167 / 535
5.愁嘆の大地の章-55
しおりを挟む
キャンベル島を出港して数日―――
陽の光が入らない海中では、定期的な食事が時間の経過を認識させる。
四日目分の朝食が済んだ頃、ブリッジクルー達は、何とも言えない複雑な表情で大型モニタを見上げていた。
映っていたのは、久々の登場となるアデリーペンギン型執事タケダさん。
クルー達はペンギンと普通に会話している状況に、未だ慣れずにいたのである。
しかしタケダさんはクルー達の違和感など、どこ吹く風。
さも当たり前の様に、
「陛下、そしてガルシアの皆様方、長旅お疲れ様でございました」
静かに一礼し、
「南極基地へ到着致しましたので、ご案内申します。準備が出来ましたら「箱舟」……もとい「移動式浮きドック」より下船して下さい。では、お待ち致しております」
手短に、一方的に話を終えると映像は消えた。
操舵長ジョシュアは大きく背伸びをして、大あくび。
「う、あぁ~~~結局出番無しだったなぁ」
「ですねぇ」
監視長アイザックも気の抜けた相づちを返すと、すかさずソフィアとクリストファーが、
「「まだ任務中です(よ・のよ)!」」
「「い、イエスマァムぅ!」」
剣幕に、思わず背筋を伸ばすジョシュアとアイザック。
キャプテンシートの艦長は気持ちを引き締め直す様に帽子を正し、
「ミスナクア、下艦するにあたり、我々が用意すべき物などありますかな?」
「何も、要らない。タケダさん、が準備してる」
「…………」
即答するナクアに、しばし黙考する艦長。
ダイバーズのアドミスターであるナクアはともかく、見知らぬ南極基地における突発的な有事を警戒し、持ち込む物に、極秘裏に武器を紛れ込ませるつもりであった艦長は、不要と言われ、完全に当てが外れた形になってしまったのである。
すると心中を察したソフィアが艦長の耳元へ、
(私達にはヤマト君達も居ます。下手に刺激するより今は指示に従い、様子を見た方が良いかと愚意いたします)
一理あると判断した艦長は小さく頷き、
「全クルーに通達! 速やかに現作業を終了させ、本艦後部上甲板へ集合! 加え、軽はずみな行動はくれぐれにも慎む様にと、苦言を呈しておいてくれたまえ!」
「分かりました」
「それとシセ君」
「?」
「元仇敵の腹の中、思う所は多々あろうが……よろしく頼む」
遠回しに「勝手な事はするな」とシセにも念押ししたつもりであったが、ジゼの異動の件で未だ御機嫌斜めな様子で膨れっ面し、
「分かってまぁす」
返事を返す姿に、ブリッジクルー達は困惑の半笑い。
陽の光が入らない海中では、定期的な食事が時間の経過を認識させる。
四日目分の朝食が済んだ頃、ブリッジクルー達は、何とも言えない複雑な表情で大型モニタを見上げていた。
映っていたのは、久々の登場となるアデリーペンギン型執事タケダさん。
クルー達はペンギンと普通に会話している状況に、未だ慣れずにいたのである。
しかしタケダさんはクルー達の違和感など、どこ吹く風。
さも当たり前の様に、
「陛下、そしてガルシアの皆様方、長旅お疲れ様でございました」
静かに一礼し、
「南極基地へ到着致しましたので、ご案内申します。準備が出来ましたら「箱舟」……もとい「移動式浮きドック」より下船して下さい。では、お待ち致しております」
手短に、一方的に話を終えると映像は消えた。
操舵長ジョシュアは大きく背伸びをして、大あくび。
「う、あぁ~~~結局出番無しだったなぁ」
「ですねぇ」
監視長アイザックも気の抜けた相づちを返すと、すかさずソフィアとクリストファーが、
「「まだ任務中です(よ・のよ)!」」
「「い、イエスマァムぅ!」」
剣幕に、思わず背筋を伸ばすジョシュアとアイザック。
キャプテンシートの艦長は気持ちを引き締め直す様に帽子を正し、
「ミスナクア、下艦するにあたり、我々が用意すべき物などありますかな?」
「何も、要らない。タケダさん、が準備してる」
「…………」
即答するナクアに、しばし黙考する艦長。
ダイバーズのアドミスターであるナクアはともかく、見知らぬ南極基地における突発的な有事を警戒し、持ち込む物に、極秘裏に武器を紛れ込ませるつもりであった艦長は、不要と言われ、完全に当てが外れた形になってしまったのである。
