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青木 森

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3.旅立ちの章-32

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 凪であった海は、晴天で、無風であるにもかかわらず激しい白波を立て、浮上して来た何かは高い波頭を四方八方へ波紋状に広げ、波はうねり、高さを増し、ガルシアに迫って行った。
 津波の様に迫り来る高波に、ヤマトは慌ててロープに手を掛け、
「ちょ! 隊長ォ! みんなァ! これヤバイんじゃ!?」
 ほどこうとするも、ブレイク達調査班の面々は高波に満面の笑みをぶつけ、
「ロープを外すんじゃないよ、ヤマトォ!」
「へ?」
「流されて死んじまうからねぇ!」
「「来やがれぇってんだァーーーッ!」」
「カモォン、レディーーー!」
 何故か全員テンションMax。
「あは、あは、あははははは……もう好きにしてぇ……」
 半泣き半笑いで、腹を括るヤマト。
 既に激しく揺れる甲板上では、這って艦内へ逃げる事もままならない。
 そうこうしているうちに壁の様に迫る大波は、ガルシアに真正面から激しくぶつかり、船首で真っ二つに引き裂かれると、負けを認めたかの様に後方へと流れて行った。
 次々迫る波頭を、艦首で切り裂き突き進むガルシアであったが、相手は大海、船体は濁流に巻かれる木の葉の様。
 当然、舳先にいるブレイク達は船体ごと上下に激しく何度も揺さぶられ、溺れそうな程の海水を何度も何度も被っていたが、
「プッハァッハァーーーッ! 次々来やがれってんだァーーーーーーッ!」
「「プハァー! 負けねぇぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」
「プッハァーーー! もう最ッこうォーーーーーーーーー!」
 ずぶ濡れどころか半分溺れながらの歓喜の絶叫。
 始めは呆れ顔していたヤマトでさえ、内から沸き上がって来る得体の知れない高揚感に、
「次ィ来いやぁーーーーーーーーー!」
 無意味で危険極まりない行為ではあるが、仲間達の操船技術を信頼しているからこそ出来る、大人の悪ノリ、悪ふざけである。
 やがて海底噴火の様に白立つ中心地に、透明なお椀を被せた様な巨大ドームが浮上して来た。
 ドームの中に見えるのは小豆島程の面積を有する、陸地の三分の二ほどが森で占められた緑豊かな島。
 島は浮上するなり透明ドームを開け、同時に無数の細い長い桟橋を、触手の様に四方八方へ伸ばした。
「「どうだぁ! スゲェーだろヤマトぉーーー!」」
 自慢気に笑うビショ濡れマシューとルークに、同じくズブ濡れヤマトは突如現れた島を唖然と見つめ、
「あぁ……本当にスゲェ……」
 驚嘆の声を漏らしつつ、
(ジゼと見たかったな……)
 しばし感傷に浸っていたが、
「オマエ達! 上陸準備前に、ひとっ風呂浴びとくよ!」
「「「ウィス!」」」
「了解」
 全身からシズクを滴らせるブレイクの一声で現実に戻され、艦内へと戻った。

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