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3.旅立ちの章-34
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ソフィアを筆頭に、ジゼを連れ立つ女性陣がやって来たのは、道中で見かけた露店とは一線を画す、全面ガラス張りで四層吹き抜け。様々なテナントが入る、小型のショッピングモールであった。
「す、スゴイ……」
吹き抜けのど真ん中に立ち、天井に見える青空を見上げるジゼ。
「驚くのはまだ早いっスよぉ!」
ナタリーはどさくさ紛れにボディータッチ。ニヤケ顔してジゼの背中を押し擦りつつ、
「ショップを見たらもっと驚くっスよぉ!」
辿り着いた先は、若い女性向けの服を売るショップであった。
一見すると普通の店と何ら変わらないように見えたが、
「……店員が居ない?」
思い返して見れば、このショッピングモールに入ってから店員の姿を一人として見ていない。
吹き抜け越し、他のショップを眺めて見ても店員の姿は見受けられず、
「初めて見ると驚きますの。この島のダイバーズ直営ショップには、店員が一人もおりませんのぉ」
何故か得意げなクリストファー。
ジゼは興味津々、
「支払いは?」
「商品をカウンターに持って行って、ダイバーズのメンバーズカードをかざすだけなのよ」
「盗まれないの!?」
「ショップの入り口と、モールの入り口で二重チェックしてるっス。それにココはダイバーズの島。命を懸けて物を盗む馬鹿はいないっスよ」
「どう言う事?」
「ジゼさんには、まだ話していなかったわね? この島には唯一、絶対に守らなければならない暗黙のルールがあるの」
「ルール?」
「そうっス。それは……「ダイバーズを敵に回さない事」っス」
「!」
「そうですの。それはわたくし達も含め、ダイバーズメンバー全員にも適用されますの」
「……もし敵に回したら?」
固唾呑むジゼに、ソフィアはゆっくりと、
「年齢関係なしにビンゴブックの仲間入り。最悪、DEAD OR ALIVE(生死問わず)の賞金首よ」
「こ、子供のイタズラ……でも?」
「そうよ。かわりにダイバーズにさえ害を及ぼさなければ、不法島民同士のいざこざには、どんなに悪質な用件であっても一切不介入なの」
「え……」
「つまり凶悪な指名手配犯でも、ここのルールに従えば島で寿命をまっとう出来るっス」
(何かそれって……)
すっかりテンションだだ下がりのジゼ。
「ま、まぁアレっスよ! 人として当たり前のルールを守っていれば、気にする事は何も無いって事っスよ!」
「そ、そう言う事ですのぉ! と言う事で……」
少し赤い顔したクリストファーがモジモジと、ジゼを上目遣いで見つめたかと思うと、
「コレを着てみませんことぉ!」
キラキラした満面の笑顔で、とあるワンピースを突き付けた。
「!?」
(れ、レースだらけの、黒のゴスロリミニスカワンピぃ!?)
思わずドン引くジゼであったが、
「前々からジゼさんに着せたい、もとい、似合うのでは思っていましたの!」
(今着せたいって……)
秘めた想いが決壊したクリストファーは留まる事を知らず、
「では、コチラはどうですのぉ!?」
(色と形が違うだけじゃん!)
心でツッコムも気迫に気圧され後退ると、ナタリーが助け舟。
「ジゼちゃんが、引いてるじゃないっスかァ!」
(ありがとうナタリー! たまには良い事を、)
「ジゼちゃんには、コッチっスよ!」
「……」
絶句するジゼ。
振り返った先でナタリーが手にしていた服は、丈が二十センチあるか分からない程の超ミニスカと、胸のアンダーが出そうな「ヘソ出しタンクトップ」であった。
(な、ないわぁぁ……)
呆れ顔のジゼを尻目に、
「ならばコチラの方はいかかがですのぉ!」
「イエイエ、こっちッスぅよ! コッチィ!」
次から次へ、ゴスロリファッションをやたら着せようと勧めるクリストファーと、やたらと露出の多い服をばかり着せたがる、欲望 丸出しのナタリー。
見かねたソフィアが、
「今日の主題は、デートコーデなのよ!」
「「!」」
趣旨を思い出す二人であったが、ソフィアが手にする大きめのリボンが付いた「乙女チックなワンピース」にニヤリ。
「貴方の趣味も、中々ですの」
「お仲間っスねぇ、副長ぉ~」
「え!? ウソぉ!」
驚くソフィアの視線から、ジゼは逃れる様に眼を背けた。
常に制服で行動していたソフィアは、今日までファッションセンスに関して指摘を受ける事が無く、自身の偏った嗜好(少女趣味)に気付いていなかったのである。
今回のジゼのコーデも欲望で選んだ二人とは違い、絶対の自信を以て挑んでいたが、結果として二人と何ら変わらない思考回路である事が明らかになり、
「ち、違う……私は……」
虚ろな目で打ち震え頭を抱えていると、クリストファーとナタリーが満面の笑みで肩に手を置き、