すると心中を察したソフィアが艦長の耳元へ、
(私達にはヤマト君達も居ます。下手に刺激するより今は指示に従い、様子を見た方が良いかと愚意いたします)
一理あると判断した艦長は小さく頷き、
「全クルーに通達! 速やかに現作業を終了させ、本艦後部上甲板へ集合! 加え、軽はずみな行動はくれぐれにも慎む様にと、苦言を呈しておいてくれたまえ!」
「分かりました」
「それとシセ君」
「?」
「元仇敵の腹の中、思う所は多々あろうが……よろしく頼む」
遠回しに「勝手な事はするな」とシセにも念押ししたつもりであったが、ジゼの異動の件で未だ御機嫌斜めな様子で膨れっ面し、
「分かってまぁす」
返事を返す姿に、ブリッジクルー達は困惑の半笑い。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
『 LOVE YOU!』 最後は君を好きになる
設樂理沙
ライト文芸
モデルをしている強引系イケメン男性に関わった3人の素敵な女性のお話
有海香 と亀卦川康之
新垣佳子と亀卦川康之
石川恭子と亀卦川康之
・・・・・・・・・・
3組のカップル
・有海香と神谷司 本編
・新垣佳子小野寺尊 --スピンオフで
・石川恭子と垣本宏 --スピンオフで
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
このお話は『神谷司』という男性をどうしても
幸せにしてあげたくて、書き始めました。
宜しくお願いします☆彡 設樂理沙 ☺
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆彡
♡画像はILLUSTRATION STORE様有償画像
強制力が無茶するせいで乙女ゲームから退場できない。こうなったら好きに生きて国外追放エンドを狙おう!処刑エンドだけは、ホント勘弁して下さい
リコピン
ファンタジー
某乙女ゲームの悪役令嬢に転生したナディア。子どもの頃に思い出した前世知識を生かして悪役令嬢回避を狙うが、強制力が無茶するせいで上手くいかない。ナディアの専属執事であるジェイクは、そんなナディアの奇行に振り回されることになる。
※短編(10万字はいかない)予定です
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。
未来人が未開惑星に行ったら無敵だった件
藤岡 フジオ
ファンタジー
四十一世紀の地球。殆どの地球人が遺伝子操作で超人的な能力を有する。
日本地区で科学者として生きるヒジリ(19)は転送装置の事故でアンドロイドのウメボシと共にとある未開惑星に飛ばされてしまった。
そこはファンタジー世界そのままの星で、魔法が存在していた。
魔法の存在を感知できず見ることも出来ないヒジリではあったが、パワードスーツやアンドロイドの力のお陰で圧倒的な力を惑星の住人に見せつける!
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
超克の艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
「合衆国海軍ハ 六〇〇〇〇トン級戦艦ノ建造ヲ計画セリ」
米国駐在武官からもたらされた一報は帝国海軍に激震をもたらす。
新型戦艦の質的アドバンテージを失ったと判断した帝国海軍上層部はその設計を大幅に変更することを決意。
六四〇〇〇トンで建造されるはずだった「大和」は、しかしさらなる巨艦として誕生する。
だがしかし、米海軍の六〇〇〇〇トン級戦艦は誤報だったことが後に判明。
情報におけるミスが組織に致命的な結果をもたらすことを悟った帝国海軍はこれまでの態度を一変、貪欲に情報を収集・分析するようになる。
そして、その情報重視への転換は、帝国海軍の戦備ならびに戦術に大いなる変化をもたらす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる