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2.邂逅と別れの章-12
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その頃島では、先行して上陸した偵察部隊とヤマトが交戦していた。
しかしその一方的な戦闘は、交戦と呼ぶには不適切な表現なのかも知れない。
最新鋭の装備を携えた兵士達が暗い森の中、一人また一人と命を落として逝く。
その様子を、島中に設置された監視カメラから、地下三階オペレーションルームでモニタ越しに見つめるジェイソンとジゼ。
ジゼは初めて目の当たりにするヤマトの本気モードの戦闘力の高さに驚きを隠せず、ジェイソンは徐々に戦場にいた頃に戻って行く ヤマトの姿に、言葉を失っていた。
「あのバカ! 俺達を守る事ばかり考えて「人として生きろ」とエマに言われた事を忘れてやがる!」
「ヤマト……」
モニタを不安気に見つめるジゼは意を決し、
「ジェイパパ! 私、行かなきゃ!」
「ジゼちゃん頼む! あのバカを正気に戻して来てくれ!」
ジゼは頷くと、オペレーションルームから急ぎ駆け出して行った。
その頃ヤマトは、偵察部隊最後の兵士に、手が届く距離まで迫りつつあった。
兵士はショットガンを向けつつも完全に戦意を失い、怯えた表情で後退る。
一歩、また一歩近づく、人とは思えないほどの冷酷な目を向けるヤマトに、異形の者に心臓を握られているかの様な思いに囚われ、冷たい汗を流し、向ける銃口と両足はガタガタと震えていた。
無言でゆっくり、顔の前でアーミーナイフを構えるヤマト。
ギラつく目と刃先を兵士に向け、怯える兵士が自らの死は不可避であると悟った瞬間、
「ダメェーーーッ!」
ジゼの叫びに、
「ひぃ!」
兵士は条件反射的に銃口をジゼに向け、
ドンッ!
暗い森に銃声が轟いた。
フラフラと揺れ、バタリと前のめりに倒れるヤマト。
ジゼをかばう為に射線上に飛び出し、直径約一センチの弾丸を一度に十数発発射するショットガンの弾丸を、近距離で全弾腹部に受けたのである。
「ヤマトォーーーーーーッ!」
悲痛な叫びを上げ走って来るジゼを横目に、未だ距離ある兵士は狂気の笑みを浮かべて、ヤマトの頭部に銃口を向けた。
しかしショットガンは「ジャム(排莢詰まり)」を起こして、発砲出来ず、
「く、くっ、クソォ!」
ショットガンを投げ捨て、慌ててハンドガンをホルスターから引き抜いたが、圧倒的優位にもかかわらず、兵士は発狂しそうな表情で後退り。
「はひゃ、はひゃひゃひゃ……」
即死である筈のヤマトが、腹部から多量の血をダラダラ垂らしながら起き上がって来たのである。その姿は、さながらゾンビ映画。
「ば、ばぁ、ばっ、バケモノォおォぉおォ、はひぃーーーーーー!」
ハンドガンを放り投げ、言葉にならない絶叫を上げつつ浜辺へ逃げ去って行った。
兵士の姿が視界から完全に消えた途端、バタリと再び倒れるヤマト。
「ヤマトーーーッ!」
今にも泣き出しそうな顔で駆け寄るジゼ。
その頃浜辺では、誤報と知らず出撃した海兵本隊が次々と上陸を果たし、次なる作戦準備へと取り掛かっていた。
するとそこへ、
「ひぃやぁぁあぁふぁあぁぁああぁぁあぁぁ!」
ヤマトから逃げた兵士が、悪魔から逃げて来たかのような半狂乱の形相で、転がる様に走って来た。
先発隊の一人と分かるや否や、隊長と思しき人物が取り押さえ、
「どうした!? 何があった! 他の者はどうした!」
両肩を掴んで揺すり叫ぶも、
「ぎゃひゃ! ゆひゃわぁ! のわぁあぁぁあぁ!」
錯乱状態で喚き暴れ続け、要領を得ない。
怒れる隊長は奥歯をギリッと噛み締め、
「貴様も海兵の一兵卒であろォ! 歯を食いしばれぇーーーッ!」
バァバキィーーーッ!
