CLOUD(クラウド)

青木 森

文字の大きさ
上 下
182 / 535

6.聞知と修練の章-2

しおりを挟む
 店主と別れ、温和な笑みを薄っすら浮かべて町を歩くコーギー。
 人当たりの良さそうな笑顔の下、
(残念だけどオジサン、この国はじき戦火にまみえて滅びますよ。国を想う「本当の王」を、自らの手で切って捨て報い……敵ながら、ママムナムクアには同情しますよ)
 潜伏場所に戻る為、人目を避ける様にビルの谷間の薄暗い脇道へ入ると、
「貴方達は、何ですのぉ!」
 若い女性のキンキン金切り声がし、同時に、
「へっへっへっ、「何ですの」だってよぉ」
「道を尋ねるから、教えてやってるだけじゃねぇかぁ~」
「ついでに、ちょ~っと「付き合え」って言ってるだけだろぉ~」
「こ、この様な暗がりに何があると言いますですのぉ!」
「「「へっへっへっへっ」」」
 シルエットしか見えないが、場違いなヒラヒラロングドレスを纏った世間知らず風お嬢様が、ならず者数人に取り囲まれていたのである。
 古典的状況下、
「…………」
 コーギーは何事もなかったかの様に来た道を戻ると、ならず者の一人が気付き、
「待てや、コラァ!」
 ため息交じりに立ち止まり、
「何ですかぁ」
 ダルそうな嘆息を漏らすと、
「人を呼ぶ気だろ!」
「呼びませんよ。面倒臭い」
 呆れ顔で振り返った。
 振り返ったその顔に、ならず者たちは色めき立ち、
「ヒュ~~~。可愛いじゃん……てか、オマエ、男か? 女か?」
 コーギーは少々ムッとしつつ、
「答える義理はありませんし、人を呼ぶつもりもありません。では」
 立ち去ろうとすると、
「ちょ、ちょっとお待ちなさいですわ、そこの貴方ぁ! 可憐な少女が襲われようとしておりますですのよ! 助けようとは思いませんですのぉ!」
「どうして?」
 作り笑顔のまま振り返るコーギー。
「か、可愛そうと思いませんのぉ!?」
「なんで?」
「なんでてって……」
 唖然とする少女。
ゲラゲラ笑い出す「ならず者」達を前に、コーギーは平然と、
「そもそも「こんな連中」にノコノコ付いて行くって、君、バカなんじゃないですか? その時点で自業自得でしょ? 僕が労力を費やさなければならない道理がどこにあるんです?」
 バッサリ切って落とすと、「こんな連中」呼ばわりされた事が癇に障ったのか、ならず者たちは折り畳みナイフを取り出し身構え、
「オイ、男の娘(おとこのこ)! ちょっと調子に乗ってんじゃねぇのかぁ!」
(はぁ……反応も、ベタベタですねぇ……)
 ため息交じりの呆れ顔でうつむくいた次の瞬間、ならず者の一人が数メートル離れた足下まで吹っ飛んで来てヘッドスライディング、そのまま気を失った。
「!?」
「「「!」」」
「訂正なさぁいぃぃぃ!」 
 集まる視線の先、薄暗いビルの谷間で蹴り飛ばした格好のまま、
「ダァレェが、おバカですってぇ!」
 漏れ陽をスポットライトの様に浴び姿を露わにしたのは、怒りの形相を見せるナムクス、マリアの妹であった。
 不愉快そうに、ダンと地面を踏み鳴らす。
 しかし動じた様子も見せず、作り笑顔で対峙するコーギー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...