上 下
60 / 88

続章_58

しおりを挟む
 ハヤテ達の通うこの学校のブレザーのボタンは、特徴的なグラデーション模様になっているだけでなく、男子は四つ穴、女子は三つ穴のボタンを使用していた。
 動きの活発な男子に合わせ、ボタンを取れにくくする配慮からである。
 黄を襲った人物の着ていた制服に四つ穴ボタンが付いていたと言う事は、犯人が、この学校の男子生徒である可能性が高い事を物語っていた。
「アタシの見立てじゃ、昨日の襲撃は恐らく「警告」だねぇ」
((((警告……?))))
「学校でのアタシはこんなナリ(ひがしアイ)だからねぇ、襲い易いと思ったんだろうさ。そして九山、この話は公になって無い話だけどねぇ、アンタのアパート周辺で、この学校の男子の制服を着た「小柄な生徒」が何度か目撃されていたそうだ」
 固唾をのむサクラ。
「黄先生、それってもしかして……」
「あぁ。放火がオマエ狙いだっとして、九山とアタシが共通して狙われる理由があるとしたら……」
((((写真部!))))
 四人の脳裏にとある人物が浮かんだが、黄はそれを察してすかさず、
「思い込みは止めなァ!」
((((!))))
「証拠はない。それにオマエ達、考えてもみなぁ。この学校のOBも含め、制服を持ってる小柄な男がいったい何人、何百、何千いると思う? オークションの横流しで制服を手に入れた者もいるかも知れないし、女の変装の可能性だってある」
「だったら俺がそのボタンと話をして、」
「お止め!」
 黄はボタンを素早く取り上げ引き出しの中へしまい、
「東、アンタが今までの事件で無事だったのは、たまたま運が良かっただけ。これからもそうとは限らないんだよ!」
「それは……」
「なぁに、襲撃は失敗したんだ。それにボタンも奪われ、敵はビクついて縮こまってるさぁ」
「「「「…………」」」」
「東に送り迎えさせるのは、あくまで保険さ。アタシの猫被りはバレた。そして九山と帰る東海林は合気道の段持ち。正体不明の襲撃者を懸念するなら武道や格闘技の心得が無く、一人で歩く時間の長い山形、オマエが一番狙われ易いからなのさぁ」
「はい……」
 先程までハヤテと一緒に帰れる事に上機嫌だったツバサの表情は一転。弱弱しい返事を返す唇は微かに震えていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タコヤキ

えんがわ
ライト文芸
タコヤキ、焼きたて。 どうか、冷めないで。

〜とあるBarでの物語〜

vato
ライト文芸
街中の路地にひっそりと佇むBarで繰り広げられる様々な人間模様をお楽しみください。

揺れる波紋

しらかわからし
ライト文芸
この小説は、高坂翔太が主人公で彼はバブル崩壊直後の1991年にレストランを開業し、20年の努力の末、ついに成功を手に入れます。しかし、2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故によって、経済環境が一変し、レストランの業績が悪化。2014年、創業から23年の55歳で法人解散を決断します。 店内がかつての賑わいを失い、従業員を一人ずつ減らす中、翔太は自身の夢と情熱が色褪せていくのを感じます。経営者としての苦悩が続き、最終的には建物と土地を手放す決断を下すまで追い込まれます。 さらに、同居の妻の母親の認知症での介護が重なり、心身共に限界に達した時、近所の若い弁護士夫婦との出会いが、レストランの終焉を迎えるきっかけとなります。翔太は自分の決断が正しかったのか悩みながらも、恩人であるホテルの社長の言葉に救われ、心の重荷が少しずつ軽くなります。 本作は、主人公の長年の夢と努力が崩壊する中でも、新たな道を模索し、問題山積な中を少しずつ幸福への道を歩んでいきたいという願望を元にほぼ自分史の物語です。

【完結】君と国境を越えて

朱村びすりん
ライト文芸
 イギリス人の両親を持つ高校一年生のイヴァン・ファーマーは、生まれは日本、育ちも日本、習慣や言語、そして心さえも「日本人」として生きてきた。  だがイヴァンは、見た目や国籍によって周囲の人々に「勘違い」をされてしまうことが多々ある。  自らの人種と心のギャップに幼い頃から疑問を持ち続けていた。  そんなある日、イヴァンの悩みを理解してくれる人物が現れた。  彼が働くバイト先のマニーカフェに、お客さんとして来店してきた玉木サエ。  イヴァンが悩みを打ち明けると、何事にも冷静沈着な彼女は淡々とこう答えるのだ。 「あなたはどこにでもいる普通の男子高校生よ」  イヴァンにとって初めて、出会ったときから自分を「自分」として認めてくれる相手だった。進路についても、深く話を聞いてくれる彼女にイヴァンは心を救われる。  だが彼女の後ろ姿は、いつも切なさや寂しさが醸し出されている。  彼女は他人には言えない、悩みを抱えているようで……  自身のアイデンティティに悩む少年少女の苦悩や迷い、その中で芽生える特別な想いを描いたヒューマンストーリー。 ◆素敵な表紙絵はみつ葉さま(@mitsuba0605 )に依頼して描いていただきました!

葛城依代の夏休み日記~我が家に野良猫がきました~

白水緑
ライト文芸
一人ぼっちの夏休みを過ごす依代は、道端で自称捨て猫を拾った。 二人は楽しい共同生活を送るが、それはあっという間に終わりを告げる。 ――ひと夏の、儚い思い出。

時のコカリナ

遊馬友仁
ライト文芸
高校二年生の坂井夏生は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

ゴールドレイン

小夏 つきひ
恋愛
母の死から6年、父と2人で暮らす原 拓人の生活は変わり始める。暗闇を彷徨うような日々のなか、唯一安らぎを与えてくれたのは移り住んだ田舎町で出会った同級生の咲(さき)だった。成人し東京でカメラマンになった拓人はモデルの瑠香(るか)と交際するもすぐに破局を迎える。咲の存在によって穏やかな日々を取り戻したように思えたが、忍び寄る何者かが2人を闇へと追い込んでいく…… 

拝啓、貴方様へ

木野 章
ライト文芸
遺書とは、この世から解き放たれたかった人の最後の記録だ。 感謝、怨念、憎悪…当事者にしか分からない未知の感情が、そこには記されている。 もし、その遺書が、まるで伝言ノートのように次から次へと渡っていったら、いったいどんな遺書が出来上がるのだろう? これは、その伝言ノートが引き起こした一つの物語

処理中です...