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7.岐路の章_11
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二人の過剰反応に、ヤマトはバックミラー越し、
「ジャック、マリア? 「ナヤス」って名前に聞き覚えがあるのか?」
するとジャックが緊張感をはらんだ物言いで、
「「ナヤス」ってのはなぁ俺らの言葉でなぁ、今の言葉に翻訳すりゃ「オダマキ」の事だ」
「それがどうかしたの?」
不思議そうな顔で振り返るジゼ。
後部座席のマリアは怪訝な表情を浮かべ、
「クローザーのルムスがドクゼリ、ナムクスがトリカブト、オダマキも有名な毒草ですわ」
つまり、アリアナの救助に動いている二人の女性の内、一人はクローザーである可能性が浮上し、ヤマトは固唾を飲み、
「ぐ、偶然だろう? クローザーの名前が毒草だってのも、あくまで仮定で……」
「国を裏切ったスティーラーの事は、「ナス」。今で言う「毒」と呼ばれておりましたの」
「毒を以て毒を制すって、ことぉ?」
「うめぇ事を言うじゃねぇか、ジゼぇ。だが、その通りだ。ケツでイスばかり磨いてた、嫌味くせぇ元老院のジジィ共の考えそうなこったぁ」
「でも、もしそれが事実だとしたら、二人組のクローザーって事になるんじゃ……」
クローザーの強さを、身を以て知っているヤマトは遭遇してしまった状況を想像し、
「最悪だ……」
車を急停車させた。
「でも、どうするの? アリアナちゃんをご両親の下に連れて行ってあげなきゃ」
ジゼの指摘は最も。
しかし情報の足りない今のヤマト達は、危険と知りつつ彼女達と会って話を聞くしか手立てが無く、どうしたものかと思案していると、
「情報が全然ない訳じゃない」
ヤマトが懐から、数回折り畳んだ一枚の紙を取り出して見せた。
「もしかして地図!?」
「入手していらしたのぉ!?」
驚く女子二人の一方、出し抜かれた形になったジャックは半ば八つ当たり気味に、
「出し惜しみしてんじゃねぇ、ヤマト! ったくよぉ、どこで手に入れてやがった!」
「尋問してた兵士からさぁ。ジャックが投げ飛ばす少し前位かぁ」
「いつの間に……」
「ポケットから少し顔を出してたから、チャンスを窺ってたんだよ」
「抜け目ねぇヤロォだぜぇ」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
ヤマトは小さい笑みを浮かべ、地図を広げた。
地図はヤマトとジャックが脱出した基地を中心とした「地方図」らしく、比較的狭い範囲の地形が、等高線と共に書き込まれ、ローカルルールで記号化された基地や町、村などが描き込まれていた。
ヤマトは今の時間における太陽の位置と地図の方位、そして周辺の地形、逃げ出して来た基地の方角を照らし合わせ、
「今いるのは……多分ココじゃないかぁ?」
指差すと、ジャックは頷き、
「らしいな。近くに村はねぇ~みてぇ~だし、一番近いのは……この基地かぁ?」
少し離れた地点を指差した。
それでも距離は五十キロ以上。
「遠い……ですわねぇ……」
嘆息を漏らすマリアに、ジャックは何を言っているんだとばかり、
「車で移動してんのに、別に遠かねぇだろがぁ?」
すかさずジゼが、
「マリアが言ってるのは私達の事じゃなくて、この子のこと」
膝の上で、うつらうつらと舟を漕ぎ始めたアリアナを見下ろした。
「…………」
「とりあえず休憩だな、ジャック」
ニッと笑うヤマトに、ジャックは不服そうにプイッと横を向き、
「ケェ、めんどくせぇ」
「ではヤマト、一息つけそうな所をお願いしますわぁ」
「アリアナが起きない様な、安全運転でね」
「はいはい」
