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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-40

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 幼い身で戦場を生き抜いた三人の本能が知らせる、この人物は危険である事を。
(おおごえをあげたら、スグにころされちゃう……)
 イサミは怯えながらも、しかして冷静にチャンスを窺った。
 経験上、襲撃者は三人の幼さに油断を見せる事が常だったからである。
 だが今回は、敵が一枚上手であった。
 イサミが見せる眼の奥の光から、ただの子供ではない事を即座に見抜き、
「残念ですが、僕はスキなど見せませんよ。アナタのその眼、ただの子供ではない事は分かりますから」
「!」
「それにもとより僕は、どんな相手にも手は緩めません」
 穏やかな口調と相反する、冷え切った声色と、帽子の下にギラつかせる冷徹な眼。
(このひとは……ダメ……)
 イサミの眼に宿る希望の光は消え始め、
「そうです、諦めて下さい。僕は君達の骸(むくろ)を以て、あの人の心を開放します」
 カギに伸びた手が回り始め、イサミの眼から光が完全に消えかけた刹那、謎のクルーがドアの前からサッと身を翻し、飛び退いた。
 ドガァ!
 蹴破られる医療室の扉。
「三人とも大丈夫かぁ!」
「みんな大丈夫!?」
 ヤマトとジゼが飛び込んで来てイサミ達を背に、謎のクルーの前に立ちはだかった。
「「「や~まぁ~どぉ~~~、じぃ~ぜぇ~~~! ごわがったよぉ~~~!」」」
 ジゼは泣きじゃくるイサミ達を強く抱き締め、
「もう大丈夫! 大丈夫だから!」
 ヤマトは子供達の悲痛な泣き声を背に怒りを新た、憤怒形相で睨みつけ、
「イヤな予感がして戻って見ればコレだァ! オマエ、子供相手にナニしてる!」
 すると謎のクルーが突如高笑い。
「あはははははは! 『予感』だってぇ? お笑いですねぇ! 殺人兵器のスティーラーが、人間のマネ事とは!」
「オマエ……誰だ……?」
「クックック、「僕が何者か」ですってぇ?」
 口元に余裕の笑みを浮かべたかと思うと、突如背を向け医療室から飛び出した。
「ま、待てぇ!」
「ヤマト、気を付けてぇ! アイツ、なんか普通じゃないよ!」
「分かってる! イサミ達を頼む!」
 急ぎ後を追った。

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