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青木 森

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7.岐路の章_1

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 どこまでも突き抜ける青空の下、新たな改修を終えた「ガルシア改」は「ガルシアサード」として生まれ変わり、一路南アメリカ大陸目指し、洋上を滑る様に走っていた。
 仲間にすべきスティーラーは北と南、両アメリカ大陸に一人ずつ居るのだが、マリアとジャックの提案により、先ずは南アメリカ大陸を目指していたのである。
 アメリカ両大陸に居るスティーラーは兄妹であり、そもそも南北合わせたアメリカ大陸にスティーラーは兄一人であったが、国王である父親が突如崩御した事で国内体制維持の為、元々国民からの指示の厚かった彼は、スティーラーでありながら王位に就いて代々続く独裁体制を引き継ぎ、そればかりか彼は妃として、日頃から溺愛していた妹に猛烈求婚。
 執拗な求婚に嫌気がさした妹は、反体制派と共に首都がある北アメリカ大陸から逃走し、南アメリカ大陸に新たな国を立ち上げ、国を二分する事となった。
 通例ならば歴史ある国に対してパッと出の国が敵う筈もなく、徹底抗戦の末、完膚なきまで打ちのめされるのが一般的であるが、惚れた弱みと言うべきか、大事な妹に怪我をさせたくない兄は本気を出せず、戦争は長引き、二人の関係と同様に泥沼化。
 そうこうしているうちに起きたのが、全スティーラーの封印と、その直後に起きた地球規模の天変地異であった。

 そして現在―――
 世界規模の核戦争を引き金に目覚めた兄は、同時に目覚めた妹の尻を追い掛け回しているだろうと、マリアとジャックは推測。
『妹を仲間に引き入れれば、自動的に兄も仲間になる筈』
 故に、ガルシアサードは南アメリカ大陸を目指し航行していたのであった。
 新たな仲間の獲得に向け、意気揚々、南アメリカに乗り込むガルシアサードであったが、そのブリッジ内の空気は重苦しかった。
 改修工事をしたとは言え、妙に広く感じるブリッジ。
 それは、ナタリーの隣に大きく空いた、三つの空席の為であった。
 マシューとルーク、そしてナクアが座る筈であった三つの席。
 しかし、ルークはもういない。
 そしてルークの死を受け止めきれなかったナクアは南極基地の奥に引き籠ってしまい、傷心のナクアを支えるべく、マシューもまた基地に残ったのであった。
 三人の負っていた作業は、クオリティーは下がるものの簡素化、一部自動化された上で、ナタリーとシセが分業で兼任していた。
 主不在の空き席を、ナタリーは寂し気に見つめ、
「ナクアちゃん……大丈夫なんスかねぇ……」
「「「「「「「…………」」」」」」」
 誰も何も答えない。
答える事が出来ない。
 こんな時、決まって声を上げるのがマシューとルークであったが、騒々しくも明るい二人の掛け合いは、もう二度と聞く事が出来ない。
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