「「ウェルカムぅ!」」
「いやぁあぁぁあぁぁぁぁああぁあぁぁ!」
太平洋の青空に、悲しい断末魔が鳴り響いた。
「す、スゴイ……」
吹き抜けのど真ん中に立ち、天井に見える青空を見上げるジゼ。
「驚くのはまだ早いっスよぉ!」
ナタリーはどさくさ紛れにボディータッチ。ニヤケ顔してジゼの背中を押し擦りつつ、
「ショップを見たらもっと驚くっスよぉ!」
辿り着いた先は、若い女性向けの服を売るショップであった。
一見すると普通の店と何ら変わらないように見えたが、
「……店員が居ない?」
思い返して見れば、このショッピングモールに入ってから店員の姿を一人として見ていない。
吹き抜け越し、他のショップを眺めて見ても店員の姿は見受けられず、
「初めて見ると驚きますの。この島のダイバーズ直営ショップには、店員が一人もおりませんのぉ」
何故か得意げなクリストファー。
ジゼは興味津々、
「支払いは?」
「商品をカウンターに持って行って、ダイバーズのメンバーズカードをかざすだけなのよ」
「盗まれないの!?」
「ショップの入り口と、モールの入り口で二重チェックしてるっス。それにココはダイバーズの島。命を懸けて物を盗む馬鹿はいないっスよ」
「どう言う事?」
「ジゼさんには、まだ話していなかったわね? この島には唯一、絶対に守らなければならない暗黙のルールがあるの」
「ルール?」
「そうっス。それは……「ダイバーズを敵に回さない事」っス」
「!」
「そうですの。それはわたくし達も含め、ダイバーズメンバー全員にも適用されますの」
「……もし敵に回したら?」
固唾呑むジゼに、ソフィアはゆっくりと、
「年齢関係なしにビンゴブックの仲間入り。最悪、DEAD OR ALIVE(生死問わず)の賞金首よ」
「こ、子供のイタズラ……でも?」
「そうよ。かわりにダイバーズにさえ害を及ぼさなければ、不法島民同士のいざこざには、どんなに悪質な用件であっても一切不介入なの」
「え……」
「つまり凶悪な指名手配犯でも、ここのルールに従えば島で寿命をまっとう出来るっス」
(何かそれって……)
すっかりテンションだだ下がりのジゼ。
「ま、まぁアレっスよ! 人として当たり前のルールを守っていれば、気にする事は何も無いって事っスよ!」
「そ、そう言う事ですのぉ! と言う事で……」
少し赤い顔したクリストファーがモジモジと、ジゼを上目遣いで見つめたかと思うと、
「コレを着てみませんことぉ!」
キラキラした満面の笑顔で、とあるワンピースを突き付けた。
「!?」
(れ、レースだらけの、黒のゴスロリミニスカワンピぃ!?)
思わずドン引くジゼであったが、
「前々からジゼさんに着せたい、もとい、似合うのでは思っていましたの!」
(今着せたいって……)
秘めた想いが決壊したクリストファーは留まる事を知らず、
「では、コチラはどうですのぉ!?」
(色と形が違うだけじゃん!)
心でツッコムも気迫に気圧され後退ると、ナタリーが助け舟。
「ジゼちゃんが、引いてるじゃないっスかァ!」
(ありがとうナタリー! たまには良い事を、)
「ジゼちゃんには、コッチっスよ!」
「……」
絶句するジゼ。
振り返った先でナタリーが手にしていた服は、丈が二十センチあるか分からない程の超ミニスカと、胸のアンダーが出そうな「ヘソ出しタンクトップ」であった。
(な、ないわぁぁ……)
呆れ顔のジゼを尻目に、
「ならばコチラの方はいかかがですのぉ!」
「イエイエ、こっちッスぅよ! コッチィ!」
次から次へ、ゴスロリファッションをやたら着せようと勧めるクリストファーと、やたらと露出の多い服をばかり着せたがる、欲望 丸出しのナタリー。
見かねたソフィアが、
「今日の主題は、デートコーデなのよ!」
「「!」」
趣旨を思い出す二人であったが、ソフィアが手にする大きめのリボンが付いた「乙女チックなワンピース」にニヤリ。
「貴方の趣味も、中々ですの」
「お仲間っスねぇ、副長ぉ~」
「え!? ウソぉ!」
驚くソフィアの視線から、ジゼは逃れる様に眼を背けた。
常に制服で行動していたソフィアは、今日までファッションセンスに関して指摘を受ける事が無く、自身の偏った嗜好(少女趣味)に気付いていなかったのである。
今回のジゼのコーデも欲望で選んだ二人とは違い、絶対の自信を以て挑んでいたが、結果として二人と何ら変わらない思考回路である事が明らかになり、
「ち、違う……私は……」
虚ろな目で打ち震え頭を抱えていると、クリストファーとナタリーが満面の笑みで肩に手を置き、
「「ウェルカムぅ!」」
「いやぁあぁぁあぁぁぁぁああぁあぁぁ!」
太平洋の青空に、悲しい断末魔が鳴り響いた。
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