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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-35

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 一方、後部格納庫を出入りする補給作業中のペンギン達に混じり、先の戦いによる負った銃撃のダメージを確認する、揃いのオーバーオールにツバ付き帽子を被る整備班の面々。
 大騒ぎの調査班とは対照的に、班長ジョナサンは口数少なく「後部格納庫搬入口」付近の複数重なる弾痕を手で擦り、
「……コイツぁは、駄目だな」
 眉をひそめ呟いた。
 浅黒く焼けた肌と、お世辞にもキレイとは言い難いゴツゴツとした手は、彼の職人としての歴史の長さを物語っている。
「となると親方……この辺一枚切り落して、新しいのを貼っ付けた方がマシですかねぇ?」
 傍らに立ち、困惑顔で眉間にシワを寄せる、細身で高身長の男は弟子のエバン。
 限られた資材を無駄に使いたはないものの、穴が開いたまま洋上を航海して潮風に晒され続ければ、塩害からより重篤な損傷を招く結果にもなり兼ねず、ジョナサンは不承不承頷き、
「そうなるのぉ」
「分かりました、親方。アーロン、交換用の鉄板を……」
 振り向くと、頭二つ分ほど背の低い、小柄で華奢な体格の弟弟子アーロンが、調査班の騒ぎを見て笑っていた。
「おい、アーロン!」
「え? あっ、いやぁ~調査班は相変わらず見てて飽きないっスね、ねぇ兄弟子ぃ!」
 悪びれた様子も見せず、笑顔で振り向いた。
 ため息を吐く親方ジョナサン。
 呆れ顔した兄弟子エバンは頭を抱え、
「作業に集中しろと、いつも言ってるだろ!」
「いやぁ~アハハハハ」
「アハハじゃない。オマエは親方譲りの「勘と腕」を持ってるのに、その集中力の無さが足を引っ張ってんだぞぉ!」
 苦言を呈すもあまり骨身に応えていないのか、ケラケラと笑い、
「いやぁ~申し訳ないっスぅ」
「…………」
(今は、何を言っても仕方がないかぁ……)
 エバンは諦め半分、
「鉄板を張り直すから、鋼材を持って来てくれ……」
「アイアイサぁ~~~」
 イタズラ坊主の様な笑みを残し、調子良く駆け出して行った。
 叱責された直後とは思えない、軽やかな足取りで走り去る孫のアーロンの背中を、祖父の親方ジョナサンは呆れ顔で見つめ、
「アイツが一人前になるのと、ワシの寿命……どっちが先になるやらぁ……」
「止めて下さいよ、親方。縁起でもない」
「気にするな……気の長い話になりそうだと言う、言葉のあやだ」
「なら、良いんスけど」
「アレが一人前になるまで、悪いがよろしく頼む」
「何言ってんスかぁ。嫁に出すまで死ねないんでしょ、親方」
「だったな」
 武骨に小さく笑うジョナサン。アーロンは、一応女子である。
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