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続章_14
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教室に入ると、既にサクラの席に二つの机が付けて並べられ、一つの席にはハヤテが座って居た。
「無理矢理連れて来たんじゃないだろうなぁ?」
怪訝な表情を見せるハヤテに、どのロが言うのか、
「イヤだなぁ~。ボクがそんな事する筈ないじゃないかぁ~。ねぇ、サクラちゃん♪」
もはや外堀は埋められ、逃げ場無し。
「う、うん……」
(もう、好きにしてぇ)
曖昧な返事を返すと、ハヤテが困惑顔で、
「嫌だったら、正直に「イヤ」って言って良んだからな。ヒカリはハッキリ言わないと理解出来ないヤツなんだからな」
「なんだいハーくん、それじゃボクがお馬鹿みたいじゃないかぁ」
「ハーくん、言うな。言うなと言ってもコレだろぅ」
「ニヒヒヒ」
二人のやり取りに、サクラは小さなため息を吐き、
(そこまでイヤじゃないわよ……二人きりで食べたいなら、そう言えば良いのに)
妙な反発心が顔を覗かせるが、ハヤテの発する言葉の色見て、
(違う……この人はそんな人じゃなかった……本当に私なんかの事を、気に掛けてくれてる……)
サクラは人知れず反省すると、微かな笑みをハヤテに向け、
「うん、そうする」
「えぇ~サクラちゃんまで、ひっどぉ~い!」
「ふふふ」
小さく笑い、膨れっ面したヒカリと共に着席するサクラであったが、ふとハヤテの弁当が目に入った。
「東くんのお弁当、家庭的でおいしそうだね。やっぱり、お母さんのお手製?」
「ハヤテで良いって。まぁ、んな感じか」
笑って見せるハヤテであったが、言葉の色に微かなウソと、寂しさの色が滲み、
(どうして……)
思わずハヤテを見つめていると、ヒカリが人差し指を立て、ハヤテに違う違うと振って見せ、
「ハーくんは、ダメだなぁ~」
「はぁ? 何がだよ」
「サクラちゃんが困惑してるでしょ。サクラちゃんに「ウソと隠し事」は通用しないよ。まぁ、妻であるボクにもだけどねぇ」
ケラケラと笑って見せた。
ハッとするハヤテ。
バツが悪そうに頭を掻き、
「ワリィ、サクラ。ヘンに気を遣わせない様にと思って……逆に気を遣わせちまったなぁ」
小さく笑い、
「お世話になってる遠縁のおばさんの手製だよ。俺には両親がいないんだ」
「えぇ!? ご、ごめんなさいハヤテくん! わ、私、無神経に……」
「気にすんなよ。今の俺にとってはおじさんと、おばさんが両親なのは間違いないし、実の息子みたいに大事にしてもらってるからさぁ」
そう言いきるハヤテの言葉の色に、いっさいの濁りは見られなかった。
「ニヒヒヒッ。ハーくん、それをおばさん達に言ってあげなよ、二人とも喜こぶよぉ~」
「んなハズイまね出来るかぁ!」
「ハーくんの御両親もステキな人だったけど、おじさんとおばさんも、とぉ~てもステキな人なんだよぉ~!」
「お前は毎度毎度、よく恥ずかし気も無くそう言う事が言えるなぁ」
「何言ってるんだい「ハーくん」さんや、感謝は口にしてこそナンボのモンだよぉ」
「ほほう、よく言った。なら、お前もオヤジさんに言うんだなぁ?」
「げぇ! え、えぇ~そ、それはちょっとぉ……」
「おやぁ~? さっきと話が違うんじゃないのかぁ~?」
「むぅ~~~」
思わずうなるヒカリを、サクラはクスリと笑い、
「ヒカリちゃんのお弁当は、豪華って言う訳じゃないけど……栄養のバランスだけじゃなくて、うまく言えないけど……細やかな気遣いを感んじるお弁当だね」
「ありがとう。作ってくれたかなえさん達に、伝えておくよ!」
「「かなえさん」って?」
「ウチのメイドさんだよ」
「め、メイドさぁん!?」
(ヒカリちゃんて、もしかして超お嬢様!?)
