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3.旅立ちの章-42
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その頃ブリッジでは、クリストファーが電子海図の映る自席のモニタを見つめ、
「艦長、予定海域に到達いたしましたの。ポイントまでは、あと五分ほどですの」
キャプテンシートに座る艦長は静かに頷き、
「監視長、周辺に艦影は?」
「ありません。ただ……」
「なんだね?」
アイザックは窺う様にチラリとジゼを見てから、
「レーダーにハワイ島らしき影しか映りません……その形状も、大戦前のデータとは著しく……」
言葉尻を濁すと、場の空気を察したジゼがスッと立ち上がり、クルー達の方を毅然と向き、
「作業は続行して下さい。ヤマトも……覚悟はしていると思いますから」
向けられた、迷いの無い真っ直ぐな眼差しに艦長は頷き、
「本艦は予定通り大戦前の海図に従い、ハワイ島沖合「イチNM(Nautical Mile)」に停泊。そこを起点に、調査班水上バイク部隊による海底測量調査を実施、取れうる限りのデータ収集を行う!」 ※イチNM(イチ海里、千八百五十二メートル)
「「「「「「「「イエッサァー!」」」」」」」」
数分後、戦艦ガルシアはハワイ島の南の沖合に停船し、投錨した。
戦後、全てが消え失せたこの海域にあえて来る者などおらず、結果、海図データも絶無。
爆発で海底地形も、潮流も変わり、いつどこで座礁するか分からない、リスクしかないこの海域に、さしも物好き集団の集まりの様なダイバーズメンバーでさえ足を踏み入れる者はいなかった。
ソフィアは耳に掛けたヘッドセットの通話ボタンを押し、
「調査班は作業を開始して下さい」
「あいよ~」
ブリッジ内スピーカーから返る、緊張感のないブレイクの声。
「気を付けてね、ブレイク。ある意味、未開の地よ」
「その……お、お気をつけて……ですの……ブレイク」
「ソフィア、クリストファー、サンキュー。ダチに心配されて送り出されるってのはこそばゆいが、悪かぁ~ないモンだねぇ~。んじゃ行くよガキ共ォ!」
洋上のブレイクは嬉しそうな声を張り上げ、バイクのレバーをスロットル全開、激しい水しぶきを上げ猛スピードで走り出し、
「遅れんじゃないよガキ共ォ! チンタラしたヤツは飯抜きだよォーーーッ」
「おっしゃあァーーーッ!」
「オラァ行ッくぜぇーーーーッ!」
続くマシューとルークに、ダニエルは辟易顔。
「だからそう言う暑苦しいノリが嫌なんだってぇ……」
渋々走り出すと、苦笑いのヤマトのヘッドセットにジゼの声が。
「け、怪我したら許さないんだからぁ!」
「アハハハ。気を付けるよぉ。じゃあジゼ、行って来る!」
「うん。気を付けてね」
微笑むも、集まるニヤニヤ視線にハッとし、うつむいた。
「艦長、予定海域に到達いたしましたの。ポイントまでは、あと五分ほどですの」
キャプテンシートに座る艦長は静かに頷き、
「監視長、周辺に艦影は?」
「ありません。ただ……」
「なんだね?」
アイザックは窺う様にチラリとジゼを見てから、
「レーダーにハワイ島らしき影しか映りません……その形状も、大戦前のデータとは著しく……」
言葉尻を濁すと、場の空気を察したジゼがスッと立ち上がり、クルー達の方を毅然と向き、
「作業は続行して下さい。ヤマトも……覚悟はしていると思いますから」
向けられた、迷いの無い真っ直ぐな眼差しに艦長は頷き、
「本艦は予定通り大戦前の海図に従い、ハワイ島沖合「イチNM(Nautical Mile)」に停泊。そこを起点に、調査班水上バイク部隊による海底測量調査を実施、取れうる限りのデータ収集を行う!」 ※イチNM(イチ海里、千八百五十二メートル)
「「「「「「「「イエッサァー!」」」」」」」」
数分後、戦艦ガルシアはハワイ島の南の沖合に停船し、投錨した。
戦後、全てが消え失せたこの海域にあえて来る者などおらず、結果、海図データも絶無。
爆発で海底地形も、潮流も変わり、いつどこで座礁するか分からない、リスクしかないこの海域に、さしも物好き集団の集まりの様なダイバーズメンバーでさえ足を踏み入れる者はいなかった。
ソフィアは耳に掛けたヘッドセットの通話ボタンを押し、
「調査班は作業を開始して下さい」
「あいよ~」
ブリッジ内スピーカーから返る、緊張感のないブレイクの声。
「気を付けてね、ブレイク。ある意味、未開の地よ」
「その……お、お気をつけて……ですの……ブレイク」
「ソフィア、クリストファー、サンキュー。ダチに心配されて送り出されるってのはこそばゆいが、悪かぁ~ないモンだねぇ~。んじゃ行くよガキ共ォ!」
洋上のブレイクは嬉しそうな声を張り上げ、バイクのレバーをスロットル全開、激しい水しぶきを上げ猛スピードで走り出し、
「遅れんじゃないよガキ共ォ! チンタラしたヤツは飯抜きだよォーーーッ」
「おっしゃあァーーーッ!」
「オラァ行ッくぜぇーーーーッ!」
続くマシューとルークに、ダニエルは辟易顔。
「だからそう言う暑苦しいノリが嫌なんだってぇ……」
渋々走り出すと、苦笑いのヤマトのヘッドセットにジゼの声が。
「け、怪我したら許さないんだからぁ!」
「アハハハ。気を付けるよぉ。じゃあジゼ、行って来る!」
「うん。気を付けてね」
微笑むも、集まるニヤニヤ視線にハッとし、うつむいた。
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