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6.聞知と修練の章-14
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二十畳ほどの仄暗い、とある一室―――
棚などが一切置かれて無い、ただ広いだけの室内を、小さな電球一つが天井から弱弱しく赤く照らしている。
得も言われぬ不気味さを醸し出す室内の中央には、パイプ椅子が一脚のみ。そんな、異様な室内に置かれたパイプ椅子には、一人の人物が座っていた。
「新生ガーディアン」の隊長を自称した、「メイソン・ウッド」である。
尋常ではない量の冷たい汗を流し、怯えからか眼球は小刻みに動き視線は定まらず、頬を引きつらせている。
ここは、極秘裏に行う彼の査問会の為に用意された会場である。
突如正面の壁から放たれる目も眩むほどの光に、
「うぅ!」
ウッドは手で光を遮り、目を細める。
正面の壁にはスモークガラスが張られ、その奥には数人のシルエットが見えた。
ウッドの居る室内の、どこからともなくカチリと音がし、
『聞こえているかね、メイソン・ウッド君』
物腰和からな声と同調する様に、微かに動いて見えるスモークガラスの奥のシルエット。
マイクを通し、スピーカーから語りける謎の人物の声に、ビクリと身を硬直させ、
「は、はひぃ!」
返す声に、アパート襲撃を指揮していた時の威厳はもはや皆無。
しかし謎の人物は、ウッドの変化を気にする風もなく淡々と、
『何故に、この様な場が設けられたか、君は分かるかね?』
静かで穏やかな口調に対し、ウッドは心臓を握られているかのな苦悶の顔で、血走った目をしてスモークガラスを凝視し、
「あっ! あの行いはぁ、くぅ、国を思えばこそでありィ!」
『黙りなさい』
静かな口調の中に滲む、絶対的威圧感。
『今、この国はデリケートな時期で、その様な時に、あの様な先走りは非常に困るだよ』
「しかし!」
『事が収まるまで、しばし休むと良い』
「へ?」
『なぁに、後任は決めてある。気兼ねする必要はないのだよ』
「こ、後任ですとぉ!?」
驚くウッドを尻目に、スモークガラスの奥の人物は事務的に、
『入って来たまえ』
するとウッドの居る部屋の扉が開き、入って来た人物を見た彼はギョッとした。
「きっ、貴様ぁ、ルーカスぅ! 歩けない筈じゃ……」
入って来たのは、今は亡きウィリアムの腹心の部下、ルーカス。
マリア逃亡のおり、ウィリアムの作戦に参加していたルーカスは、重傷を負ったものの奇跡的に生き延び、作戦に参加した隊員唯一の生き残りであった。
棚などが一切置かれて無い、ただ広いだけの室内を、小さな電球一つが天井から弱弱しく赤く照らしている。
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ここは、極秘裏に行う彼の査問会の為に用意された会場である。
突如正面の壁から放たれる目も眩むほどの光に、
「うぅ!」
ウッドは手で光を遮り、目を細める。
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『聞こえているかね、メイソン・ウッド君』
物腰和からな声と同調する様に、微かに動いて見えるスモークガラスの奥のシルエット。
マイクを通し、スピーカーから語りける謎の人物の声に、ビクリと身を硬直させ、
「は、はひぃ!」
返す声に、アパート襲撃を指揮していた時の威厳はもはや皆無。
しかし謎の人物は、ウッドの変化を気にする風もなく淡々と、
『何故に、この様な場が設けられたか、君は分かるかね?』
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「あっ! あの行いはぁ、くぅ、国を思えばこそでありィ!」
『黙りなさい』
静かな口調の中に滲む、絶対的威圧感。
『今、この国はデリケートな時期で、その様な時に、あの様な先走りは非常に困るだよ』
「しかし!」
『事が収まるまで、しばし休むと良い』
「へ?」
『なぁに、後任は決めてある。気兼ねする必要はないのだよ』
「こ、後任ですとぉ!?」
驚くウッドを尻目に、スモークガラスの奥の人物は事務的に、
『入って来たまえ』
するとウッドの居る部屋の扉が開き、入って来た人物を見た彼はギョッとした。
「きっ、貴様ぁ、ルーカスぅ! 歩けない筈じゃ……」
入って来たのは、今は亡きウィリアムの腹心の部下、ルーカス。
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