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8.朋友の章_5
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何かを悟ったコーギーは「本当の事を言う筈がない」と思いながら、
「どんな「任務(にんむ)」なんですかぁ?」
バックミラー越し、企み笑顔で尋ねた。
何かしら隠し事をしているエラの尻尾を掴む為に、鎌をかけたのである。
「え、えぇ~とぉ~そのぉ……な、何の話でしょうぅ……」
しどろもどろで、必死に言い逃れを考えるエラ。導き出された答えは、
「い、嫌だなぁ~コーギーさぁん、それじゃ私が『軍人さん』みたいじゃないですかぁ~」
コーギーは作り笑顔のまま、クスリと小さく笑い、
「へぇ~『軍人』なんだぁ。エラ・エリス一等兵ぇ」
「なっ!?」
一番下っ端の一兵卒扱いされたエラは憤慨し、
「上等兵でしたぁ!」
景気よく経歴を暴露。
「あぁ!」
慌てて口を塞ぐも時すでに遅し。
「「アハハハハハハハハハハハハハハァ!」」
大爆笑するコーギーとヴァイオレット。
「しょ、正直者ですねぇエラ上等兵はぁ! わ、笑い過ぎて事故を起こしそうですよぉ!」
コーギーは目元の涙を指で拭い、
「それでぇ、今はどこに所属しているんですかぁ?」
「ふえぇ!? 今ぁ!? 何故そこまでぇ!?」
「うふふふふふふ。それならあたくしでも、分かりますですわぁ。貴方先ほど「上等兵でした」と、過去形で言ってましたですものぉ」
「はぁう……」
軽く落ち込み、頭を抱え、
「新生ガーディアンでぇす……」
ポツリと呟いた。
「「!」」
「お二人に近づいて、動向を探る様にと言われましてぇ……」
(はぁ……また任務失敗でぇす……これで何度目でしょう……)
トラブルを招き寄せる体質と、嘘がつけない性格に、ほとほと呆れてため息を吐くと、
「良かったです」
「ですわねぇ」
「へ?」
きょとん顔を上げるエラ。
コーギーは運転しながら、晴れやかな作り笑顔で、
「嘘をついたり、任務の次第によっては、その辺に放り投げて行こうと思っていたんですけど」
「ですわねぇ」
ケラケラと笑い合う二人から、任務継続が可能である事を悟り、
(馬鹿正直で良かったぁ~)
生まれて初めて心底思うエラ。
今、三人が居る周囲は数百キロレベルで何もない、荒野のど真ん中。そんな所にガス欠のバイクごと放り出されていたらと思うと、背筋が寒くなった。
「と、ところでお二人は、これからどちらへ行かれるのですかぁ?」
任務の話から、話を逸らすと、
「「『アリス・スプリングス』(だよぉ・ですわぁ)」」
二人は警戒なく正直に答えた。
それはクローザーである二人が、人間如きに妨害されたとしても、蚊に刺された程度にも問題にならないと思った事も要因であるが、出会って数分で分かるエラの人柄の良さに、二人が好感を持った事が大きく起因していた。
「では、南下されるんですねぇ。すると目的地は『ポート・オーガスタ』ですか?」
「『ダーウィン』(だよぉ・ですわぁ)」
「へぇ~」
任務度外視で、雑談の様に頷くと、
「あれ? ダーウィンって北の端ですよ? なんでわざわざ一旦数百キロも南下して、アリス・スプリングスに行くんですか?」
(もっ、もしかしたら何か重大な事があるのかも知れない……)
はたと任務を思い出し、固唾を飲んで答えを待つと、
「「…………から」」
「……?」
よく聞き取れなかった。
「す、すみません。もう一度……」
疑問顔で耳を近づけると、コーギーとヴァイオレットがおずおずと、
「「……ワラビーに会いたいから……」」
「!」
「「…………」」
少し赤い顔して黙る二人に、
「…………プッ」
エラは小さく噴き出すと、
「あはははははは!」
「「笑い過ぎ(ですわぁ)!」」
「あははは、すみませぇん。悪い意味で笑ったのではなくてぇ。気分を害したのなら謝りますですぅ。でも、」
エラは笑い過ぎの涙目を擦り、
「お二人の調査報告書を読んで、とんでもない極悪人を勝手に想像して、勝手に身構えていた自分が、なんか馬鹿らしく思えてぇ」
笑い過ぎを一呼吸おいて収めると、
「良い意味で裏切られて、良かったでぇす」
ニコリと微笑んだ。
「ほ、褒められてる気がしませんわぁ」
「本当ですよぉ」
照れ臭そうなヴァイオレットとコーギー。