殴り飛ばし、兵士は砂浜に転がった。
「……ちゅ……中尉殿ぉ……」
正気は取り戻すも、怯えた表情で縮こまる。
「何があった! 貴様一人かァ!」
「ちゅ、中尉……」
「何かァ!」
「あ……あれは化物です……少年兵のなりをしていましたが……ぶ、部隊は全滅です……」
「何、だぁと!?」
驚愕する隊長と、にわかに信じ難い話にザワつ海兵達。
中尉は頭を抱える兵士の顔を、無理矢理自分の方に向かせ、
「何人だァ!」
「ひぃ……!」
「ひぃ?」
「一人です!」
「少年兵一人だとォ!?」
激高すると、待機状態の海兵達の一部から、
「待て貴様どこへ行く! 作戦行動中だぞォ!」
怒声が上がり、一斉に振り向いた。
海兵の一人が、単独行動で森へ入って行こうとしていたのである。
しかし呼び止められ、顔だけ振り返ると、
「うっせぇ~よ。黙れ、カスッ!」
「きぃ、貴様ァ! 上官に向かってぇ!」
怒りを露わにする少尉の肩に、中尉は「落ち着け」と言わんばかりに手を置き、
「貴様……何者だ」
口調は静かであるものの、強い眼光を以て睨むと、海兵達は中尉を守る様に一斉に銃口を向けた。
緊張感漂う中、謎の海兵はヘルメットで表情こそ見えないが、呆れた様なジェスチャーを見せ、
「ケッ。船賃代わりに生かしてやったのに……オマエ等から先に逝っとくかぁ~?」
どこから来る余裕なのか、逃げる素振りも見せない。
すると突如、
ザザバァーーーッ!
闇夜の波間から全高三メートルはあろうか、人型のロボットが次々と姿を現した。
しかしその一方的な戦闘は、交戦と呼ぶには不適切な表現なのかも知れない。
最新鋭の装備を携えた兵士達が暗い森の中、一人また一人と命を落として逝く。
その様子を、島中に設置された監視カメラから、地下三階オペレーションルームでモニタ越しに見つめるジェイソンとジゼ。
ジゼは初めて目の当たりにするヤマトの本気モードの戦闘力の高さに驚きを隠せず、ジェイソンは徐々に戦場にいた頃に戻って行く ヤマトの姿に、言葉を失っていた。
「あのバカ! 俺達を守る事ばかり考えて「人として生きろ」とエマに言われた事を忘れてやがる!」
「ヤマト……」
モニタを不安気に見つめるジゼは意を決し、
「ジェイパパ! 私、行かなきゃ!」
「ジゼちゃん頼む! あのバカを正気に戻して来てくれ!」
ジゼは頷くと、オペレーションルームから急ぎ駆け出して行った。
その頃ヤマトは、偵察部隊最後の兵士に、手が届く距離まで迫りつつあった。
兵士はショットガンを向けつつも完全に戦意を失い、怯えた表情で後退る。
一歩、また一歩近づく、人とは思えないほどの冷酷な目を向けるヤマトに、異形の者に心臓を握られているかの様な思いに囚われ、冷たい汗を流し、向ける銃口と両足はガタガタと震えていた。
無言でゆっくり、顔の前でアーミーナイフを構えるヤマト。
ギラつく目と刃先を兵士に向け、怯える兵士が自らの死は不可避であると悟った瞬間、
「ダメェーーーッ!」
ジゼの叫びに、
「ひぃ!」
兵士は条件反射的に銃口をジゼに向け、
ドンッ!
