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青木 森

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3.旅立ちの章-37

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 それから数分後―――
 ギクシャクと、緊張気味に町を歩くマシューとルーク。
 戦地を渡り歩く様に生きて来たマシューとルークにとって、女の子とのデートは初体験。
 ナクアと手を繋ぎ歩きつつ、
(どうすりゃイイんだよぉ)
(俺が知るかよぉ)
 勝手が分からず小声で言い合いしていたが、それはヤマトとジゼも同じであった。
 二人で居る事には慣れてはいたが、それはあくまで島での話。
 周囲に他人の眼がある、外の世界では初めて。
 顔には出さないものの、内心激しく動揺、居心地の悪さと気恥ずかしさに戸惑うジゼの耳と目に、ゲームセンターの賑やかな音と看板がとまった。
 島で暮らしていた頃に雑誌で見た事はあったが、実物は初めて。
「入ってみるか?」
 促すヤマトに、興味津々頷くジゼ。
「マシュー達も良いか?」
「あぁ、構わねぇよ」
「おぅよ。このままだと緊張死しちまいそうだぜ」
 苦笑いするマシューとルーク、そして無表情で頷くナクア。
 ゲームと言うのは時として最高のコミュニケーションツールである。
 無表情のナクアは分からないが、緊張状態であった四人は、レースゲームに対戦ゲームと渡り歩くうちに緊張もほぐれ、店を出てからは露店でジャンクフードを購入して食べ歩き、いつしか他愛ない話を交わしながら、町なかをウインドショッピングしながら歩いていた。
 五人でのダブルデートに大分慣れたマシューとルークであったが、ジゼの希望でとあるショップに入るなり、フリダシの緊張状態に逆戻り。直立不動で固まった。
 それもその筈、その店は女性向けアクセサリーを売るショップで、店内は若い女性客ばかり。
「「な、なんでヤマトは平気なんだぁ……」」
「ん? うぅ~ん……慣れ?」
((彼女持ちのリア充めぇ!))
 すると未だ周囲の眼ばかり気にするマシューとルークに、ジゼがプチキレ。
「可愛い女の子にデートしてもらったんだから、何か買ってあげなさいよ!」
「「はぁ!? 何で俺達が……」」
 露骨に面倒臭そうな顔をするも、見上げるナクアの無垢な瞳に、
「「ううっ……わ、分かったよぉ……」」
 戸惑いながらも陳列棚を眺め、一つのアクセサリーに目を止めた。
「ま、マシュー……これで良いと思うかぁ?」
「んなモン分かんねぇ~よぉ……てかぁ……やっぱ好みも被んのなぁ……」
 改めて知るお互いのシンクロぶりに、もはや笑うしかない二人。
 選んだのは、「二人の髪」と「ナクアの瞳」と同じ色をした、サイズは幾分小ぶりだが色鮮やかな「赤いルビー」のはめ込まれたペンダント。
 二人でナクアの首にかけてあげ、
「「こ、これで満足かよぉ?」」
 照れ臭そうなマシューとルークに対し、ナクアが貰ったペンダントの石をジッと見つめてコクコク頷くと、
「良かったわねぇ、ナクア。でも町の中は物騒だから、服の下に仕舞っておくのよぉ」
 微笑み諭すジゼの姿は、お姉ちゃん。
 頷くナクアがペンダントを胸元に仕舞うと、ジゼはチラッとヤマトに視線を送り、
「双子だって甲斐性見せたんだから、期待してるからねぇ~」
 イタズラっぽい笑顔にヤマトが笑って誤魔化すと、ナクアが首を傾げ、
「双子?」
 マシューとルークを指差した。
「「違ぇーーーよぉ!」」
「?」
「「ジゼぇ! オメェのせいで勘違いしちまってるじゃねぇかぁ!」」
 ヤマトとジゼが笑い合っていると、ナクアが急に一言、
「時間」
 店内の壁掛け時計を指差した。
「ヤバっ! そろそろ戻らないとぉ!」
 焦るヤマトに頷くジゼ、マシュー、ルーク。
「「一人で帰れるのかぁ!?」」
 ぶっきら棒ながらも気遣いを見せるマシューとルークに、
「うぬぅ」
 ナクアは頷くと、傾きかけた陽の中へと走り去って行った。
「「ったく、礼も無しかよぉ」」
 言葉とは裏腹に、妙に嬉しそうな顔するマシューとルーク。
 慣れない事に緊張した時間の連続ではあった様だが、それなり楽しんだ様である。
 見送る二人は、ヤマトとジゼが向ける生温かい視線に照れ臭そうな顔して、
「「に、ニヤニヤしながらコッチ見てんじゃねぇ! お、置いてくぞぉ!」」
 西日に赤く染まり始めた通りを、ガルシアに向かい走り出した。
 笑い合い、後に続いて走り出すヤマトとジゼ。

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