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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-6

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次の日の朝、朝食を終えたマリアはピンクのジャージに着替え、白い鉢巻を頭に巻き、気合十分。
後部格納庫に飛び込み、
「よろしくお願いしますわァ!」
しかし対する調査班の面々は、食後のマッタリモード。
ファッション誌に読み更けポーズを真似るダニエルに、ジャックはイスの背もたれに寄り掛かり大あくび。
ブレイクも机に頬杖付き、食後の眠気で今にも寝落ちしそうなだらしない顔。
「なぁ……何ですのぉ、この有様はぁ!?」
 呆れ半分、驚き後退ると、
「任務が無い時は、いつもこんなモンだよ」
 背後から苦笑いのヤマトの声。
「そっ、それならぁ! 貴方達は毎日何をしてますのぉ!?」
「そうだなぁ~先ずは……」
「マズは?」
 固唾を呑むマリアは、気が付けばガルシアの後部上甲板の上。
右手にデッキブラシ、左手にバケツを持ち立っていた。
 青空の下、床に水をまき、ブラシで擦る調査班の面々。
「…………」
 呆然と立ち尽くすマリアに、
「嬢ちゃん! ぼぅ~と、突っ立ってないで、手を動かしなぁ!」
 ブレイクの一喝。
ハッと我に返ったマリアは納得いかない気持ちを抱きつつ、ブラシで床を擦り、
「まったく……コレが……花形の……調査班の仕事ですのぉ!」
 ブツブツ不満を漏らすと、額に汗するヤマトが隣に並び、
「塩害もあるからね、これだって大事な仕事さ」
「そ、それはそうかも知れませんが……」
 ガルシアの調査班の事は、かつての部下ウィリアムから聞き及び、第一線、華のある職場をイメージしていたマリアにとって、少なからず腑に落ちない現実であった。
しかしヤマトの言っている事も最もであり、仕方なしに床を磨いていると、
「キャ!」
 いきなり顔に水を掛けられた。
「なっ、何をしますの、ジャック!」
「余計なとこまで磨いてんじゃねぇよ、死神! ウチの管轄になっちまうだろうがぁ!」
「何を言ってますのォ!」
 顔から滴をしたたらせながらデッキブラシを振りかぶると、
「嬢ちゃん! ジャックの言う通り、そっから先は『解析班』の受け持ちだよ。下手にやると、次からウチの班がやる事になっちまうからねぇ~」
「しかしブレイク隊長、時間があるのですから、やってあげても良いのでは?」
 促すマリアにブレイクはニヤリ。
「アレでもかい?」
「?」
 デッキブラシで指し示す先を見たマリアは愕然。
 水着姿の解析班イーサンとゾーイが、担当箇所の甲板エリアにビーチチェアを置いて寝そべり、日光浴をしていたのである。
「なぁ!? 何なんですの、この艦はぁ!?」
 呆れ声を上げると、憤怒のソフィアが艦橋から飛び出し、
「職務中に何をしてるんですかァーーーーーー!」
 飛び起きるイーサンとゾーイ。
「これはマズイ、逃げるのだよゾーイ!」
「アイアイサァーーーでヤスぅ!」
 二人は椅子を放置したまま、艦内へ逃げ込んだ。
「待ちぃなさぁーーーいぃ!」
 後を追い、艦内へと消えて行くソフィア。
「な……何なんですの、この船……」
 ダイバーズの中でも抜きん出て名高きガルシアの真の姿に、マリアがカルチャーショックを受けていると、ブレイクがニヤリ。
「そう杓子定規に考えなさんなぁ、お姫さん。アタシ等は軍隊じゃない。やるべき時に、それぞれが出来る事をやり合い、それ以外は任せて楽をする。ここはデカイ家、家族みたいなもんなのさぁな」
「隊長さん……わたくし、その……恥ずかしながら、そう言った暮らしをした事がございませんですので……」
「難儀な人生送ってんねぇ」
「わたくしにとりましては……ソレが普通でしたから……」
「それならマリア、ココで、そう言う暮らしを知れば良いんじゃないか?」
「え?」
 振り返ると、笑顔のヤマト。
 その背後にはフッと鼻先で笑い格好つけて見せるダニエルと、照れ隠しで「ケッ」と今にも言い出しそうな顔して横向くジャックの姿も。
「ま、そう言うこったぁよ、お姫さん」
 笑顔のブレイクに、
「はい、ですわぁ」
 屈託ない、満面の笑顔を返すマリア。

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