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青木 森

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10.徳義の章_21

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 一夜明け―――
 ガーディアンが上よ下よの大騒ぎになっている事など露と知らないエラは、指示通り地元警察署に出頭し、住民登録のないコーギーとヴァイオレットは「任務で同席出来ない」と偽の都合を作り、一人で警察署長や州首相などのお偉い方々と面会した。
 一時間ほどして警察署を出るエラ。疲れた表情で大きく背伸びを一つ。
「やっと、解放されましたぁ~~~」
 ため息交じりに脱力していると、
「お疲れ様でございますですわ、エラぁ」
「功績は警察に譲ったのに、随分とかかりましたねぇ」
 長々と外で待っていたにもかかわらず、労をねぎらう二人に、
「お待たせしてしまい、すみませんでしたぁ。州首相さんと娘さんから、感謝の言葉の雨あられが中々止まなくてぇ~」
 苦笑いを返した。
 そんな三人に、道路を挟んだビルの物陰から、望遠レンズ付きのカメラを向けるバイクにまたがった一人の男。
 パシャ! パシャパシャ!
 カメラの液晶画面で、今しがた撮影した画像をプレビューし、
「警察のウソとスクールバスを救った真の三女神。タイトルは決まりだな。イイ金になる」
 ほくそ笑むと、
「僕は『女』じゃないんですけどねぇ」
「!?」
 驚いて上げた視線の先には、作り笑顔のコーギー。
「盗み撮りなんて失礼でございますですわぁ~この国の肖像権とプライバシーはどうなっておりますですのぉ?」
「な!?」
 振り向くと、呆れ顔のヴァイオレット。
「クソォ!」
 逃走しようと慌ててバイクの鍵に手を伸ばしたが、
(か、鍵が無いぃ!?)
「お探し物はコレですかぁ?」
「のぉ!?」
 反対側を向くと、バイクの鍵を指先で回す笑顔のエラが。
 すると男は観念するかと思いきや、カメラを「渡すものか」と言わんばかり抱きかかえ、
「データは渡さない!! これは「国民の真実を知る権利」と「報道の自由」だァ!」
 先程まで金儲けを口走っていたとは思えない、もっともらしい一言で逆ギレ。
 しかしコーギーは怒りを露わにする事もなく、いつも通りの作り笑顔で、
「貴方が何を考え、何をしようが僕の知った事ではありませんが……撮られる側にも権利はあるので、コレは没収させていただきました」
 いつの間にカメラから抜き取ったのか、記録カードを男にチラつかせ、
「あっ!」
 二の句を待たず、目の前で握り潰して見せた。
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