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4.偽りの新天地の章-8
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一夜明けた朝、溜め込んでいた物を全て吐き出した三人はスッキリとした表情で、屋敷の玄関扉の前で車を待っていた。
軍曹の運転で、町へ買い出しに行く為である。
マリアは眩しそうに青空を見上げ、
「お出掛けにはピッタリの、良いお天気でございますわねぇ~」
程なく、三人の前に一般的なフォードアセダンが停車し、
「お待たせしました」
軍曹が、パンツルックにYシャツと言う軽装姿で降車して来た。
「忙しいのに、すみません」
ヤマトが頭を下げると、ジゼが開口一番、
「許した訳じゃないんだから! 勘違いを、」
ヤマトは慌ててジゼの口を手で塞ぎ、
「き、気にしないで下さい! ちょっと陽気に当てられただけなんでぇ!」
「?」
笑って誤魔化し、軍曹が不思議そうに首を傾げていると、マリアが助け舟。
「さぁ皆様、早く町へ参りましょう」
率先して車に乗り込もうとした。が、
「アナタは、何をしてるんですか?」
軍曹が、怒り混じりの笑顔でマリアの肩を掴み、乗車を阻止。
マリアは気まずそうに、ゆ~っくりと振り返り、
「えぇ~と、そのぉ~お買い物を少々……」
「与党の方々と昼食会の予定がありましたよねぇ? お二人を迎い入れる準備の為、ここ数日放置したままの書類の山もぉ」
「そっ、そうでしたかしらぁ?」
白々しく笑い誤魔化そうとすると、軍曹はおもむろに、耳に掛けたヘッドセットの通話ボタンを押し、
「メイド隊ッ!」
凛とした口調で叫ぶと同時に、
ババァン!
玄関扉が勢い良く開き、黒いメイド服に身を包んだ十人近くの女性が一斉に飛び出し、横一列に整列。軍曹はメイド隊を前に、
「陛下を捕獲し、今日一日、気持ち良ぉ~く仕事をしていただく様にッ!」
「「「「「「「「「「イエッマァーーームッ!」」」」」」」」」」
敬礼すると、逃げ惑うマリアを総出で羽交い締め。
屋敷内へと引きずって行った。
「わ、わたくしは、この国の女王ですわよぉ~~~!」
あがくマリアに、メイド長と思われる年配女性が笑顔で相槌。
「左様で御座いますねぇ~。ですから、仕事はキチンとなさりましょうねぇ~」
「鬼軍曹ぉ! 薄情者ぉ~~~~~~~~~」
長く尾を引くマリアの恨み節ごと封印するかの様に、扉は無情に閉ざされた。
「まったく」
呆れ顔の軍曹。
しかしどこか嬉しそうであり、振り返えると、
「我々も行きましょうか」
ヤマトとジゼは軍曹の運転で、一路町の中心へ向かった。
町は二人が初めて降り立った「港町」を上回る賑わいを見せていた。
洒落た服が並ぶショーウインドーに、様々な国旗を掲げるレストラン。
威勢の良い声が飛び交う、食肉、青果に、鮮魚店。
通りに目を移せば、町を行き交う人々の笑顔。
今、この瞬間にも世界では先進国と呼ばれた国々も含め、安全な食料医薬品、非汚染地域の略取を目的とした戦争が繰り広げられているとは思えない光景であった。
軍曹はバックミラー越し、車窓に流れる町の賑わいに驚く二人に、
「これもマリアの、頑張りのたまものなんですよぉ」
まるで自分の事の様に、誇らしげに微笑んだ。
やがて軍曹は車を駐車場へ止め、二人を町なかへと案内。
当面二人が必要となる衣料、日用雑貨品を中心に、散策しながら購入して回った。
町は軍曹の言葉通り人々のエネルギーに満ち溢れ、二人は数歩歩くたび売り子に呼び止められ、買い物が一通り終わった頃には、喫茶店のテラス席のテーブルに突っ伏し、魂の抜け殻の様な顔をしていた。
「なんですかぁ~二人ともぉ、だらしない」
未だ元気な顔した軍曹が、コーヒーをすすり呆れ顔。
ヤマトは疲れ切った青い顔を上げ、
「こ、こんな人混み初めてだし……店の前を通るたび店員には捕まるし……」
同じ顔して、無言で何度も頷くジゼ。
不甲斐ない二人に、軍曹は困った様な笑顔をし、
