45 / 535
3.旅立ちの章-22
しおりを挟む
戦艦ガルシアに向かい走るボートの上、ヤマトは一人離れて座り、波間を見つめていた。
ブリーフィングでダニエルに悪態を吐いた手前、真意は別としても座りが悪かったのである。
しかし、そんなヤマトに声を掛けたのは、意外にもダニエルであった。
操船しながらチラリとヤマトを見て、フッと小さく笑うと、
「ヤマトぉ!」
「?」
「初任務お疲れ様ぁ!」
その裏表を感じさせない笑顔にヤマトは戸惑い、
「え? いや……サンキュ……それと……」
「僕の実力を図りかねて、安全パイを取ったんだろ?」
「……き、傷つける様な言い方して……その……すまなかった……」
見透かされていた事に、照れ臭そうに横を向くと、ニヤつくマシューとルークが両サイドから挟む様に座り、
「なんでぇなんでぇ、不器用さんてかぁ?」
「背中で語りますってかぁ?」
「ぶ、不器用で悪かったなぁ」
憤慨するヤマトに、
「「「ぜぇ~んぜん!」」」
笑顔を見せるマシュー、ルーク、そしてダニエル。
四人の若者の姿に、艦長は帽子の下で小さく笑い、
「さぁ! 我等が家に帰ろう!」
次第に近づく、船体を夕陽に赤く染める戦艦ガルシアを見つめた。
抜錨した戦艦ガルシアは台湾沖合を離れて安全海域まで移動し、その日の夜は大口依頼成功と、新規加入の「ヤマトとジゼ」を祝して、盛大な飲み会が催された。
当直には時間交替制で我慢してもらいつつ、以外の全クルーが後部格納庫に集合。
幾つもの長テーブルの上には料理に飲み物、アルコール類もズラリと並び、艦長の気の利かせた短い乾杯の音頭の後、宴は前のめりの大盛り上がりで始まった。
洋上のど真ん中、近所迷惑など気にする必要もなく、飲んで叫んで喚いて、会場内はお祭り騒ぎ。
主賓席にはヤマトとジゼが、パーティー用の三角帽子を被らされ、ちょこんと座る。
初めて見る、大人数の大人達の羽目を外した大騒ぎ。
陽気に飲んで、歌って、笑うガルシアクルー達を二人は見つめ、
「うまく言えないけど……なんか楽しいねぇ」
「だな。こう言うのを「仲間」って言うのかもな。兵役に就いていた時にも、作戦ごとに「仲間」は居たけど、殺伐として……あの時は違うんだなぁ」
笑い合っていると、ほろ酔いのマシューとルークが近づいて来て、
「んだぁ~オマエ等も、ダニエルと同類かぁ~」
「このリア充どもがぁ~!」
「二人とも酔ってんのかぁ?」
ヤマトとジゼが苦笑いして見せると、
「……残念ながら飲んでない」
「艦内ルールで、俺らまだ未成年扱い。飲酒禁止なんだとぉ」
「アハハハハ。この雰囲気で、ソレは辛いなぁ」
「「だろう?」」
ため息吐き、
「で、そのダニエルは?」
二人は無言でとある一団を指差した。
ダニエルを中央に据え、取り囲む様に座る女性クルー達。
まるでハーレム状態である。
「「性格が歪んでるアイツの、何がそんなに良いのかねぇ~」」
嫉み交じりに二人が呟くと、
「顔だろ?」
「「キィーーーッ!」」
二人は金切り声を上げ、
「良いよなぁ~彼女持ちはよぉ~」
「余裕を感じるよなぁ~」
「「彼女?」」
思わず顔を見合わせるヤマトとジゼ。
途端に真っ赤な顔になり、
「ち、違うってぇ! ジゼとは、その、か、家族であってぇ!」
「そっ、そうよ! ヤマトとはそんな関係じゃないんだからぁ!」
「「ハイハイさいですかぁ、ご馳走様。ケェ!」」
マシューとルークが辟易した顔をした途端、
「いい加減にしてぇ!」
ガシャーーーン!
