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5.愁嘆の大地の章-60
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数時間後―――
分厚い防寒着で着膨れたヤマトは、仰向けで雪原に「大の字」を描き、
「すげぇ……」
「うん……キレイ……」
同じ装備で並んで仰向けるジゼと、何かを見つめて両眼をキラキラと輝かせていた。
静寂で飾られた夜空の「漆黒のキャンバス」を後景に、無数の宝石が瞬き、淡いエメラルド色した荘厳な天蓋が、そよ風に揺られるが如く優雅にたなびく。
オーロラである。
地球が夜空に見せる、神々しささえ感じる天体ショーに二人が感嘆を漏らすと、同じ装備を着込んで仰向けるマリアも目を潤ませ、
「本当ですわねぇ……」
しかしマリアの隣で同じ装備を着込んで仰向けるジャックが、キャラ的要因から、
「ケぇ。まぁまぁなんじゃねぇ~のかぁ」
あえて物足りなさを口にすると、
「「素直じゃねぇ~よなぁ~」」
「うぃ! 顔、ニヤケて、る」
同じ装備を着込んで仰向けるマシュー、ルークとナクアが即座にツッコミ。
「う、うせぇ! 双子と感情無し! てぇか(俺の)顔、今は見えてねぇだろが!」
毎度の『照れ隠し』に、笑い合うヤマト達。
戦う事のみを義務づけられて来た彼等、彼女達にとって、改めて目にする地球の息吹。
第一陣として夜空を見上げていたのは、ヤマト、ジセ、マリア、ジャック、マシュー、ルーク、そしてナクアの七人。
隠しエレベーターを使い、地上に出ていたのである。
当然シセも第一陣に加わりたがっていたのだが、エレベーターは地上偵察用の七人乗り。
発見されるリスクの高い大型エレベーターなど設置されている筈もなく、ジャンケンに負けたシセはクルー達の護衛役も兼ね、第二陣となってしまっていた。
しかも第二陣には、ジゼをめぐって犬猿の仲であるナタリーが。
大荒れ必至である。
因みに最近存在感の薄いダニエルは第三陣、ブレイクと同じ班。
女性クルーにちょっかい出させない為の、ソフィアが講じた対応策である。
ヤマトは食い入る様にオーロラを見上げ、
「地球って凄いな……ジゼ……」
「うん……お父さんとお母さんにも、見せたかったなぁ……」
二人は微かな笑みを浮かべると、お互いの存在を確認し合うかの様に、自然に手と手を取り合った。
ジャックは先程までの悪言は何処へやら。
「…………」
うっすら感涙し、無言でオーロラを見上げていると、マリアは横目で男泣きをチラ見。
企み顔でニヤリと笑い、
「あらぁ~? 狂気神ともあろう「お方」が、感動して泣いておりますのぉ~?」
「う、うっせぇ泣いてねぇ! アクビだ、アクビぃ!」
慌てて取り繕い、マリアがクスクス笑っていると、
「ただよぉ……」
「ただ?」
(こんなスゲェの見たら、すさんだアイツ(弟)の心が、元に戻るんじゃねぇかと……)
雰囲気に絆されたのか、口からこぼれ出そうになった「センチなセリフ」を慌てて呑み込み、
「な、何でもねぇ! 黙って(オーロラ)見とけや、お喋り女ぁ!」
反撃して来ると思っていたマリアは、想定外に「黙って見ていろ」と言われ意外そうな顔するも、無粋にからかった自分を自嘲するかの様に小さく笑い、
「確かにそうですわねぇ。こんなに素晴らしい情景を前に、「賑やかし」は野暮と言うモノですわよねぇ」
分厚い防寒着で着膨れたヤマトは、仰向けで雪原に「大の字」を描き、
「すげぇ……」
「うん……キレイ……」
同じ装備で並んで仰向けるジゼと、何かを見つめて両眼をキラキラと輝かせていた。
静寂で飾られた夜空の「漆黒のキャンバス」を後景に、無数の宝石が瞬き、淡いエメラルド色した荘厳な天蓋が、そよ風に揺られるが如く優雅にたなびく。
オーロラである。
地球が夜空に見せる、神々しささえ感じる天体ショーに二人が感嘆を漏らすと、同じ装備を着込んで仰向けるマリアも目を潤ませ、
「本当ですわねぇ……」
しかしマリアの隣で同じ装備を着込んで仰向けるジャックが、キャラ的要因から、
「ケぇ。まぁまぁなんじゃねぇ~のかぁ」
あえて物足りなさを口にすると、
「「素直じゃねぇ~よなぁ~」」
「うぃ! 顔、ニヤケて、る」
同じ装備を着込んで仰向けるマシュー、ルークとナクアが即座にツッコミ。
「う、うせぇ! 双子と感情無し! てぇか(俺の)顔、今は見えてねぇだろが!」
毎度の『照れ隠し』に、笑い合うヤマト達。
戦う事のみを義務づけられて来た彼等、彼女達にとって、改めて目にする地球の息吹。
第一陣として夜空を見上げていたのは、ヤマト、ジセ、マリア、ジャック、マシュー、ルーク、そしてナクアの七人。
隠しエレベーターを使い、地上に出ていたのである。
当然シセも第一陣に加わりたがっていたのだが、エレベーターは地上偵察用の七人乗り。
発見されるリスクの高い大型エレベーターなど設置されている筈もなく、ジャンケンに負けたシセはクルー達の護衛役も兼ね、第二陣となってしまっていた。
しかも第二陣には、ジゼをめぐって犬猿の仲であるナタリーが。
大荒れ必至である。
因みに最近存在感の薄いダニエルは第三陣、ブレイクと同じ班。
女性クルーにちょっかい出させない為の、ソフィアが講じた対応策である。
ヤマトは食い入る様にオーロラを見上げ、
「地球って凄いな……ジゼ……」
「うん……お父さんとお母さんにも、見せたかったなぁ……」
二人は微かな笑みを浮かべると、お互いの存在を確認し合うかの様に、自然に手と手を取り合った。
ジャックは先程までの悪言は何処へやら。
「…………」
うっすら感涙し、無言でオーロラを見上げていると、マリアは横目で男泣きをチラ見。
企み顔でニヤリと笑い、
「あらぁ~? 狂気神ともあろう「お方」が、感動して泣いておりますのぉ~?」
「う、うっせぇ泣いてねぇ! アクビだ、アクビぃ!」
慌てて取り繕い、マリアがクスクス笑っていると、
「ただよぉ……」
「ただ?」
(こんなスゲェの見たら、すさんだアイツ(弟)の心が、元に戻るんじゃねぇかと……)
雰囲気に絆されたのか、口からこぼれ出そうになった「センチなセリフ」を慌てて呑み込み、
「な、何でもねぇ! 黙って(オーロラ)見とけや、お喋り女ぁ!」
反撃して来ると思っていたマリアは、想定外に「黙って見ていろ」と言われ意外そうな顔するも、無粋にからかった自分を自嘲するかの様に小さく笑い、
「確かにそうですわねぇ。こんなに素晴らしい情景を前に、「賑やかし」は野暮と言うモノですわよねぇ」
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