暗い森に銃声が轟いた。
フラフラと揺れ、バタリと前のめりに倒れるヤマト。
ジゼをかばう為に射線上に飛び出し、直径約一センチの弾丸を一度に十数発発射するショットガンの弾丸を、近距離で全弾腹部に受けたのである。
「ヤマトォーーーーーーッ!」
悲痛な叫びを上げ走って来るジゼを横目に、未だ距離ある兵士は狂気の笑みを浮かべて、ヤマトの頭部に銃口を向けた。
しかしショットガンは「ジャム(排莢詰まり)」を起こして、発砲出来ず、
「く、くっ、クソォ!」
ショットガンを投げ捨て、慌ててハンドガンをホルスターから引き抜いたが、圧倒的優位にもかかわらず、兵士は発狂しそうな表情で後退り。
「はひゃ、はひゃひゃひゃ……」
即死である筈のヤマトが、腹部から多量の血をダラダラ垂らしながら起き上がって来たのである。その姿は、さながらゾンビ映画。
「ば、ばぁ、ばっ、バケモノォおォぉおォ、はひぃーーーーーー!」
ハンドガンを放り投げ、言葉にならない絶叫を上げつつ浜辺へ逃げ去って行った。
兵士の姿が視界から完全に消えた途端、バタリと再び倒れるヤマト。
「ヤマトーーーッ!」
今にも泣き出しそうな顔で駆け寄るジゼ。
その頃浜辺では、誤報と知らず出撃した海兵本隊が次々と上陸を果たし、次なる作戦準備へと取り掛かっていた。
するとそこへ、
「ひぃやぁぁあぁふぁあぁぁああぁぁあぁぁ!」
ヤマトから逃げた兵士が、悪魔から逃げて来たかのような半狂乱の形相で、転がる様に走って来た。
先発隊の一人と分かるや否や、隊長と思しき人物が取り押さえ、
「どうした!? 何があった! 他の者はどうした!」
両肩を掴んで揺すり叫ぶも、
「ぎゃひゃ! ゆひゃわぁ! のわぁあぁぁあぁ!」
錯乱状態で喚き暴れ続け、要領を得ない。
怒れる隊長は奥歯をギリッと噛み締め、
「貴様も海兵の一兵卒であろォ! 歯を食いしばれぇーーーッ!」
バァバキィーーーッ!
殴り飛ばし、兵士は砂浜に転がった。
「……ちゅ……中尉殿ぉ……」
正気は取り戻すも、怯えた表情で縮こまる。
「何があった! 貴様一人かァ!」
「ちゅ、中尉……」
「何かァ!」
「あ……あれは化物です……少年兵のなりをしていましたが……ぶ、部隊は全滅です……」
「何、だぁと!?」
驚愕する隊長と、にわかに信じ難い話にザワつ海兵達。
中尉は頭を抱える兵士の顔を、無理矢理自分の方に向かせ、
「何人だァ!」
「ひぃ……!」
「ひぃ?」
「一人です!」
「少年兵一人だとォ!?」
激高すると、待機状態の海兵達の一部から、
「待て貴様どこへ行く! 作戦行動中だぞォ!」
怒声が上がり、一斉に振り向いた。
海兵の一人が、単独行動で森へ入って行こうとしていたのである。
しかし呼び止められ、顔だけ振り返ると、
「うっせぇ~よ。黙れ、カスッ!」
「きぃ、貴様ァ! 上官に向かってぇ!」
怒りを露わにする少尉の肩に、中尉は「落ち着け」と言わんばかりに手を置き、
「貴様……何者だ」
口調は静かであるものの、強い眼光を以て睨むと、海兵達は中尉を守る様に一斉に銃口を向けた。
緊張感漂う中、謎の海兵はヘルメットで表情こそ見えないが、呆れた様なジェスチャーを見せ、
「ケッ。船賃代わりに生かしてやったのに……オマエ等から先に逝っとくかぁ~?」
どこから来る余裕なのか、逃げる素振りも見せない。
すると突如、
ザザバァーーーッ!
闇夜の波間から全高三メートルはあろうか、人型のロボットが次々と姿を現した。
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