ソフィアの激昂した叫びと共にグラスの割れる音が鳴り響き、会場内が一瞬にして静まり返った。
ブリーフィングでダニエルに悪態を吐いた手前、真意は別としても座りが悪かったのである。
しかし、そんなヤマトに声を掛けたのは、意外にもダニエルであった。
操船しながらチラリとヤマトを見て、フッと小さく笑うと、
「ヤマトぉ!」
「?」
「初任務お疲れ様ぁ!」
その裏表を感じさせない笑顔にヤマトは戸惑い、
「え? いや……サンキュ……それと……」
「僕の実力を図りかねて、安全パイを取ったんだろ?」
「……き、傷つける様な言い方して……その……すまなかった……」
見透かされていた事に、照れ臭そうに横を向くと、ニヤつくマシューとルークが両サイドから挟む様に座り、
「なんでぇなんでぇ、不器用さんてかぁ?」
「背中で語りますってかぁ?」
「ぶ、不器用で悪かったなぁ」
憤慨するヤマトに、
「「「ぜぇ~んぜん!」」」
笑顔を見せるマシュー、ルーク、そしてダニエル。
四人の若者の姿に、艦長は帽子の下で小さく笑い、
「さぁ! 我等が家に帰ろう!」
次第に近づく、船体を夕陽に赤く染める戦艦ガルシアを見つめた。
抜錨した戦艦ガルシアは台湾沖合を離れて安全海域まで移動し、その日の夜は大口依頼成功と、新規加入の「ヤマトとジゼ」を祝して、盛大な飲み会が催された。
当直には時間交替制で我慢してもらいつつ、以外の全クルーが後部格納庫に集合。
幾つもの長テーブルの上には料理に飲み物、アルコール類もズラリと並び、艦長の気の利かせた短い乾杯の音頭の後、宴は前のめりの大盛り上がりで始まった。
洋上のど真ん中、近所迷惑など気にする必要もなく、飲んで叫んで喚いて、会場内はお祭り騒ぎ。
主賓席にはヤマトとジゼが、パーティー用の三角帽子を被らされ、ちょこんと座る。
初めて見る、大人数の大人達の羽目を外した大騒ぎ。
陽気に飲んで、歌って、笑うガルシアクルー達を二人は見つめ、
「うまく言えないけど……なんか楽しいねぇ」
「だな。こう言うのを「仲間」って言うのかもな。兵役に就いていた時にも、作戦ごとに「仲間」は居たけど、殺伐として……あの時は違うんだなぁ」
笑い合っていると、ほろ酔いのマシューとルークが近づいて来て、
「んだぁ~オマエ等も、ダニエルと同類かぁ~」
「このリア充どもがぁ~!」
「二人とも酔ってんのかぁ?」
ヤマトとジゼが苦笑いして見せると、
「……残念ながら飲んでない」
「艦内ルールで、俺らまだ未成年扱い。飲酒禁止なんだとぉ」
「アハハハハ。この雰囲気で、ソレは辛いなぁ」
「「だろう?」」
ため息吐き、
「で、そのダニエルは?」
二人は無言でとある一団を指差した。
ダニエルを中央に据え、取り囲む様に座る女性クルー達。
まるでハーレム状態である。
「「性格が歪んでるアイツの、何がそんなに良いのかねぇ~」」
嫉み交じりに二人が呟くと、
「顔だろ?」
「「キィーーーッ!」」
二人は金切り声を上げ、
「良いよなぁ~彼女持ちはよぉ~」
「余裕を感じるよなぁ~」
「「彼女?」」
思わず顔を見合わせるヤマトとジゼ。
途端に真っ赤な顔になり、
「ち、違うってぇ! ジゼとは、その、か、家族であってぇ!」
「そっ、そうよ! ヤマトとはそんな関係じゃないんだからぁ!」
「「ハイハイさいですかぁ、ご馳走様。ケェ!」」
マシューとルークが辟易した顔をした途端、
「いい加減にしてぇ!」
ガシャーーーン!
ソフィアの激昂した叫びと共にグラスの割れる音が鳴り響き、会場内が一瞬にして静まり返った。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
ダンジョンが出現して世界が変わっても、俺は準備万端で世界を生き抜く
ごま塩風味
ファンタジー
人間不信になり。
人里離れた温泉旅館を買い取り。
宝くじで当たったお金でスローライフを送るつもりがダンジョンを見付けてしまう、しかし主人公はしらなかった。
世界中にダンジョンが出現して要る事を、そして近いうちに世界がモンスターで溢れる事を、しかし主人公は知ってしまった。
だが主人公はボッチで誰にも告げず。
主人公は一人でサバイバルをしようと決意する中、人と出会い。
宝くじのお金を使い着々と準備をしていく。
主人公は生き残れるのか。
主人公は誰も助け無いのか。世界がモンスターで溢れる世界はどうなるのか。
タイトルを変更しました
異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)
朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。
「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」
生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。
十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。
そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。
魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。
※『小説家になろう』でも掲載しています。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
sweet!!
仔犬
BL
バイトに趣味と毎日を楽しく過ごしすぎてる3人が超絶美形不良に溺愛されるお話です。
「バイトが楽しすぎる……」
「唯のせいで羞恥心がなくなっちゃって」
「……いや、俺が媚び売れるとでも思ってんの?」
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる