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7.岐路の章_2
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異様に静まるブリッジ内で、艦長がおもむろに口を開いた。
「好奇心に溢れ、無垢な幼子の様であったナクア君は、大切な人を失う痛みと、遺された者が背負う悲しみを知ってしまった……。過去に自分がして来た行いに対する自責の念。我々の想像も及ばない悲しみと責め苦であろう……」
傍らに立つ副長ソフィアは神妙な面持ちで頷き、
「ですが艦長、今の彼女にはマシューがついています。支えてくれる者があれば、人は奈落の底からでも立ち直れると、私は思います」
好奇の目に晒され続け、家族と共に国を出る羽目になった経験を持つソフィアは、自身の苦悩と重ねてか、その眼には涙ではなく、確信の光りの様な物が宿っていた。
「うむ」
静かに頷く艦長。ブリッジクルー全員の心に訴えかける様に、
「今は、我々に出来うる限りの最善を行おう! さもなくばタケダ君の言っていた通り、世界はクローザーの手により最悪を迎える事になるやも知れぬ!」
「「「「「「「イエッサァーーーーッ!」」」」」」」
ブリッジクルー達は、クローザーとの戦いの決意を新たにした。
タケダさんは基地を空ける事が多かったナクアに変わり、南極基地でダイバーズの運営も行っていた。
その間、依頼主とメンバーとの橋渡しを行う業務の他に、クローザーについての情報収集も行っていたのであるが、口伝、遺跡調査など、ダイバーズメンバーから寄せらる膨大な量の情報を精査する中、クローザーの目的がスティーラーの破壊のみならず、現存する文明が地球にとって有害と判断した場合、その全てを破壊し、終焉に導く事も任務とされている事が判明したのである。
それが、全クローザーに付された使命であるかまでは、不明であるが。
国を護り、他国を奪う為に作られたスティーラーの破壊も、私怨のみならず、使命実現の妨げになるからであり、ヤマト達は一日も早く、一人でも多くのスティーラーを集めて共闘し、クローザーと対抗するチカラを得る事が急務となっていた。
本来ならば国レベルの協力を得て国際的協調の下に、クローザーと相対するべき事例であるが、確たる証拠が無く、あくまで状況証拠の積み上げによる話。
ましてスティーラーやクローザーの存在も知らない国々がほとんどなうえ、ガルシアクルーはほぼ全員が各国からの脱走兵扱い。
いわゆる「お尋ね者」の集まり。
指名手配犯たちの「もしも話」など、核戦争後の疑心暗鬼に憑りつかれた世界の人々が聞き入れる筈もなく、現状において自分達で解決するより他、解決する術はないのであった。
そしてソフィアには、気掛かりな事がもう一つ。
同じ不安を抱く航海長クリストファーと視線を交わすと、静かに頷き合い、
((ブレイクは大丈夫なのかしら……))
腹心の部下であったルークの喪失による、ブレイクの心痛を気に掛ける二人。
調査班隊員ルークは、隊長のブレイクにとって部下である以前に、長く苛酷な戦場を共に駆け抜けた弟的戦友でもあった。
ルークを突如失い、もう一人の弟であるマシューも船を降り、その心中は察するに余り有る。
「好奇心に溢れ、無垢な幼子の様であったナクア君は、大切な人を失う痛みと、遺された者が背負う悲しみを知ってしまった……。過去に自分がして来た行いに対する自責の念。我々の想像も及ばない悲しみと責め苦であろう……」
傍らに立つ副長ソフィアは神妙な面持ちで頷き、
「ですが艦長、今の彼女にはマシューがついています。支えてくれる者があれば、人は奈落の底からでも立ち直れると、私は思います」
好奇の目に晒され続け、家族と共に国を出る羽目になった経験を持つソフィアは、自身の苦悩と重ねてか、その眼には涙ではなく、確信の光りの様な物が宿っていた。
「うむ」
静かに頷く艦長。ブリッジクルー全員の心に訴えかける様に、
「今は、我々に出来うる限りの最善を行おう! さもなくばタケダ君の言っていた通り、世界はクローザーの手により最悪を迎える事になるやも知れぬ!」
「「「「「「「イエッサァーーーーッ!」」」」」」」
ブリッジクルー達は、クローザーとの戦いの決意を新たにした。
タケダさんは基地を空ける事が多かったナクアに変わり、南極基地でダイバーズの運営も行っていた。
その間、依頼主とメンバーとの橋渡しを行う業務の他に、クローザーについての情報収集も行っていたのであるが、口伝、遺跡調査など、ダイバーズメンバーから寄せらる膨大な量の情報を精査する中、クローザーの目的がスティーラーの破壊のみならず、現存する文明が地球にとって有害と判断した場合、その全てを破壊し、終焉に導く事も任務とされている事が判明したのである。
それが、全クローザーに付された使命であるかまでは、不明であるが。
国を護り、他国を奪う為に作られたスティーラーの破壊も、私怨のみならず、使命実現の妨げになるからであり、ヤマト達は一日も早く、一人でも多くのスティーラーを集めて共闘し、クローザーと対抗するチカラを得る事が急務となっていた。
本来ならば国レベルの協力を得て国際的協調の下に、クローザーと相対するべき事例であるが、確たる証拠が無く、あくまで状況証拠の積み上げによる話。
ましてスティーラーやクローザーの存在も知らない国々がほとんどなうえ、ガルシアクルーはほぼ全員が各国からの脱走兵扱い。
いわゆる「お尋ね者」の集まり。
指名手配犯たちの「もしも話」など、核戦争後の疑心暗鬼に憑りつかれた世界の人々が聞き入れる筈もなく、現状において自分達で解決するより他、解決する術はないのであった。
そしてソフィアには、気掛かりな事がもう一つ。
同じ不安を抱く航海長クリストファーと視線を交わすと、静かに頷き合い、
((ブレイクは大丈夫なのかしら……))
腹心の部下であったルークの喪失による、ブレイクの心痛を気に掛ける二人。
調査班隊員ルークは、隊長のブレイクにとって部下である以前に、長く苛酷な戦場を共に駆け抜けた弟的戦友でもあった。
ルークを突如失い、もう一人の弟であるマシューも船を降り、その心中は察するに余り有る。
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