75 / 88
続章_73
しおりを挟む
ハヤテは小さなため息を吐くと、右掌をスッと差出し、
「黄先生、ボタンを貸して下さい」
「ダメだ東! オマエまで危険な目に、」
強く拒否する黄の言葉尻をハヤテは喰い気味に、
「ツバサはァ! サクラはァ! いつまで姿の見えない犯罪者の目に怯えて暮らさないといけないんスかぁ!」
「そ、それは……」
「先生を責めてる訳じゃないです。ただ俺は……」
ハヤテはサクラを見つめ、
「サクラとツバサの手で、犯人を捕まえさせてやりたいと思ってます」
「なっ!?」
「ハーくん! ボクもそれには同意出来ないよ! あまりに危険すぎるよ!」
ギョッとした顔で驚く黄と、慌てて話に割って入るヒカリ。
ハヤテは食い下がる二人をジェスチャーで制した上で、
「サクラ、オマエはどう思う?」
「わ、私は……」
(そんな大それた事が、私なんかに出来るの……?)
答えに躊躇していると、仕切りのカーテンが「ジャ!」っと勢い良く開き、
「私はやりたいでありまぁす!」
ツバサの両目は決意の固さを物語るように、真っ直ぐ向けられていた。
「ま、待て待てぇ山形! 事は単純な話では、」
困惑した表情で慌てる黄に、サクラも追い打ちをかける様に、
「私もやります!」
(そうだよね、ツバサちゃん! 私達このままじゃ一生影に怯えて暮らす事になって、自分の足で一歩も前に進めない!)
「「…………」」
困惑した顔を見合わせる黄とヒカリ。
「分かった。アタシの方でも全力でサポートしてやるよ」
「先生はこう言ってくれてるけど、無茶はダメなんだからねぇ!」
二人の心配をよそに、サクラとツバサは笑顔を向け合い、ハヤテと頷き合った。
おもむろに、机の引き出しの中からボタンの入った小さなビニール袋を出す黄。
「いいかい東。何度も言うがねぇ、目先の情報に囚われるんじゃないよ。真実ってのは、その奥に隠れてるんだからねぇ」
自身の肝に銘じる様に、静かに頷くハヤテ。
ボタンに意識を集中し、
「さぁ、教えてくれ。オマエの主の事を……」
固唾を呑み、事の成り行きを見つめるヒカリ達。
するとボタンと会話したハヤテの口から、
「男!」
「「「「!」」」」
とある人物に向けられていた疑念は、確信へと変わって行った。
「黄先生、ボタンを貸して下さい」
「ダメだ東! オマエまで危険な目に、」
強く拒否する黄の言葉尻をハヤテは喰い気味に、
「ツバサはァ! サクラはァ! いつまで姿の見えない犯罪者の目に怯えて暮らさないといけないんスかぁ!」
「そ、それは……」
「先生を責めてる訳じゃないです。ただ俺は……」
ハヤテはサクラを見つめ、
「サクラとツバサの手で、犯人を捕まえさせてやりたいと思ってます」
「なっ!?」
「ハーくん! ボクもそれには同意出来ないよ! あまりに危険すぎるよ!」
ギョッとした顔で驚く黄と、慌てて話に割って入るヒカリ。
ハヤテは食い下がる二人をジェスチャーで制した上で、
「サクラ、オマエはどう思う?」
「わ、私は……」
(そんな大それた事が、私なんかに出来るの……?)
答えに躊躇していると、仕切りのカーテンが「ジャ!」っと勢い良く開き、
「私はやりたいでありまぁす!」
ツバサの両目は決意の固さを物語るように、真っ直ぐ向けられていた。
「ま、待て待てぇ山形! 事は単純な話では、」
困惑した表情で慌てる黄に、サクラも追い打ちをかける様に、
「私もやります!」
(そうだよね、ツバサちゃん! 私達このままじゃ一生影に怯えて暮らす事になって、自分の足で一歩も前に進めない!)
