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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-25

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「ヤマト君」
「……はい」
「君はガルシアに乗艦した時、この艦が「君を島に送った艦」だと気付けなかったね?」
「はい。あまりに変わり過ぎていたので」
「何故そこまで変わったか……分かるかね?」
「「え?」」
 唐突な質問に、顔を見合わせるヤマトとジゼ。
「クーデターがあったのだよ」
「「クーデター!?」」
 艦長は頷き、
「島での原子炉事故と、核戦争が起きたあの日、君達家族を置き去りにした我々は、洋上で大きく二つの勢力に分かれた。「スグに帰国すべき」と主張する一派と、「様子を見るべきだ」とする一派で……私は後者の方だった。出来る事なら、君達を探して連れ帰りたかったしね」
「「…………」」
「それに、この船には母国の国際的信用を根幹から揺るがしかねない「秘匿データ」が保管されている。戦中の混乱したさ中、そんなデータを抱えたまま帰国しようものなら、どうの様な扱いを受けるか分からんからね」
「でも、国に居る家族の事が心配な人達は……」
「左様……ジゼ君の察しの通り、スグに帰国したい気持ちは分かるのだよ。だから「しばし待って欲しい」と訴えたのだが……」
「ヤバイデータが保管されている事実を知らないクルー達は、聞く耳を持たなかった」
「うむ。納得出来ないクルーの一部が過激化、武器を手に蜂起した。無論、彼ら(帰国派)の中にも行き過ぎを感じ、共闘してくれた者もいるには居たのだが……」
「結局、衝突は避けられなかった」
「…………」
 艦長は当時のチカラ不足を思い起こし、悔いているのか眉間にシワを寄せ、
「結果として互いの半数近くが命を落とした……艦内の変化は、その時の戦闘で船が負った大きな代償の証……」
「それでこんなにも……」
 改めて部屋を見回すヤマト。
「皮肉にも、戦闘による死亡者数で帰国希望者が減った故にボートの定員を確保出来、彼等にボートを譲渡……疲弊していた彼等は無言のまま下艦して行った……無事に帰国出来たのか、家族に会えたのかは知る術もないが……」
「「…………」」
「多くのクルーを失い、十分な操船もままならなくなった我々は、まず腕利きのクルー集めに奔走した。オリビア君と出会ったのは、その頃なのだよ」
「「…………」」
「我々は、軍から逃亡した「お尋ね者」の集まり。母国が混乱中であるのが幸いしたとは言え、いつ追手がかかるか分からない」
「それでダイバーズに?」
「うむ。当時のダイバーズは、今ほどチカラを有してはいなかったが、戦後の混乱のさなか、目を見張る頭角を現した組織であったのでね。我々はダイバーズ庇護の下、クルー達は衣食住に困らず収入も得る事が出来、正に渡りに船だった」
 当時の苦労を思い出してか、遠い目をし、
「……君達は、イサミ君たちがどう言った子供達であるか聞いているかね?」
「ガルシアが保護した「戦災孤児」だとしか……」
「私も」
「うむ。今回の聴取で分かったのだが、あの子達と出会いはオリビア君にとって……皮肉な運命の巡り合わせだったのだよ……」
 悲し気に視線を落とし、
「あの日……我々はダイバーズの要請を受け「とある国」に上陸した。そして政府軍の眼を避け休憩を取る為、かつて反政府組織が活動拠点としていた廃村に身を潜めた……正直、村は酷い有様だった……人間の所業の恐ろしさを、改めて、まざまざと見せつけられたものだ……廃墟と化した村には野良犬さえおらず、まるで太古の遺跡群だ……」
「……そこにイサミ達が?」
「うむ。骸(むくろ)となった母親と弟二人を護る為、幼いイサミ君が獣の様な目をして銃を構えていたのだ」
「「…………」」
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