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3.旅立ちの章-26
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ある意味で、最も身の危険を感じたジゼは、
「やっぱりキモイから消してやる」
「こ、コラァ、勝手に消そうとすなぁ!」
ヤマトとジゼが消す消さないの取っ組み合いをするさなか、ソフィアがおもむろに、
「一つ、質問をよろしいかしら?」
「ど、どうぞぉ!」
「どうしてココが、船の中だと知ったの?」
「「「「!」」」」
確かに、誰もココが「船の中」だとは言っていない。
しかし謎のAIは呆れた様に、
「何かと思えば、その程度の……」
「いいから答えて」
「……繋いでいる端末の中のデータは船関係の物で、しかも貴方は「副長」と呼ばれている。となれば「船の中」と推察するのは容易なこと」
淡々と答えるAIに、驚きを隠せないイーサン(動揺のポージング)とゾーイ。
「た、端末内のデータ……だと? 馬鹿な……軍用の特殊な削除ソフト使って入念に消した上、無関係なデータを上書きし、元データには完全にアクセス出来ない処理をした筈……」
「有り得ない、データ復元力でヤスぅ……」
「あはははは、お生憎様です。造作もない事ですよ」
単なるお調子者のAIと思っていたソフィア達にとって、衝撃の事実であった。
と、同時にソフィアの胸中では、
(片鱗だけで、このチカラ……手放すには惜しいわ……)
しかし駆け引きは「欲の強さ」を見抜かれた方が負け。
ソフィアは努めて平静さを保ちつつ、
「分かりました。艦長に、お話ししてみます」
部屋を出て行こうとすると、
「一つ、お願いを良いですか?」
「…………」
相手はしたたかなAI。内心「何を要求されるか」と警戒しつつ、毅然とした表情で振り返り、
「なんでしょう?」
「ふふふ。怖い顔をしなくても大丈夫です」
「「「「「…………」」」」」
固唾を呑むソフィア達(イーサンは固唾を呑むポージング)。
五人が身構える中、謎のAIの要求は、
「名前が欲しいんです」
「「「「「……へ?」」」」」
緊張して身構えた分、肩透かしを食った様な思いをしたものの、
(その程度で済むなら……)
ソフィアは端末のウェブカメラを覗き込み、コホンと小さく咳払い。
「それでは……」
「いえいえ副長殿にではなく、ジゼ姉様に付けていただきたいのでぇす」
「ジゼさんに?」
驚く間も無く、ジゼは躊躇なく、
「シセ」
「「「「シセぇ!?」」」」
あまりの安易さに驚くヤマト達(イーサン仰天のポージング)であったが、理由を聞き更に驚いた。
「私に負けたから、私の名前から点を取って「シセ」」
ある種、売り言葉に買い言葉。嫌味交じりの名づけに、ヤマトは流石にマズイと思い、
「も、もうちょっと考えてからでも」
再考を促すも、
「最高でぇえぇぇすぅ!」
AIが、陶酔した歓呼の叫び。
「「「「「!?」」」」」
ギョッとするヤマト達(イーサン、吃驚のポージング)。
特にジゼが。
嫌がらせで名付けた筈が、まさかの好反応。
「ジゼとシセ! まるで姉妹じゃないですか! もうコレは一心同体、一卵性双生児と言っても過言ではないでぇす!」
画面から飛び出して来そうなハートマークな声に、
「…………」
ジゼは返す言葉を失った。
完敗である。
後日、シセは自ら望んで、頼まれてもいない箇所も含め、プログラムの全てを曝け出し、隅々までウイルスチェックを受けた上で、戦艦ガルシアの基幹プログラムとしてインストールされた。
無論、チェックした(させられた)のは本人のたっての希望で、ウンザリ顔のジゼである。
新たな仲間シセを加え、契約の地、ハワイを目指しひた走る戦艦ガルシア。
「やっぱりキモイから消してやる」
「こ、コラァ、勝手に消そうとすなぁ!」
ヤマトとジゼが消す消さないの取っ組み合いをするさなか、ソフィアがおもむろに、
「一つ、質問をよろしいかしら?」
「ど、どうぞぉ!」
「どうしてココが、船の中だと知ったの?」
「「「「!」」」」
確かに、誰もココが「船の中」だとは言っていない。
しかし謎のAIは呆れた様に、
「何かと思えば、その程度の……」
「いいから答えて」
「……繋いでいる端末の中のデータは船関係の物で、しかも貴方は「副長」と呼ばれている。となれば「船の中」と推察するのは容易なこと」
淡々と答えるAIに、驚きを隠せないイーサン(動揺のポージング)とゾーイ。
「た、端末内のデータ……だと? 馬鹿な……軍用の特殊な削除ソフト使って入念に消した上、無関係なデータを上書きし、元データには完全にアクセス出来ない処理をした筈……」
「有り得ない、データ復元力でヤスぅ……」
「あはははは、お生憎様です。造作もない事ですよ」
単なるお調子者のAIと思っていたソフィア達にとって、衝撃の事実であった。
と、同時にソフィアの胸中では、
(片鱗だけで、このチカラ……手放すには惜しいわ……)
しかし駆け引きは「欲の強さ」を見抜かれた方が負け。
ソフィアは努めて平静さを保ちつつ、
「分かりました。艦長に、お話ししてみます」
部屋を出て行こうとすると、
「一つ、お願いを良いですか?」
「…………」
相手はしたたかなAI。内心「何を要求されるか」と警戒しつつ、毅然とした表情で振り返り、
「なんでしょう?」
「ふふふ。怖い顔をしなくても大丈夫です」
「「「「「…………」」」」」
固唾を呑むソフィア達(イーサンは固唾を呑むポージング)。
五人が身構える中、謎のAIの要求は、
「名前が欲しいんです」
「「「「「……へ?」」」」」
緊張して身構えた分、肩透かしを食った様な思いをしたものの、
(その程度で済むなら……)
ソフィアは端末のウェブカメラを覗き込み、コホンと小さく咳払い。
「それでは……」
「いえいえ副長殿にではなく、ジゼ姉様に付けていただきたいのでぇす」
「ジゼさんに?」
驚く間も無く、ジゼは躊躇なく、
「シセ」
「「「「シセぇ!?」」」」
あまりの安易さに驚くヤマト達(イーサン仰天のポージング)であったが、理由を聞き更に驚いた。
「私に負けたから、私の名前から点を取って「シセ」」
ある種、売り言葉に買い言葉。嫌味交じりの名づけに、ヤマトは流石にマズイと思い、
「も、もうちょっと考えてからでも」
再考を促すも、
「最高でぇえぇぇすぅ!」
AIが、陶酔した歓呼の叫び。
「「「「「!?」」」」」
ギョッとするヤマト達(イーサン、吃驚のポージング)。
特にジゼが。
嫌がらせで名付けた筈が、まさかの好反応。
「ジゼとシセ! まるで姉妹じゃないですか! もうコレは一心同体、一卵性双生児と言っても過言ではないでぇす!」
画面から飛び出して来そうなハートマークな声に、
「…………」
ジゼは返す言葉を失った。
完敗である。
後日、シセは自ら望んで、頼まれてもいない箇所も含め、プログラムの全てを曝け出し、隅々までウイルスチェックを受けた上で、戦艦ガルシアの基幹プログラムとしてインストールされた。
無論、チェックした(させられた)のは本人のたっての希望で、ウンザリ顔のジゼである。
新たな仲間シセを加え、契約の地、ハワイを目指しひた走る戦艦ガルシア。
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