「荷物は宅配で送りましたし、最後の一軒は、私のワガママに付き合ってもらいますよ!」
「「うへぇ……」」
軍曹はゲンナリする二人の襟首をムンズと掴むと、引きずる様にカフェを後にした。
軍曹の運転で、町へ買い出しに行く為である。
マリアは眩しそうに青空を見上げ、
「お出掛けにはピッタリの、良いお天気でございますわねぇ~」
程なく、三人の前に一般的なフォードアセダンが停車し、
「お待たせしました」
軍曹が、パンツルックにYシャツと言う軽装姿で降車して来た。
「忙しいのに、すみません」
ヤマトが頭を下げると、ジゼが開口一番、
「許した訳じゃないんだから! 勘違いを、」
ヤマトは慌ててジゼの口を手で塞ぎ、
「き、気にしないで下さい! ちょっと陽気に当てられただけなんでぇ!」
「?」
笑って誤魔化し、軍曹が不思議そうに首を傾げていると、マリアが助け舟。
「さぁ皆様、早く町へ参りましょう」
率先して車に乗り込もうとした。が、
「アナタは、何をしてるんですか?」
軍曹が、怒り混じりの笑顔でマリアの肩を掴み、乗車を阻止。
マリアは気まずそうに、ゆ~っくりと振り返り、
「えぇ~と、そのぉ~お買い物を少々……」
「与党の方々と昼食会の予定がありましたよねぇ? お二人を迎い入れる準備の為、ここ数日放置したままの書類の山もぉ」
「そっ、そうでしたかしらぁ?」
白々しく笑い誤魔化そうとすると、軍曹はおもむろに、耳に掛けたヘッドセットの通話ボタンを押し、
「メイド隊ッ!」
凛とした口調で叫ぶと同時に、
ババァン!
玄関扉が勢い良く開き、黒いメイド服に身を包んだ十人近くの女性が一斉に飛び出し、横一列に整列。軍曹はメイド隊を前に、
「陛下を捕獲し、今日一日、気持ち良ぉ~く仕事をしていただく様にッ!」
「「「「「「「「「「イエッマァーーームッ!」」」」」」」」」」
敬礼すると、逃げ惑うマリアを総出で羽交い締め。
屋敷内へと引きずって行った。
「わ、わたくしは、この国の女王ですわよぉ~~~!」
あがくマリアに、メイド長と思われる年配女性が笑顔で相槌。
「左様で御座いますねぇ~。ですから、仕事はキチンとなさりましょうねぇ~」
「鬼軍曹ぉ! 薄情者ぉ~~~~~~~~~」
長く尾を引くマリアの恨み節ごと封印するかの様に、扉は無情に閉ざされた。
「まったく」
呆れ顔の軍曹。
しかしどこか嬉しそうであり、振り返えると、
「我々も行きましょうか」
ヤマトとジゼは軍曹の運転で、一路町の中心へ向かった。
町は二人が初めて降り立った「港町」を上回る賑わいを見せていた。
洒落た服が並ぶショーウインドーに、様々な国旗を掲げるレストラン。
威勢の良い声が飛び交う、食肉、青果に、鮮魚店。
通りに目を移せば、町を行き交う人々の笑顔。
今、この瞬間にも世界では先進国と呼ばれた国々も含め、安全な食料医薬品、非汚染地域の略取を目的とした戦争が繰り広げられているとは思えない光景であった。
軍曹はバックミラー越し、車窓に流れる町の賑わいに驚く二人に、
「これもマリアの、頑張りのたまものなんですよぉ」
まるで自分の事の様に、誇らしげに微笑んだ。
やがて軍曹は車を駐車場へ止め、二人を町なかへと案内。
当面二人が必要となる衣料、日用雑貨品を中心に、散策しながら購入して回った。
町は軍曹の言葉通り人々のエネルギーに満ち溢れ、二人は数歩歩くたび売り子に呼び止められ、買い物が一通り終わった頃には、喫茶店のテラス席のテーブルに突っ伏し、魂の抜け殻の様な顔をしていた。
「なんですかぁ~二人ともぉ、だらしない」
未だ元気な顔した軍曹が、コーヒーをすすり呆れ顔。
ヤマトは疲れ切った青い顔を上げ、
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同じ顔して、無言で何度も頷くジゼ。
不甲斐ない二人に、軍曹は困った様な笑顔をし、
「荷物は宅配で送りましたし、最後の一軒は、私のワガママに付き合ってもらいますよ!」
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