「「…………」」
困惑した顔を見合わせる黄とヒカリ。
「分かった。アタシの方でも全力でサポートしてやるよ」
「先生はこう言ってくれてるけど、無茶はダメなんだからねぇ!」
二人の心配をよそに、サクラとツバサは笑顔を向け合い、ハヤテと頷き合った。
おもむろに、机の引き出しの中からボタンの入った小さなビニール袋を出す黄。
「いいかい東。何度も言うがねぇ、目先の情報に囚われるんじゃないよ。真実ってのは、その奥に隠れてるんだからねぇ」
自身の肝に銘じる様に、静かに頷くハヤテ。
ボタンに意識を集中し、
「さぁ、教えてくれ。オマエの主の事を……」
固唾を呑み、事の成り行きを見つめるヒカリ達。
するとボタンと会話したハヤテの口から、
「男!」
「「「「!」」」」
とある人物に向けられていた疑念は、確信へと変わって行った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
四季を彩るアルビノへ
夜月 真
恋愛
「なあ、アルビノって知ってる?」
「あー、身体が真っ白なんだっけ?」
「そうそう、最近この辺にアルビノがいるらしいぜ」
「何のアルビノ?」
「それが、わからないんだよ。噂で広まっただけだからそこまでは確認できてないんだ。……もし人間だったら、お前どうする?」
大学の広い講義室で、後ろの席に座る名前も知らない男子ふたりの会話が耳に着く。他人の話を盗み聞きするのは趣味じゃないが、授業を聞くよりかはまだ面白味があった。
バイトは辞めた。辞めさせてもらいます、と突然に僕が言うものだから、店長は酷く驚いていた。辞めた理由は酷く単純で、ただ他人の日用品や食料に音を鳴らしてお金を貰うだけの作業に窮屈さを感じていた。そしてもう一つ、このバイトをしていると目が渇き、痛むのだ。仕事中は忙しいと目薬を注すことができず、耐えるしかない。
週末には眼科に向かい、ドライアイ用の目薬を購入する。この費用だって、意外と嵩んでくる。しばらくの間は、親からの仕送りに頼るしかない。運の良いことに僕は大学デビューに失敗し、友達もいないから人付き合いなどによる出費はなかった。
暇つぶしに始めてみた読書も長くは続かなかった。昔はよく読んでいたのに、いつからか本も苦手になっていた。数日前に本屋で購入した数冊の小説や辞典、自己啓発本は今となってはどこに仕舞ったのかも忘れてしまった。
このまま何の楽しいことも起きず、それなりの成績で、何となく就活をして、卒業式にも出るか悩んだまま大学生活を終えるのだろう。終わりというのは、いつも唐突だとわかっているにも関わらず。
※小説家になろう、魔法のiらんど、エブリスタ、カクヨムにて重複投稿
ダッシュの果て、君と歩める世界は
粟生深泥
ライト文芸
町に伝わる“呪い”により祖父と父を亡くした宮入翔太は、高校二年生の春、「タイムマシンは信じるか」と問いかけてきた転入生の神崎香子と知り合う。その日の放課後、翔太の祖母から町に伝わる呪いのことを聞いた香子は、父と祖父の為に呪いの原因を探る翔太に協力することを約束する。週末、翔太の幼なじみの時乃を交えた三人は、雨の日に登ると呪いにかかるという深安山に向かい、翔太と時乃の話を聞きながら山頂で香子は試料を採取する。
それから一週間後、部活に入りたいと言い出した香子とともにオーパーツ研究会を訪れた翔太は、タイムトラベルについて調べている筑後と出会う。タイムトラベルに懐疑的な翔太だったが、筑後と意気投合した香子に巻き込まれるようにオーパーツ研究会に入部する。ゴールデンウィークに入ると、オーパーツ研究会の三人はタイムトラベルの逸話の残る坂巻山にフィールドワークに向かう。翔太にタイムトラベルの証拠を見せるために奥へと進もうとする筑後だったが、鉄砲水が迫っていると香子から告げられたことから引き返す。その後、香子の言葉通り鉄砲水が山中を襲う。何故分かったか問われた香子は「未来のお告げ」と笑った。
六月、時乃が一人で深安山に試料を採りに向かう途中で雨が降り始める。呪いを危惧した翔太が向かうと、時乃は既に呪いが発症していた。その直後にやってきた香子により時乃の呪いの症状は治まった。しかしその二週間後、香子に呪いが発症する。病院に運ばれた香子は、翔太に対し自分が未来の翔太から頼まれて時乃を助けに来たことを告げる。呪いは深安山に伝わる風土病であり、元の世界では呪いにより昏睡状態に陥った時乃を救うため、翔太と香子はタイムトラベルの手法を研究していた。時乃を救った代償のように呪いを発症した香子を救う手立てはなく、翌朝、昏睡状態になった香子を救うため、翔太は呪いとタイムトラベルの研究を進めることを誓う。
