と、自身の確かな成長に照れ笑い。
「んな事ないさ。だいたいナヤスが本気だったら、足元にも及ばない」
「いいえ、ヤマト様。戦いとは相手の動きを知り、戦術を立てる事。相手の動きが把握出来るようなった時点で、ヤマト様は今より格段に強くなれます」
「だと良いけどぉ」
笑って見せるヤマトに、
(ウッチ、今イイ事を言いましたぁ! ヤマト様のウッチに対する好感度がアップアップでぇす♪)
内心では良からぬ事を考え、ポッと頬を赤らめていると、
「ハイハイ、ヤマトどいてぇどいてぇ!」
ジゼがヤマトを突き飛ばし、
「次は私の番だよぉ!」
ナヤスの前に立った。
(う、ウッチとヤマト様のスィートタイムをぉおぉぉ!)
あからさまにムッとするナヤス。
「ジゼぇ! 本気で行かせてもらいまぁす!」
「望むところだよ、ナヤス!」
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そんな二人を、
「気合十分だなぁ」
ヤマトは呑気に見つめ、
「俺も一本取ったくらいで調子に乗ってる場合じゃないな」
心持ちを引き締め直すと、傍らに立つジャックとマリアは、
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するとシャーロットが「不動の満面の笑顔」を以って、
「ジャックぅ! マリアぁ! よそ見している場合じゃないニャ!」
「う、うっせぇ! わぁてる!」
「わ、分かっておりますわ!」
二人は目隠しをし、シャーロットを審判に鬼ごっこを始めた。
それぞれが今のレベルに合わせた稽古をする中、出産日が近づきつつあったナクアだけは母子の安全を考慮し、トレーニングから外れていた。
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◇
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