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青木 森

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3.旅立ちの章-22

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 戦艦ガルシアに向かい走るボートの上、ヤマトは一人離れて座り、波間を見つめていた。
 ブリーフィングでダニエルに悪態を吐いた手前、真意は別としても座りが悪かったのである。
 しかし、そんなヤマトに声を掛けたのは、意外にもダニエルであった。
 操船しながらチラリとヤマトを見て、フッと小さく笑うと、
「ヤマトぉ!」
「?」
「初任務お疲れ様ぁ!」
 その裏表を感じさせない笑顔にヤマトは戸惑い、
「え? いや……サンキュ……それと……」
「僕の実力を図りかねて、安全パイを取ったんだろ?」
「……き、傷つける様な言い方して……その……すまなかった……」
 見透かされていた事に、照れ臭そうに横を向くと、ニヤつくマシューとルークが両サイドから挟む様に座り、
「なんでぇなんでぇ、不器用さんてかぁ?」
「背中で語りますってかぁ?」
「ぶ、不器用で悪かったなぁ」
 憤慨するヤマトに、
「「「ぜぇ~んぜん!」」」
 笑顔を見せるマシュー、ルーク、そしてダニエル。
 四人の若者の姿に、艦長は帽子の下で小さく笑い、
「さぁ! 我等が家に帰ろう!」
 次第に近づく、船体を夕陽に赤く染める戦艦ガルシアを見つめた。

 抜錨した戦艦ガルシアは台湾沖合を離れて安全海域まで移動し、その日の夜は大口依頼成功と、新規加入の「ヤマトとジゼ」を祝して、盛大な飲み会が催された。 
 当直には時間交替制で我慢してもらいつつ、以外の全クルーが後部格納庫に集合。
 幾つもの長テーブルの上には料理に飲み物、アルコール類もズラリと並び、艦長の気の利かせた短い乾杯の音頭の後、宴は前のめりの大盛り上がりで始まった。
 洋上のど真ん中、近所迷惑など気にする必要もなく、飲んで叫んで喚いて、会場内はお祭り騒ぎ。
 主賓席にはヤマトとジゼが、パーティー用の三角帽子を被らされ、ちょこんと座る。
 初めて見る、大人数の大人達の羽目を外した大騒ぎ。
 陽気に飲んで、歌って、笑うガルシアクルー達を二人は見つめ、
「うまく言えないけど……なんか楽しいねぇ」
「だな。こう言うのを「仲間」って言うのかもな。兵役に就いていた時にも、作戦ごとに「仲間」は居たけど、殺伐として……あの時は違うんだなぁ」
 笑い合っていると、ほろ酔いのマシューとルークが近づいて来て、
「んだぁ~オマエ等も、ダニエルと同類かぁ~」
「このリア充どもがぁ~!」
「二人とも酔ってんのかぁ?」
 ヤマトとジゼが苦笑いして見せると、
「……残念ながら飲んでない」
「艦内ルールで、俺らまだ未成年扱い。飲酒禁止なんだとぉ」
「アハハハハ。この雰囲気で、ソレは辛いなぁ」
「「だろう?」」
 ため息吐き、
「で、そのダニエルは?」
 二人は無言でとある一団を指差した。
 ダニエルを中央に据え、取り囲む様に座る女性クルー達。
 まるでハーレム状態である。
「「性格が歪んでるアイツの、何がそんなに良いのかねぇ~」」
 嫉み交じりに二人が呟くと、
「顔だろ?」
「「キィーーーッ!」」
 二人は金切り声を上げ、
「良いよなぁ~彼女持ちはよぉ~」
「余裕を感じるよなぁ~」
「「彼女?」」
 思わず顔を見合わせるヤマトとジゼ。
 途端に真っ赤な顔になり、
「ち、違うってぇ! ジゼとは、その、か、家族であってぇ!」
「そっ、そうよ! ヤマトとはそんな関係じゃないんだからぁ!」
「「ハイハイさいですかぁ、ご馳走様。ケェ!」」
 マシューとルークが辟易した顔をした途端、
「いい加減にしてぇ!」
 ガシャーーーン!
 ソフィアの激昂した叫びと共にグラスの割れる音が鳴り響き、会場内が一瞬にして静まり返った。
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