それから三人はエラのファッションのこだわりや、バイクのこだわりなど、様々な他愛ない話に花を咲かせた。
二人が、今の人類を滅ぼす存在の『クローザー』である事を除いて。
「どんな「任務(にんむ)」なんですかぁ?」
バックミラー越し、企み笑顔で尋ねた。
何かしら隠し事をしているエラの尻尾を掴む為に、鎌をかけたのである。
「え、えぇ~とぉ~そのぉ……な、何の話でしょうぅ……」
しどろもどろで、必死に言い逃れを考えるエラ。導き出された答えは、
「い、嫌だなぁ~コーギーさぁん、それじゃ私が『軍人さん』みたいじゃないですかぁ~」
コーギーは作り笑顔のまま、クスリと小さく笑い、
「へぇ~『軍人』なんだぁ。エラ・エリス一等兵ぇ」
「なっ!?」
一番下っ端の一兵卒扱いされたエラは憤慨し、
「上等兵でしたぁ!」
景気よく経歴を暴露。
「あぁ!」
慌てて口を塞ぐも時すでに遅し。
「「アハハハハハハハハハハハハハハァ!」」
大爆笑するコーギーとヴァイオレット。
「しょ、正直者ですねぇエラ上等兵はぁ! わ、笑い過ぎて事故を起こしそうですよぉ!」
コーギーは目元の涙を指で拭い、
「それでぇ、今はどこに所属しているんですかぁ?」
「ふえぇ!? 今ぁ!? 何故そこまでぇ!?」
「うふふふふふふ。それならあたくしでも、分かりますですわぁ。貴方先ほど「上等兵でした」と、過去形で言ってましたですものぉ」
「はぁう……」
軽く落ち込み、頭を抱え、
「新生ガーディアンでぇす……」
ポツリと呟いた。
「「!」」
「お二人に近づいて、動向を探る様にと言われましてぇ……」
(はぁ……また任務失敗でぇす……これで何度目でしょう……)
トラブルを招き寄せる体質と、嘘がつけない性格に、ほとほと呆れてため息を吐くと、
「良かったです」
「ですわねぇ」
「へ?」
きょとん顔を上げるエラ。
コーギーは運転しながら、晴れやかな作り笑顔で、
「嘘をついたり、任務の次第によっては、その辺に放り投げて行こうと思っていたんですけど」
「ですわねぇ」
ケラケラと笑い合う二人から、任務継続が可能である事を悟り、
(馬鹿正直で良かったぁ~)
生まれて初めて心底思うエラ。
今、三人が居る周囲は数百キロレベルで何もない、荒野のど真ん中。そんな所にガス欠のバイクごと放り出されていたらと思うと、背筋が寒くなった。
「と、ところでお二人は、これからどちらへ行かれるのですかぁ?」
任務の話から、話を逸らすと、
「「『アリス・スプリングス』(だよぉ・ですわぁ)」」
二人は警戒なく正直に答えた。
それはクローザーである二人が、人間如きに妨害されたとしても、蚊に刺された程度にも問題にならないと思った事も要因であるが、出会って数分で分かるエラの人柄の良さに、二人が好感を持った事が大きく起因していた。
「では、南下されるんですねぇ。すると目的地は『ポート・オーガスタ』ですか?」
「『ダーウィン』(だよぉ・ですわぁ)」
「へぇ~」
任務度外視で、雑談の様に頷くと、
「あれ? ダーウィンって北の端ですよ? なんでわざわざ一旦数百キロも南下して、アリス・スプリングスに行くんですか?」
(もっ、もしかしたら何か重大な事があるのかも知れない……)
はたと任務を思い出し、固唾を飲んで答えを待つと、
「「…………から」」
「……?」
よく聞き取れなかった。
「す、すみません。もう一度……」
疑問顔で耳を近づけると、コーギーとヴァイオレットがおずおずと、
「「……ワラビーに会いたいから……」」
「!」
「「…………」」
少し赤い顔して黙る二人に、
「…………プッ」
エラは小さく噴き出すと、
「あはははははは!」
「「笑い過ぎ(ですわぁ)!」」
「あははは、すみませぇん。悪い意味で笑ったのではなくてぇ。気分を害したのなら謝りますですぅ。でも、」
エラは笑い過ぎの涙目を擦り、
「お二人の調査報告書を読んで、とんでもない極悪人を勝手に想像して、勝手に身構えていた自分が、なんか馬鹿らしく思えてぇ」
笑い過ぎを一呼吸おいて収めると、
「良い意味で裏切られて、良かったでぇす」
ニコリと微笑んだ。
「ほ、褒められてる気がしませんわぁ」
「本当ですよぉ」
照れ臭そうなヴァイオレットとコーギー。
それから三人はエラのファッションのこだわりや、バイクのこだわりなど、様々な他愛ない話に花を咲かせた。
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