注文の多い母親二人に、苦笑いで再び車を走らせた。
アリアナが起きない様に、ゆっくりと。
「ジャック、マリア? 「ナヤス」って名前に聞き覚えがあるのか?」
するとジャックが緊張感をはらんだ物言いで、
「「ナヤス」ってのはなぁ俺らの言葉でなぁ、今の言葉に翻訳すりゃ「オダマキ」の事だ」
「それがどうかしたの?」
不思議そうな顔で振り返るジゼ。
後部座席のマリアは怪訝な表情を浮かべ、
「クローザーのルムスがドクゼリ、ナムクスがトリカブト、オダマキも有名な毒草ですわ」
つまり、アリアナの救助に動いている二人の女性の内、一人はクローザーである可能性が浮上し、ヤマトは固唾を飲み、
「ぐ、偶然だろう? クローザーの名前が毒草だってのも、あくまで仮定で……」
「国を裏切ったスティーラーの事は、「ナス」。今で言う「毒」と呼ばれておりましたの」
「毒を以て毒を制すって、ことぉ?」
「うめぇ事を言うじゃねぇか、ジゼぇ。だが、その通りだ。ケツでイスばかり磨いてた、嫌味くせぇ元老院のジジィ共の考えそうなこったぁ」
「でも、もしそれが事実だとしたら、二人組のクローザーって事になるんじゃ……」
クローザーの強さを、身を以て知っているヤマトは遭遇してしまった状況を想像し、
「最悪だ……」
車を急停車させた。
「でも、どうするの? アリアナちゃんをご両親の下に連れて行ってあげなきゃ」
ジゼの指摘は最も。
しかし情報の足りない今のヤマト達は、危険と知りつつ彼女達と会って話を聞くしか手立てが無く、どうしたものかと思案していると、
「情報が全然ない訳じゃない」
ヤマトが懐から、数回折り畳んだ一枚の紙を取り出して見せた。
「もしかして地図!?」
「入手していらしたのぉ!?」
驚く女子二人の一方、出し抜かれた形になったジャックは半ば八つ当たり気味に、
「出し惜しみしてんじゃねぇ、ヤマト! ったくよぉ、どこで手に入れてやがった!」
「尋問してた兵士からさぁ。ジャックが投げ飛ばす少し前位かぁ」
「いつの間に……」
「ポケットから少し顔を出してたから、チャンスを窺ってたんだよ」
「抜け目ねぇヤロォだぜぇ」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
ヤマトは小さい笑みを浮かべ、地図を広げた。
地図はヤマトとジャックが脱出した基地を中心とした「地方図」らしく、比較的狭い範囲の地形が、等高線と共に書き込まれ、ローカルルールで記号化された基地や町、村などが描き込まれていた。
ヤマトは今の時間における太陽の位置と地図の方位、そして周辺の地形、逃げ出して来た基地の方角を照らし合わせ、
「今いるのは……多分ココじゃないかぁ?」
指差すと、ジャックは頷き、
「らしいな。近くに村はねぇ~みてぇ~だし、一番近いのは……この基地かぁ?」
少し離れた地点を指差した。
それでも距離は五十キロ以上。
「遠い……ですわねぇ……」
嘆息を漏らすマリアに、ジャックは何を言っているんだとばかり、
「車で移動してんのに、別に遠かねぇだろがぁ?」
すかさずジゼが、
「マリアが言ってるのは私達の事じゃなくて、この子のこと」
膝の上で、うつらうつらと舟を漕ぎ始めたアリアナを見下ろした。
「…………」
「とりあえず休憩だな、ジャック」
ニッと笑うヤマトに、ジャックは不服そうにプイッと横を向き、
「ケェ、めんどくせぇ」
「ではヤマト、一息つけそうな所をお願いしますわぁ」
「アリアナが起きない様な、安全運転でね」
「はいはい」
注文の多い母親二人に、苦笑いで再び車を走らせた。
アリアナが起きない様に、ゆっくりと。
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