ギョっとした顔をすると、ハヤテがすかさずヒカリの後頭部に、パシッとツッコミ。
「痛っ! ちょっとハーくん、大事な妻に何をするんだよぉ~。デーブイだよデーブイ!」
「やかましい! 言い方に気を付けろよ。「メイド」なんて言うから、サクラが驚いてるだろ!」
ハヤテはフリーズしたままのサクラに、
「メイドじゃなくて「家政婦さん」な、家政婦さん。ヒカリは母親がいないから」
「そ、そう、なんだ……」
両親がおらず遠縁の下で暮らすハヤテと、母親がおらず身のまわりを家政婦に支えてもらうヒカリ。
二人のこれまでに様々な困難があった事は、自身も苦労を重ねたサクラにも容易に想像でき、困難に直面する度に支えあって来たであろう事に思いを馳せ、
「なんか……良いね、そう言う共有出来る大切な思い出……みたいの……。羨ましい」
笑顔の中に寂しさを滲ませると、
「これから作れるじゃない」
「え?」
鳩が豆鉄砲食った様なビックリ顔をするサクラに、
「ボク達と一緒にさ!」
すると言ったヒカリより、むしろ隣で聞いていたハヤテが恥ずかしそうな顔をし、
「ヒカリは毎度毎度よく……」
「だって本当の事じゃないか」
「そうかも知れないけどなぁ、もう少しオブラートに、」
二人が言い合いを始めると、サクラはクスリと笑い、
(ありがとう)
ポツリと小さく呟いた。
「「ん?」」
振り返るハヤテとヒカリ。
聞こえると思っていなかったサクラは慌て、
「は、早く食べよう! いただきまぁ~す!」
「無理矢理連れて来たんじゃないだろうなぁ?」
怪訝な表情を見せるハヤテに、どのロが言うのか、
「イヤだなぁ~。ボクがそんな事する筈ないじゃないかぁ~。ねぇ、サクラちゃん♪」
もはや外堀は埋められ、逃げ場無し。
「う、うん……」
(もう、好きにしてぇ)
曖昧な返事を返すと、ハヤテが困惑顔で、
「嫌だったら、正直に「イヤ」って言って良んだからな。ヒカリはハッキリ言わないと理解出来ないヤツなんだからな」
「なんだいハーくん、それじゃボクがお馬鹿みたいじゃないかぁ」
「ハーくん、言うな。言うなと言ってもコレだろぅ」
「ニヒヒヒ」
二人のやり取りに、サクラは小さなため息を吐き、
(そこまでイヤじゃないわよ……二人きりで食べたいなら、そう言えば良いのに)
妙な反発心が顔を覗かせるが、ハヤテの発する言葉の色見て、
(違う……この人はそんな人じゃなかった……本当に私なんかの事を、気に掛けてくれてる……)
サクラは人知れず反省すると、微かな笑みをハヤテに向け、
「うん、そうする」
「えぇ~サクラちゃんまで、ひっどぉ~い!」
「ふふふ」
小さく笑い、膨れっ面したヒカリと共に着席するサクラであったが、ふとハヤテの弁当が目に入った。
「東くんのお弁当、家庭的でおいしそうだね。やっぱり、お母さんのお手製?」
「ハヤテで良いって。まぁ、んな感じか」
笑って見せるハヤテであったが、言葉の色に微かなウソと、寂しさの色が滲み、
(どうして……)
思わずハヤテを見つめていると、ヒカリが人差し指を立て、ハヤテに違う違うと振って見せ、
「ハーくんは、ダメだなぁ~」
「はぁ? 何がだよ」
「サクラちゃんが困惑してるでしょ。サクラちゃんに「ウソと隠し事」は通用しないよ。まぁ、妻であるボクにもだけどねぇ」
ケラケラと笑って見せた。
ハッとするハヤテ。
バツが悪そうに頭を掻き、
「ワリィ、サクラ。ヘンに気を遣わせない様にと思って……逆に気を遣わせちまったなぁ」
小さく笑い、
「お世話になってる遠縁のおばさんの手製だよ。俺には両親がいないんだ」
「えぇ!? ご、ごめんなさいハヤテくん! わ、私、無神経に……」
「気にすんなよ。今の俺にとってはおじさんと、おばさんが両親なのは間違いないし、実の息子みたいに大事にしてもらってるからさぁ」
そう言いきるハヤテの言葉の色に、いっさいの濁りは見られなかった。
「ニヒヒヒッ。ハーくん、それをおばさん達に言ってあげなよ、二人とも喜こぶよぉ~」
「んなハズイまね出来るかぁ!」
「ハーくんの御両親もステキな人だったけど、おじさんとおばさんも、とぉ~てもステキな人なんだよぉ~!」
「お前は毎度毎度、よく恥ずかし気も無くそう言う事が言えるなぁ」
「何言ってるんだい「ハーくん」さんや、感謝は口にしてこそナンボのモンだよぉ」
「ほほう、よく言った。なら、お前もオヤジさんに言うんだなぁ?」
「げぇ! え、えぇ~そ、それはちょっとぉ……」
「おやぁ~? さっきと話が違うんじゃないのかぁ~?」
「むぅ~~~」
思わずうなるヒカリを、サクラはクスリと笑い、
「ヒカリちゃんのお弁当は、豪華って言う訳じゃないけど……栄養のバランスだけじゃなくて、うまく言えないけど……細やかな気遣いを感んじるお弁当だね」
「ありがとう。作ってくれたかなえさん達に、伝えておくよ!」
「「かなえさん」って?」
「ウチのメイドさんだよ」
「め、メイドさぁん!?」
(ヒカリちゃんて、もしかして超お嬢様!?)
ギョっとした顔をすると、ハヤテがすかさずヒカリの後頭部に、パシッとツッコミ。
「痛っ! ちょっとハーくん、大事な妻に何をするんだよぉ~。デーブイだよデーブイ!」
「やかましい! 言い方に気を付けろよ。「メイド」なんて言うから、サクラが驚いてるだろ!」
ハヤテはフリーズしたままのサクラに、
「メイドじゃなくて「家政婦さん」な、家政婦さん。ヒカリは母親がいないから」
「そ、そう、なんだ……」
両親がおらず遠縁の下で暮らすハヤテと、母親がおらず身のまわりを家政婦に支えてもらうヒカリ。
二人のこれまでに様々な困難があった事は、自身も苦労を重ねたサクラにも容易に想像でき、困難に直面する度に支えあって来たであろう事に思いを馳せ、
「なんか……良いね、そう言う共有出来る大切な思い出……みたいの……。羨ましい」
笑顔の中に寂しさを滲ませると、
「これから作れるじゃない」
「え?」
鳩が豆鉄砲食った様なビックリ顔をするサクラに、
「ボク達と一緒にさ!」
すると言ったヒカリより、むしろ隣で聞いていたハヤテが恥ずかしそうな顔をし、
「ヒカリは毎度毎度よく……」
「だって本当の事じゃないか」
「そうかも知れないけどなぁ、もう少しオブラートに、」
二人が言い合いを始めると、サクラはクスリと笑い、
(ありがとう)
ポツリと小さく呟いた。
「「ん?」」
振り返るハヤテとヒカリ。
聞こえると思っていなかったサクラは慌て、
「は、早く食べよう! いただきまぁ~す!」
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