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7.岐路の章_18
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マリアは船長を捕らえたまま航海担当者の下へ移動すると、席のモニタに映し出された海図と、ブリッジ中央の大型モニタに映る緊急速報画面上の着弾地点を見比べた。
(…………)
着弾地点は様々な国や地域にわたり数えきれない程あるが、マリアが着目したのは沖縄とハワイの着弾。
モニタ内の時計を見るなり、
(マズいですわ……津波が寄せて来るまでの時間が……そして既に陸がこれ程近く……)
核爆発の直接的な影響は無さそうであったが、マリアが焦りを覚えたのは、大規模な爆発に伴い発生する大津波であった。
(これ以上、陸に近づくのはマズいですわ……しかしこれ程大きな船を回頭して沖合に逃げるには、もう時間が……)
マリアは眉間にシワを寄せ、床で気絶する男を一瞥し、
(まったく愚かな事をしてくれたモノですわ!)
しばし黙考すると、腹が決まったのかカッと両眼を見開き、
「船首このまま! 惰性に任せて停船なさい!」
「「「「「「「「「「えぇ!?」」」」」」」」」」
意外な指示に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して驚くブリッジクルー達。
しかしそう言う反応が返るであろう事を予期していたマリアはすかさず、
「従いなさいですわ! 目の前で船長の首が「黒ひげ」の様に飛びますわよ!」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
慌てて指示に従うクルー達。
一方、既にマリアが本気で全員を何かから救おうとしている覚悟を感じ取っていた船長は、落ち着いた小声で、
(何故、停船指示を?)
過分な情報をクルー達に与え、負荷を増やさない様にと考慮した、船長の気遣いである。
察したマリアは口元に小さな笑みを浮かべ、
(これからこの船は、兵器の爆発で生じた大津波に背後から襲われますの)
小声で答えると、
(ならば即座に回頭して、船首で波頭を切らなければ転覆して、)
(いいえ。嵐により起こる波ではありませんので、波頭は立ちませんわ)
(…………?)
(この船は高さを増した海面ごと、陸に運ばれてしまいますの)
(!)
(そう言う事ですわ。どこかのお馬鹿さんのせいで、回頭している時間はもうありませの。ここまで陸に近づいてしまっている以上、警戒すべきは引き波に巻き込まれた時の事ですわ)
(なるほど……)
(それに船尾を陸側に向けていると引き波に巻き込まれた時、漂流物でスクリューや舵を破壊される可能性が高いですわ。舵を失っては操船出来なくなってしまいますもの)
ニコリと笑うマリア。
するとそこへ、
「船長! 納得いかない乗客たちが、シアターへの誘導を拒否しているそうです!」
無線通信で船内クルーとやり取りしていたクルーが、困惑した表情で振り返った。
(やはりな……この様な異常事態に、理由も告げられず、頭ごなしに「行け」と言われて従うお人好しは、そういるものではない)
船長はいぶかし気な表情を浮かべ、
「どうしますかな? ミス……」
「わたくしの名前など、些末な事ですわ」
想定の範囲内であったのか、マリアは落ち着き払った口調で微笑むと、
「この部屋の会話を、全乗客に聞こえるようになさい!」
「そ、そんな事をしたら乗客の不安を益々煽る事になります!」
「目に見えぬ不安に怯えるよりましですわァ!」
マリアは凛然と言い放った。
ハッとするブリッジクルー達。
もし自分達が乗客の立場だったら、この様な時に何も知らされなければ、不安に思って当然なのではないかと。
(…………)
着弾地点は様々な国や地域にわたり数えきれない程あるが、マリアが着目したのは沖縄とハワイの着弾。
モニタ内の時計を見るなり、
(マズいですわ……津波が寄せて来るまでの時間が……そして既に陸がこれ程近く……)
核爆発の直接的な影響は無さそうであったが、マリアが焦りを覚えたのは、大規模な爆発に伴い発生する大津波であった。
(これ以上、陸に近づくのはマズいですわ……しかしこれ程大きな船を回頭して沖合に逃げるには、もう時間が……)
マリアは眉間にシワを寄せ、床で気絶する男を一瞥し、
(まったく愚かな事をしてくれたモノですわ!)
しばし黙考すると、腹が決まったのかカッと両眼を見開き、
「船首このまま! 惰性に任せて停船なさい!」
「「「「「「「「「「えぇ!?」」」」」」」」」」
意外な指示に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して驚くブリッジクルー達。
しかしそう言う反応が返るであろう事を予期していたマリアはすかさず、
「従いなさいですわ! 目の前で船長の首が「黒ひげ」の様に飛びますわよ!」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
慌てて指示に従うクルー達。
一方、既にマリアが本気で全員を何かから救おうとしている覚悟を感じ取っていた船長は、落ち着いた小声で、
(何故、停船指示を?)
過分な情報をクルー達に与え、負荷を増やさない様にと考慮した、船長の気遣いである。
察したマリアは口元に小さな笑みを浮かべ、
(これからこの船は、兵器の爆発で生じた大津波に背後から襲われますの)
小声で答えると、
(ならば即座に回頭して、船首で波頭を切らなければ転覆して、)
(いいえ。嵐により起こる波ではありませんので、波頭は立ちませんわ)
(…………?)
(この船は高さを増した海面ごと、陸に運ばれてしまいますの)
(!)
(そう言う事ですわ。どこかのお馬鹿さんのせいで、回頭している時間はもうありませの。ここまで陸に近づいてしまっている以上、警戒すべきは引き波に巻き込まれた時の事ですわ)
(なるほど……)
(それに船尾を陸側に向けていると引き波に巻き込まれた時、漂流物でスクリューや舵を破壊される可能性が高いですわ。舵を失っては操船出来なくなってしまいますもの)
ニコリと笑うマリア。
するとそこへ、
「船長! 納得いかない乗客たちが、シアターへの誘導を拒否しているそうです!」
無線通信で船内クルーとやり取りしていたクルーが、困惑した表情で振り返った。
(やはりな……この様な異常事態に、理由も告げられず、頭ごなしに「行け」と言われて従うお人好しは、そういるものではない)
船長はいぶかし気な表情を浮かべ、
「どうしますかな? ミス……」
「わたくしの名前など、些末な事ですわ」
想定の範囲内であったのか、マリアは落ち着き払った口調で微笑むと、
「この部屋の会話を、全乗客に聞こえるようになさい!」
「そ、そんな事をしたら乗客の不安を益々煽る事になります!」
「目に見えぬ不安に怯えるよりましですわァ!」
マリアは凛然と言い放った。
ハッとするブリッジクルー達。
もし自分達が乗客の立場だったら、この様な時に何も知らされなければ、不安に思って当然なのではないかと。
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