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8.朋友の章_7
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室内も外観同様、博物館でも開けそうなアンティークの塊。西部劇の映画でも撮れそうな内装や、家具、小物達である。
「はぁ~」
「へぇ~」
「ほぅ~」
興味津々、辺りを見回す三人。
「こっちだよ」
リビングへと導かれた。
暖炉の上には、若き頃の老婆と思しき女性と、夫と一人息子であろう人物が共に写る、家族写真の二枚が飾られていた。
家の中に、老婆以外のひと気は無く、
「おばぁ様は、一人暮らしですの?」
すると老婆は暖炉の前に置かれたロッキングチェアに座りつつ、
「息子は都会に、夫はだいぶ前にねぇ」
微かに寂しげな笑みを浮かべ、
「「「…………」」」
思わず押し黙る中、最初に口を開いたのはエラであった。
「おばあさん。さっきの話の続きを……」
「うぅん? あぁ、この町に起きた事かい?」
頷くと、
「マフィアさ」
「マフィア?」
「あぁ。女王陛下が居た頃は、まだ良かったが、陛下がこの国を去って、しばらく混乱が続いた時、奴らは突然やって来たのさ」
「「…………」」
(女王陛下……ナムヤ御姉様の事で、ございますですわねぇ……)
(ですね)
無言で視線を交わす、ヴァイオレットとコーギー。
「強盗に殺人、誘拐……町は荒れ、みんな出て行った……。残ったのは訳アリ住人だけさ」
「おばあさんは、何で出て行かなかったんですか?」
「都会で暮らす息子に、迷惑を掛けたくないしねぇ……それに……」
暖炉の上の写真立てを見つめ、
「何より「あの人」との、思い出が詰まった家だからねぇ」
目を細め、過去を懐かしんでいると、
「それだけじゃないですよねぇ?」
乾いた作り笑いで、コーギーが久々に言葉を発した。
一瞬ギクリとする老婆。
「な、何を言ってんだい、坊や。あははははは……」
笑顔の下に隠れた鋭い眼差しに、明らかな動揺を見せ、
「コーギー、どう言う意味ですの?」
ヴァイオレットが首を傾げると、突如、玄関の方から、
『ばぁさん、居るかぁあぁあぁ!』
ドスドスと、無作法な足音が近づき、
(チッ、あの馬鹿がぁ!)
急に老婆が苦虫を噛み潰したような「しかめっ面」で、小声で毒づくと、
部屋の扉がバァンと跳ね開き、
「メラニー婆さん居るかぁ! イイ金づるを捕まえたそうじゃねぇか! アントン様が、徴収に来たぜぇ!」
ラッパー風に着崩した若い男が入って来た。
しかし室内のコーギー達を見るなり、
「おぉ?」
今更ながら間の悪さに気付き、きょとん顔。
メラニーと呼ばれた老婆は、ロッキングチェアで、
「アントン……て……てめぇ……」
ワナワナと怒りに打ち震え、
ぶちっ!
「こんガキャあ! これからって時に、しのぎの邪魔し腐りやがってぇ!」
激昂して立ち上がると、壁に掛けてあったライフルをムンズと掴み、
「このボケがァ! おととい来やがれぇ!」
アントンに銃口を向け、
「アレックスに詫び入れに来いって伝えな!」
容赦なく発砲。
弾は部屋の扉を撃ち抜き、
「ひぃ! ひぃいぃぃぃぃっぃいっぃいぃうぃ!」
アントンは悲鳴を上げて、飛び出していった。
「クソがぁ!」
銃口から硝煙を登らせ、毒づくメラニー。
「!」
三人の視線に振り返った。
「はぁ~」
「へぇ~」
「ほぅ~」
興味津々、辺りを見回す三人。
「こっちだよ」
リビングへと導かれた。
暖炉の上には、若き頃の老婆と思しき女性と、夫と一人息子であろう人物が共に写る、家族写真の二枚が飾られていた。
家の中に、老婆以外のひと気は無く、
「おばぁ様は、一人暮らしですの?」
すると老婆は暖炉の前に置かれたロッキングチェアに座りつつ、
「息子は都会に、夫はだいぶ前にねぇ」
微かに寂しげな笑みを浮かべ、
「「「…………」」」
思わず押し黙る中、最初に口を開いたのはエラであった。
「おばあさん。さっきの話の続きを……」
「うぅん? あぁ、この町に起きた事かい?」
頷くと、
「マフィアさ」
「マフィア?」
「あぁ。女王陛下が居た頃は、まだ良かったが、陛下がこの国を去って、しばらく混乱が続いた時、奴らは突然やって来たのさ」
「「…………」」
(女王陛下……ナムヤ御姉様の事で、ございますですわねぇ……)
(ですね)
無言で視線を交わす、ヴァイオレットとコーギー。
「強盗に殺人、誘拐……町は荒れ、みんな出て行った……。残ったのは訳アリ住人だけさ」
「おばあさんは、何で出て行かなかったんですか?」
「都会で暮らす息子に、迷惑を掛けたくないしねぇ……それに……」
暖炉の上の写真立てを見つめ、
「何より「あの人」との、思い出が詰まった家だからねぇ」
目を細め、過去を懐かしんでいると、
「それだけじゃないですよねぇ?」
乾いた作り笑いで、コーギーが久々に言葉を発した。
一瞬ギクリとする老婆。
「な、何を言ってんだい、坊や。あははははは……」
笑顔の下に隠れた鋭い眼差しに、明らかな動揺を見せ、
「コーギー、どう言う意味ですの?」
ヴァイオレットが首を傾げると、突如、玄関の方から、
『ばぁさん、居るかぁあぁあぁ!』
ドスドスと、無作法な足音が近づき、
(チッ、あの馬鹿がぁ!)
急に老婆が苦虫を噛み潰したような「しかめっ面」で、小声で毒づくと、
部屋の扉がバァンと跳ね開き、
「メラニー婆さん居るかぁ! イイ金づるを捕まえたそうじゃねぇか! アントン様が、徴収に来たぜぇ!」
ラッパー風に着崩した若い男が入って来た。
しかし室内のコーギー達を見るなり、
「おぉ?」
今更ながら間の悪さに気付き、きょとん顔。
メラニーと呼ばれた老婆は、ロッキングチェアで、
「アントン……て……てめぇ……」
ワナワナと怒りに打ち震え、
ぶちっ!
「こんガキャあ! これからって時に、しのぎの邪魔し腐りやがってぇ!」
激昂して立ち上がると、壁に掛けてあったライフルをムンズと掴み、
「このボケがァ! おととい来やがれぇ!」
アントンに銃口を向け、
「アレックスに詫び入れに来いって伝えな!」
容赦なく発砲。
弾は部屋の扉を撃ち抜き、
「ひぃ! ひぃいぃぃぃぃっぃいっぃいぃうぃ!」
アントンは悲鳴を上げて、飛び出していった。
「クソがぁ!」
銃口から硝煙を登らせ、毒づくメラニー。
「!」
三人の視線に振り返った。
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