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青木 森

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9.黎明の章_11

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 レーダー監視長アイザックは、ガルシアサードと重なる様に表示される何かに、
「艦長ォ! 本艦の真下に艦アリィ!」
「クッ!」
 艦長は立ち上がり、
「各員に緊急戦闘準備の通達を!」
 ブリッジ内に緊張が走ったが、
「待って下さい!」
 アイザックは手元の端末を操作し、
「シグナルはグリーン! 味方です! 物標は『浮きドック』です!」
 声は緊張から一転、和らいだ声色に代わり、ブリッジクルー達から脱力したような安堵の息が漏れる中、今度はナタリーが、
「艦長ぉ、浮きドックからコールっスぅ」
「うむ。繋いでくれたまえ」
 緊張を一気に緩める事無く、静かに座り直すと、
「ハイっス。正面の大型モニタに映すっス」
 再び自席の端末を操作。
 先程までマシューが映っていた大型モニタに、懐かしい……と言うより、クルーの誰もが、その存在を忘れていた人物が現れた。
 その人物は斜に構え、キザッぽく前髪をたなびかせ、
「艦長、みなさん、ご無沙汰してます。お元気そうで何よりです」
 笑顔を見せたのはダニエル。
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
((((((((そう言えば最近見かけなかった……))))))))
 返答に困り、視線が泳ぐ無言の艦長たち。
 そんな仲間たちの姿を前に、キメ顔は崩れ、
「えぇえぇ分かっていました、分かっていましたともぉ! どうせ僕の事なんか忘れてたんですよねぇ!」
 半泣きのダニエルに艦長は慌て、
「い、イヤ、そんな事は……だ、大丈夫だダニエル君!」
「何が大丈夫なんですかぁ、艦長ぉ! フォローにすらなってないっス!」
 へそを曲げ、
「僕が、皆さんを、南極基地までお連れしますからぁ!」
 ブツリと通信を切った。
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
 ブリッジ内に漂う、気まずい空気。
 誰も何も言わない中、ガルシアサードは浮上して来た浮きドックに、以前と同様に内部収納され、海中を潜航し、南極基地へと移動を開始した。
 その間、ヘソを曲げたダニエルを、ヤマト達が宥めて透かしてご機嫌取りをした事は言うまでも無い。
 若干の腑に落ちなさを残しつつ、気持ちを持ち直すダニエルであったが、何気に忙しいらしく、南極基地への到着を待たず、浮きドックを自動航行に切り替え、以前ナクアが「人間に対する興味が失せた」と言って沈めてしまった『浮島』の再起動の準備に向けた陣頭指揮を執る為、早々に離艦して行った。
 指揮する相手は「アンドロイドペンギン達だけ」ではあるが。

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