香子が昏睡状態に陥ってから二十年後、時乃や筑後とともに研究を進めてきた翔太は、時乃が深安山に試料を採りに行った日から未来を変えるためにタイムトラベルに挑む。タイムトラベルに成功した翔太だったが、到達したのは香子が倒れた日の夜だった。タイムリミットが迫る中、翔太は学校に向かい、筑後に協力してもらいながら特効薬を作り出す。間一髪、特効薬を香子に投与し、翌朝、香子は目を覚ます。お互いの為に自分の世界を越えてきた二人は、なんてことの無い明日を約束する。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
never coming morning
高山小石
ライト文芸
架空の未来史をいろんな立場の人からの目線で書いた愛憎です。
西暦二〇一二年、第三次世界大戦が終わってまもなく始まった第四次世界大戦を見かねた宇宙人によって、地球は平定された。宇宙保護区域に指定された地球で暮らす人々の仕事は、文化を保護しつつ生きること。
国がなくなっても発展するようにと北半球と南半球にわけられた地球に、二十一世紀初頭、天才が現れた。
姿も歳も公にされない天才科学者ユークリッドはユーリの愛称で親しまれ、地球のアイドル的存在だった。
そんなユーリにあこがれる少年クリオネの元に、『ノースに天才がいる』と情報が入る。噂では、ユーリはサウスにいるはずなのだが、それでもクリオネは会いたい一心で双子の妹リマキナと一緒にノースに向かった。
そこで待っていたのは、ジーニィと呼ばれる天才少年だった。ジーニィはクリオネにユーリを紹介し、一緒に研究をしようと持ちかける。研究室には他にジーニィの双子の妹アンジュ、Y博士の腹心マリアがいた。マリアの仕事に巻き込まれるうちに、クリオネは知識を身につけていく。
名前が強いアテーシア
桃井すもも
恋愛
自邸の図書室で物語を読んでいたアテーシアは、至極納得がいってしまった。
道理で上手く行かなかった訳だ。仲良くなれなかった訳だ。
だって名前が強いもの。
アテーシア。これって神話に出てくる戦女神のアテーナだわ。
かち割られた父王の頭から甲冑纏って生まれ出た、女軍神アテーナだわ。
公爵令嬢アテーシアは、王国の王太子であるアンドリュー殿下の婚約者である。
十歳で婚約が結ばれて、二人は初見から上手く行かなかった。関係が発展せぬまま六年が経って、いよいよ二人は貴族学園に入学する。
アテーシアは思う。このまま進んで良いのだろうか。
女軍神の名を持つ名前が強いアテーシアの物語。
❇R15短編スタートです。長編なるかもしれません。R18なるかは微妙です。
❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りしておりますが、皆様別人でございます。
❇相変わらずの100%妄想の産物です。史実とは異なっております。
❇外道要素を含みます。苦手な方はお逃げ下さい。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」。
❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく公開後から激しい微修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。
社畜がひとり美女に囲まれなぜか戦場に~ヘタレの望まぬ成り上がり~
のらしろ
ライト文芸
都内のメーカーに勤務する蒼草秀長が、台風が接近する悪天候の中、お客様のいる北海道に出張することになった。
移動中の飛行機において、日頃の疲れから睡魔に襲われ爆睡し、次に気がついたときには、前線に向かう輸送機の中だった。
そこは、半世紀に渡り2つの大国が戦争を続けている異世界に直前に亡くなったボイラー修理工のグラスに魂だけが転移した。
グラスは周りから『ノラシロ』少尉と揶揄される、不出来な士官として前線に送られる途中だった。
蒼草秀長自身も魂の転移した先のグラスも共に争いごとが大嫌いな、しかも、血を見るのが嫌いというか、血を見て冷静でいられないおおよそ軍人の適正を全く欠いた人間であり、一人の士官として一人の軍人として、この厳しい世界で生きていけるのか甚だ疑問だ。
彼を乗せた輸送機が敵側兵士も多数いるジャングルで墜落する。
平和な日本から戦国さながらの厳しいこの異世界で、ノラシロ少尉ことヘタレ代表の蒼草秀長改めグラスが、はみ出しものの仲間とともに仕出かす騒動数々。
果たして彼は、過酷なこの異世界で生きていけるのだろか
主人公が、敵味方を問わず、殺さずに戦争をしていく残酷シーンの少ない戦記物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる