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4.偽りの新天地の章-20
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ジャックは大鎌を振り構え、
「小細工が通用しないなら!」
「あら、奇遇でございますわねぇ!」
マリアも二本のレイピアを地面から引き抜き構え、
「「真っ向勝負!」」
「行きます、でございますわァ!」
「行くぜぇ!」
互いに地を蹴り、人知を超えた速度で突進するも、武器の優位性からマリアが先手。
左レイピアから繰り出される、素早く途切れない連突き。
「チッ!」
ここから相手を追い詰め、右レイピアで止めを刺すのがマリアの定石のスタイルである。
「クソがァ!」
分かっていてもジャックは連撃にジリジリと後退させられ、大鎌の柄と体さばきで何とか致命傷を避けつつ、次第に切り削り、刻まれて行く。
「あ、相変わらずしつけぇんだよォ!」
堪え切れず、強引に大鎌で左レイピアを弾き、回し返す刃で切り掛かろうとした瞬間、マリアの両眼が獣の様にギラリ。
「やべぇ!」
「止めの右レイピア」が左胸を目がけて一直線。
「ガァッ!!」
苦悶の声を上げるも、
「なんですってぇ!?」
驚愕の声を上げたのは、マリアであった。
左胸の急所を的確に貫いたつもりが、レイピアの剣先は左肩に突き刺さっていたのである。
「へッ! オマエは昔っから狙いが正確過ぎんだよ! 俺も進化してるつったろがァ!」
ジャックが背筋の凍る笑顔を見せると、大鎌の柄が二か所で分離、端にもう一つ刃が出現。三節棍の様な形状に変化し、
「ま、マズイですわぁ!」
抜けない右レイピアから咄嗟に手を離すも、達人同士の戦いは一瞬の判断が勝敗を左右する。
「遅せぇ!」
ジャックは下の刃を真上に一閃、切り上げ、
「マリアァーーーーーー!」
軍曹の悲痛な叫びも虚しくマリアの右腕はボトリと地面に落ち、言葉にならない絶叫を上げ、その場に膝間づいた。
「ほぅ、流石は同類だぜぇ。あのマリアに片膝着かせやがるとはな」
不敵に笑うウィリアムの傍ら、ルーカスに羽交い絞めにされた軍曹はもがき暴れ、
「はっ、離せぇ! マリアが! マリアがァ!」
「お、大人しくしてろ、この大女ァ! なんてチカラなんだぁ!」
「マリアァ! マリアァーーーーーー!」
「黙れ軍曹ォ! あの女はこの程度で死にやしねぇ! お前の出番はまだ先だッ! それともベッドの彼氏より先に、あの世に行っとくかァ!」
「!」
ウィリアムの一喝に、ルーカスに羽交い締めにされたまま悔し気にうつむき黙る軍曹。
強引に連れて来られたブラウンは我慢が限界。
「わぁ、私は知らないぞぉ! 私は無関係だぁ! こんな茶番に付き合ってられるかぁ!」
捨て台詞を残し、逃げる様に走り去る背に、ウィリアムは不敵に笑い、
「お好きにどうぞぉ」
(生きて帰れたらなぁ)
ジャックは左肩に刺さるレイピアを引き抜き、地面に投げ捨て、
「オマエの悲鳴、初めて聞けたぜぇ。攻撃力もこれで半減ってぇとこだなぁ」
切られ傷だらけで痛みに顔を歪ませながらも、満足気な笑顔を見せる。
対照的、右肩口を抑え片膝つき、表情が見えない程うつむくマリア。
その傷口からは血が流れ出て筋肉などが露出していたが、それは明らかに人間とは違う構造、構成を成していた。
ジャックが止めの大鎌を振り上げ、
「最下位に見下ろされる気分はどうだぁ~? 序列第三位さんよぉ~」
ウィリアムは予想外の早い決着に落胆露わ、
「終わったな」
つまらなそうに呟き、軍曹が苦渋に満ちた表情で下を向いていると、
「これで仕舞だァ!」
マリアの白く華奢な首スジ目がけ、大鎌を振り下ろそうとした瞬間、
「!」
強烈な殺気を感じ、咄嗟に後方へ大きく飛び退き、
「な、何だ!?」
焦りの色を露わにした刹那、
「ガァッ!」
無数のレイピアが地面から剣山の様に飛び出しジャックを串刺し、持ち上げた。
「ガハァ!」
針の山の上で、多量吐血するジャック。
うつむいたまま右肩口を抑え、ユラリと立ち上がるマリア。
左手でレイピアを拾い上げ、
「お気に入りのドレスを台無しにしていただいた御礼レイピアを横一線。
その動作に呼応するかの如く、針山はチリと掻き消え、支えのなくなったジャックの体はドサリと地面に落ちた。
「カハァ!」
多量に吐血し、虫の息のジャックと、仁王のごとき形相で見下ろすマリア。
その両眼は怒りでランランと輝き、
「ど……どうしたよ……は、早く……やれよ……。体の修復は……もう始まってんぞ……」
苦悶の表情で悪態をつくジャックの傍ら、マリアは静かに屈み、何かを耳元で囁いた。
一瞬驚いた顔を見せるジャック。
しかし二の句を交わす事無く、手にしたレイピアでジャックの胸を地面ごと射貫き、
「がァ!」
ジャックは小さな悲鳴を一つ上げ、ピクリともしなくなった。
「小細工が通用しないなら!」
「あら、奇遇でございますわねぇ!」
マリアも二本のレイピアを地面から引き抜き構え、
「「真っ向勝負!」」
「行きます、でございますわァ!」
「行くぜぇ!」
互いに地を蹴り、人知を超えた速度で突進するも、武器の優位性からマリアが先手。
左レイピアから繰り出される、素早く途切れない連突き。
「チッ!」
ここから相手を追い詰め、右レイピアで止めを刺すのがマリアの定石のスタイルである。
「クソがァ!」
分かっていてもジャックは連撃にジリジリと後退させられ、大鎌の柄と体さばきで何とか致命傷を避けつつ、次第に切り削り、刻まれて行く。
「あ、相変わらずしつけぇんだよォ!」
堪え切れず、強引に大鎌で左レイピアを弾き、回し返す刃で切り掛かろうとした瞬間、マリアの両眼が獣の様にギラリ。
「やべぇ!」
「止めの右レイピア」が左胸を目がけて一直線。
「ガァッ!!」
苦悶の声を上げるも、
「なんですってぇ!?」
驚愕の声を上げたのは、マリアであった。
左胸の急所を的確に貫いたつもりが、レイピアの剣先は左肩に突き刺さっていたのである。
「へッ! オマエは昔っから狙いが正確過ぎんだよ! 俺も進化してるつったろがァ!」
ジャックが背筋の凍る笑顔を見せると、大鎌の柄が二か所で分離、端にもう一つ刃が出現。三節棍の様な形状に変化し、
「ま、マズイですわぁ!」
抜けない右レイピアから咄嗟に手を離すも、達人同士の戦いは一瞬の判断が勝敗を左右する。
「遅せぇ!」
ジャックは下の刃を真上に一閃、切り上げ、
「マリアァーーーーーー!」
軍曹の悲痛な叫びも虚しくマリアの右腕はボトリと地面に落ち、言葉にならない絶叫を上げ、その場に膝間づいた。
「ほぅ、流石は同類だぜぇ。あのマリアに片膝着かせやがるとはな」
不敵に笑うウィリアムの傍ら、ルーカスに羽交い絞めにされた軍曹はもがき暴れ、
「はっ、離せぇ! マリアが! マリアがァ!」
「お、大人しくしてろ、この大女ァ! なんてチカラなんだぁ!」
「マリアァ! マリアァーーーーーー!」
「黙れ軍曹ォ! あの女はこの程度で死にやしねぇ! お前の出番はまだ先だッ! それともベッドの彼氏より先に、あの世に行っとくかァ!」
「!」
ウィリアムの一喝に、ルーカスに羽交い締めにされたまま悔し気にうつむき黙る軍曹。
強引に連れて来られたブラウンは我慢が限界。
「わぁ、私は知らないぞぉ! 私は無関係だぁ! こんな茶番に付き合ってられるかぁ!」
捨て台詞を残し、逃げる様に走り去る背に、ウィリアムは不敵に笑い、
「お好きにどうぞぉ」
(生きて帰れたらなぁ)
ジャックは左肩に刺さるレイピアを引き抜き、地面に投げ捨て、
「オマエの悲鳴、初めて聞けたぜぇ。攻撃力もこれで半減ってぇとこだなぁ」
切られ傷だらけで痛みに顔を歪ませながらも、満足気な笑顔を見せる。
対照的、右肩口を抑え片膝つき、表情が見えない程うつむくマリア。
その傷口からは血が流れ出て筋肉などが露出していたが、それは明らかに人間とは違う構造、構成を成していた。
ジャックが止めの大鎌を振り上げ、
「最下位に見下ろされる気分はどうだぁ~? 序列第三位さんよぉ~」
ウィリアムは予想外の早い決着に落胆露わ、
「終わったな」
つまらなそうに呟き、軍曹が苦渋に満ちた表情で下を向いていると、
「これで仕舞だァ!」
マリアの白く華奢な首スジ目がけ、大鎌を振り下ろそうとした瞬間、
「!」
強烈な殺気を感じ、咄嗟に後方へ大きく飛び退き、
「な、何だ!?」
焦りの色を露わにした刹那、
「ガァッ!」
無数のレイピアが地面から剣山の様に飛び出しジャックを串刺し、持ち上げた。
「ガハァ!」
針の山の上で、多量吐血するジャック。
うつむいたまま右肩口を抑え、ユラリと立ち上がるマリア。
左手でレイピアを拾い上げ、
「お気に入りのドレスを台無しにしていただいた御礼レイピアを横一線。
その動作に呼応するかの如く、針山はチリと掻き消え、支えのなくなったジャックの体はドサリと地面に落ちた。
「カハァ!」
多量に吐血し、虫の息のジャックと、仁王のごとき形相で見下ろすマリア。
その両眼は怒りでランランと輝き、
「ど……どうしたよ……は、早く……やれよ……。体の修復は……もう始まってんぞ……」
苦悶の表情で悪態をつくジャックの傍ら、マリアは静かに屈み、何かを耳元で囁いた。
一瞬驚いた顔を見せるジャック。
しかし二の句を交わす事無く、手にしたレイピアでジャックの胸を地面ごと射貫き、
「がァ!」
ジャックは小さな悲鳴を一つ上げ、ピクリともしなくなった。
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