196 / 535
7.岐路の章_1
しおりを挟む
どこまでも突き抜ける青空の下、新たな改修を終えた「ガルシア改」は「ガルシアサード」として生まれ変わり、一路南アメリカ大陸目指し、洋上を滑る様に走っていた。
仲間にすべきスティーラーは北と南、両アメリカ大陸に一人ずつ居るのだが、マリアとジャックの提案により、先ずは南アメリカ大陸を目指していたのである。
アメリカ両大陸に居るスティーラーは兄妹であり、そもそも南北合わせたアメリカ大陸にスティーラーは兄一人であったが、国王である父親が突如崩御した事で国内体制維持の為、元々国民からの指示の厚かった彼は、スティーラーでありながら王位に就いて代々続く独裁体制を引き継ぎ、そればかりか彼は妃として、日頃から溺愛していた妹に猛烈求婚。
執拗な求婚に嫌気がさした妹は、反体制派と共に首都がある北アメリカ大陸から逃走し、南アメリカ大陸に新たな国を立ち上げ、国を二分する事となった。
通例ならば歴史ある国に対してパッと出の国が敵う筈もなく、徹底抗戦の末、完膚なきまで打ちのめされるのが一般的であるが、惚れた弱みと言うべきか、大事な妹に怪我をさせたくない兄は本気を出せず、戦争は長引き、二人の関係と同様に泥沼化。
そうこうしているうちに起きたのが、全スティーラーの封印と、その直後に起きた地球規模の天変地異であった。
そして現在―――
世界規模の核戦争を引き金に目覚めた兄は、同時に目覚めた妹の尻を追い掛け回しているだろうと、マリアとジャックは推測。
『妹を仲間に引き入れれば、自動的に兄も仲間になる筈』
故に、ガルシアサードは南アメリカ大陸を目指し航行していたのであった。
新たな仲間の獲得に向け、意気揚々、南アメリカに乗り込むガルシアサードであったが、そのブリッジ内の空気は重苦しかった。
改修工事をしたとは言え、妙に広く感じるブリッジ。
それは、ナタリーの隣に大きく空いた、三つの空席の為であった。
マシューとルーク、そしてナクアが座る筈であった三つの席。
しかし、ルークはもういない。
そしてルークの死を受け止めきれなかったナクアは南極基地の奥に引き籠ってしまい、傷心のナクアを支えるべく、マシューもまた基地に残ったのであった。
三人の負っていた作業は、クオリティーは下がるものの簡素化、一部自動化された上で、ナタリーとシセが分業で兼任していた。
主不在の空き席を、ナタリーは寂し気に見つめ、
「ナクアちゃん……大丈夫なんスかねぇ……」
「「「「「「「…………」」」」」」」
誰も何も答えない。
答える事が出来ない。
こんな時、決まって声を上げるのがマシューとルークであったが、騒々しくも明るい二人の掛け合いは、もう二度と聞く事が出来ない。
仲間にすべきスティーラーは北と南、両アメリカ大陸に一人ずつ居るのだが、マリアとジャックの提案により、先ずは南アメリカ大陸を目指していたのである。
アメリカ両大陸に居るスティーラーは兄妹であり、そもそも南北合わせたアメリカ大陸にスティーラーは兄一人であったが、国王である父親が突如崩御した事で国内体制維持の為、元々国民からの指示の厚かった彼は、スティーラーでありながら王位に就いて代々続く独裁体制を引き継ぎ、そればかりか彼は妃として、日頃から溺愛していた妹に猛烈求婚。
執拗な求婚に嫌気がさした妹は、反体制派と共に首都がある北アメリカ大陸から逃走し、南アメリカ大陸に新たな国を立ち上げ、国を二分する事となった。
通例ならば歴史ある国に対してパッと出の国が敵う筈もなく、徹底抗戦の末、完膚なきまで打ちのめされるのが一般的であるが、惚れた弱みと言うべきか、大事な妹に怪我をさせたくない兄は本気を出せず、戦争は長引き、二人の関係と同様に泥沼化。
そうこうしているうちに起きたのが、全スティーラーの封印と、その直後に起きた地球規模の天変地異であった。
そして現在―――
世界規模の核戦争を引き金に目覚めた兄は、同時に目覚めた妹の尻を追い掛け回しているだろうと、マリアとジャックは推測。
『妹を仲間に引き入れれば、自動的に兄も仲間になる筈』
故に、ガルシアサードは南アメリカ大陸を目指し航行していたのであった。
新たな仲間の獲得に向け、意気揚々、南アメリカに乗り込むガルシアサードであったが、そのブリッジ内の空気は重苦しかった。
改修工事をしたとは言え、妙に広く感じるブリッジ。
それは、ナタリーの隣に大きく空いた、三つの空席の為であった。
マシューとルーク、そしてナクアが座る筈であった三つの席。
しかし、ルークはもういない。
そしてルークの死を受け止めきれなかったナクアは南極基地の奥に引き籠ってしまい、傷心のナクアを支えるべく、マシューもまた基地に残ったのであった。
三人の負っていた作業は、クオリティーは下がるものの簡素化、一部自動化された上で、ナタリーとシセが分業で兼任していた。
主不在の空き席を、ナタリーは寂し気に見つめ、
「ナクアちゃん……大丈夫なんスかねぇ……」
「「「「「「「…………」」」」」」」
誰も何も答えない。
答える事が出来ない。
こんな時、決まって声を上げるのがマシューとルークであったが、騒々しくも明るい二人の掛け合いは、もう二度と聞く事が出来ない。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)
朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。
「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」
生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。
十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。
そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。
魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。
※『小説家になろう』でも掲載しています。
転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。
黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が子離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
追放された転生モブ顔王子と魔境の森の魔女の村
陸奥 霧風
ファンタジー
とある小学1年生の少年が川に落ちた幼馴染を助ける為になりふり構わず川に飛び込んだ。不運なことに助けるつもりが自分まで溺れてしまった。意識が途切れ目覚めたところ、フロンシニアス王国の第三王子ロッシュウは転生してしまった。文明の違いに困惑しながらも生きようとするが…… そして、魔女との運命的な出会いがロッシュウの運命を変える……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる