152 / 535
5.愁嘆の大地の章-40
しおりを挟む
幼い身で戦場を生き抜いた三人の本能が知らせる、この人物は危険である事を。
(おおごえをあげたら、スグにころされちゃう……)
イサミは怯えながらも、しかして冷静にチャンスを窺った。
経験上、襲撃者は三人の幼さに油断を見せる事が常だったからである。
だが今回は、敵が一枚上手であった。
イサミが見せる眼の奥の光から、ただの子供ではない事を即座に見抜き、
「残念ですが、僕はスキなど見せませんよ。アナタのその眼、ただの子供ではない事は分かりますから」
「!」
「それにもとより僕は、どんな相手にも手は緩めません」
穏やかな口調と相反する、冷え切った声色と、帽子の下にギラつかせる冷徹な眼。
(このひとは……ダメ……)
イサミの眼に宿る希望の光は消え始め、
「そうです、諦めて下さい。僕は君達の骸(むくろ)を以て、あの人の心を開放します」
カギに伸びた手が回り始め、イサミの眼から光が完全に消えかけた刹那、謎のクルーがドアの前からサッと身を翻し、飛び退いた。
ドガァ!
蹴破られる医療室の扉。
「三人とも大丈夫かぁ!」
「みんな大丈夫!?」
ヤマトとジゼが飛び込んで来てイサミ達を背に、謎のクルーの前に立ちはだかった。
「「「や~まぁ~どぉ~~~、じぃ~ぜぇ~~~! ごわがったよぉ~~~!」」」
ジゼは泣きじゃくるイサミ達を強く抱き締め、
「もう大丈夫! 大丈夫だから!」
ヤマトは子供達の悲痛な泣き声を背に怒りを新た、憤怒形相で睨みつけ、
「イヤな予感がして戻って見ればコレだァ! オマエ、子供相手にナニしてる!」
すると謎のクルーが突如高笑い。
「あはははははは! 『予感』だってぇ? お笑いですねぇ! 殺人兵器のスティーラーが、人間のマネ事とは!」
「オマエ……誰だ……?」
「クックック、「僕が何者か」ですってぇ?」
口元に余裕の笑みを浮かべたかと思うと、突如背を向け医療室から飛び出した。
「ま、待てぇ!」
「ヤマト、気を付けてぇ! アイツ、なんか普通じゃないよ!」
「分かってる! イサミ達を頼む!」
急ぎ後を追った。
(おおごえをあげたら、スグにころされちゃう……)
イサミは怯えながらも、しかして冷静にチャンスを窺った。
経験上、襲撃者は三人の幼さに油断を見せる事が常だったからである。
だが今回は、敵が一枚上手であった。
イサミが見せる眼の奥の光から、ただの子供ではない事を即座に見抜き、
「残念ですが、僕はスキなど見せませんよ。アナタのその眼、ただの子供ではない事は分かりますから」
「!」
「それにもとより僕は、どんな相手にも手は緩めません」
穏やかな口調と相反する、冷え切った声色と、帽子の下にギラつかせる冷徹な眼。
(このひとは……ダメ……)
イサミの眼に宿る希望の光は消え始め、
「そうです、諦めて下さい。僕は君達の骸(むくろ)を以て、あの人の心を開放します」
カギに伸びた手が回り始め、イサミの眼から光が完全に消えかけた刹那、謎のクルーがドアの前からサッと身を翻し、飛び退いた。
ドガァ!
蹴破られる医療室の扉。
「三人とも大丈夫かぁ!」
「みんな大丈夫!?」
ヤマトとジゼが飛び込んで来てイサミ達を背に、謎のクルーの前に立ちはだかった。
「「「や~まぁ~どぉ~~~、じぃ~ぜぇ~~~! ごわがったよぉ~~~!」」」
ジゼは泣きじゃくるイサミ達を強く抱き締め、
「もう大丈夫! 大丈夫だから!」
ヤマトは子供達の悲痛な泣き声を背に怒りを新た、憤怒形相で睨みつけ、
「イヤな予感がして戻って見ればコレだァ! オマエ、子供相手にナニしてる!」
すると謎のクルーが突如高笑い。
「あはははははは! 『予感』だってぇ? お笑いですねぇ! 殺人兵器のスティーラーが、人間のマネ事とは!」
「オマエ……誰だ……?」
「クックック、「僕が何者か」ですってぇ?」
口元に余裕の笑みを浮かべたかと思うと、突如背を向け医療室から飛び出した。
「ま、待てぇ!」
「ヤマト、気を付けてぇ! アイツ、なんか普通じゃないよ!」
「分かってる! イサミ達を頼む!」
急ぎ後を追った。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
冤罪をかけて申し訳ないって……謝罪で済む問題だと思ってます?
水垣するめ
恋愛
それは何の変哲もない日だった。
学園に登校した私は、朝一番、教室で待ち構えていた婚約者であるデイビット・ハミルトン王子に開口一番罵声を浴びせられた。
「シエスタ・フォード! この性悪女め! よくもノコノコと登校してきたな!」
「え……?」
いきなり罵声を浴びせられたシエスタは困惑する。
「な、何をおっしゃっているのですか……? 私が何かしましたか?」
尋常ではない様子のデイビットにシエスタは恐る恐る質問するが、それが逆にデイビットの逆鱗に触れたようで、罵声はより苛烈になった。
「とぼけるなこの犯罪者! お前はイザベルを虐めていただろう!」
デイビットは身に覚えのない冤罪をシエスタへとかける。
「虐め……!? 私はそんなことしていません!」
「ではイザベルを見てもそんなことが言えるか!」
おずおずと前に出てきたイザベルの様子を見て、シエスタはギョッとした。
イザベルには顔に大きなあざがあったからだ。
誰かに殴られたかのような大きな青いあざが目にある。
イザベルはデイビットの側に小走りで駆け寄り、イザベルを指差した。
「この人です! 昨日私を殴ってきたのはこの人です!」
冤罪だった。
しかしシエスタの訴えは聞き届けてもらえない。
シエスタは理解した。
イザベルに冤罪を着せられたのだと……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる