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青木 森

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4.偽りの新天地の章-29

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 車をボートに乗り替え、沖を目指して爆走するガルシアクルー達。
 波頭を次々切り裂き、何度も激しく上下に揺れ突き進むボートに、未だ動けぬジャックが苛立ち、
「もっと優しく運べねぇのかァ! 俺は怪我人なんだぞ! このヘボッ! ボケェ!」
 悪態を吐くと、いつもなら即ギレするマシューとルークが、嫌味なほど平静な顔をして、
「「捨てるか?」」
 ジャックの両手両足を持ち上げた。
「ばっ、バカヤロォーーーッ! マジで死んじまうだろぅがァ!」
 流石のジャックも焦りを見せると、隻腕のマリアがニヤリ。
「死んだら「大好きな弟さん」に会えなくなりますわよ。良い子で、大人しくしている事ですわぁ」
「テンメェ、死神ィ!」
 怒れる仏頂面で睨むと、ダニエルが神妙な面持ちでジャックを見下ろし、
「お前……」
「な、何だよ……」
 動けぬ体で気味悪そうに後退ろうとすると、ダニエル、マシュー、ルークが噴き出す様に、
「「「ブラコンかぁ!? ワァハハハハハハハハ!」」」
 大笑い。
「ぶ、ブラコンって言うんじゃねぇーーー! 死神ぃ、テメェマジ殺すぅう!」
 イキ顔だけして凄むと、ブレイクが、したり顔して静かに屈んで肩をポンポン。
「うんうん、分かるよぉ~分かる。愛の形ってぇのは、人それぞれだからなぁ」
 あからさまに、からかう様な口調でニヤリ。
「テメェ等、マジふざけんな! 動ける様になったら、タダじゃおかねぇんだからな!」
 言えば言うほど墓穴を掘り、負け犬度合いを増すジャックに笑いが起こった。
 マリアも笑い合いながら、しかし目の端で徐々に遠のく陸地を見つめ、その寂し気な横顔に、ヤマトとジゼが掛ける言葉を見出せずにいると、
「そろそろだぞォーーーッ!」
 操船するジョシュアが何も無い洋上を指差し、海と空しかなかった空間に、懐かしの戦艦ガルシアが音もなく姿を現した。
 久々の再会の為か、幾分外観が変わった様にも見える。
「「「やぁまぁとぉ~~~! じぃ~ぜぇ~~~!」」」
 甲板上から手を振るイサミ、トシゾウ、ソウシ、懐かしい顔の隣に、
「ジゼ姉ぇ~様ぁ~~~!」
 ハートマーク出しまくりの萌えた顔して手を振る、栗毛でショートボブした少女が一人。
 初めて見る少女ではあるが、彼女が前身から放つ邪まなオーラと、言動から何かを察したジゼはゲンナリ顔。
 そんなジゼに、ヤマトは同情の苦笑い。
 マリアは感慨深げにガルシアの船体を見上げ、
「貴方達を無理やり下艦させたわたくしが乗艦する事になるとは……まさに皮肉な話ですわねぇ……」
 微笑みの中に憂いを滲ませ呟いた。
「「…………」」
 全員を収容し、オーストラリア海域から緊急離脱する戦艦ガルシア。

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