741 / 894
第十一章
11-35
しおりを挟む
中世の七草であった二人が地世の人々の為に出来る事を模索していた頃――
そこは、空がどこまでも青く澄みきった世界。
小鳥たちが美しくさえずり、木々の枝葉の隙間がやわらかに煌めき、春の陽気を思わせる穏やかな陽が降り注ぐ、桃源郷を想わせる天世の世界であったのだが、
「「「「「…………」」」」」
ある者は悲し気に、ある者は怒りに、それぞれ抱く感情は別ながらも、唖然とした表情で何かを見つめていた。
その者たちは、中世の七草ラディッシュたち勇者組。
そして視線の先にあったのは、
《破壊の限りを尽くされた、とある村》
以前に天世で目にした村々と言えば、中世の民からすれば現実離れしたほど穏やかな、牧歌的風景絵画を思わせる光景であったが、今、一行の目の前にあるのは、
「「「「「…………」」」」」
畑は踏み荒らされ、燃えた家屋が炭と化し、村人たちに心地良い木陰を提供していたであろう木々も容赦なくへし折られ、粉砕され、平穏が日常であった筈の世界は、さながら世紀末の様相。
勇者組はリンドウの首飾りのチカラを使った導きにより、無事に天世に到着していたのであった。
彼女が選んだ出現場所は天世の中枢である天宮(てんきゅう)から遠く離れた、元老院に対抗する組織の拠点があった場所の近くであり、ヒレンが渡った場所の近く。
流石に何が待ち受けているか分からない拠点のド真ん中や、ヒレンが渡った場所を出現場所にするのはあまりにリスクが高く、少し離れた森の中を選び、そこから彼女が目指したであろう拠点に徒歩で向かっていたのだが、
「近くの村が気になるから、ちょっとだけ寄り道するのしぃ♪」
リンドウたっての希望で脇道に逸れていた。
そしてこの時の彼女は、楽観していた。
攻撃を加えたのが地世王ラミウムの指示であり、よもや天宮から遠く離れたこの地は、
《さほど大きな被害を受けてはいないだろう》
しかし、その認識は甘かった。
現実は、過酷であった。
目にした光景は戦争の激戦地のような有り様であり、人の存在の消え失せた村の中を、焦げた異臭だけが未だ漂う中を、
「酷い……」
悲嘆に暮れるラディッシュは仲間たちと歩いた。
要所要所に残る地世のチカラの汚染や、獣たちの数多の足跡が、人の手による蹂躙でないのを窺わせる。
あまりに無慈悲で無惨な光景に、
「「「…………」」」
ニプルウォート、カドウィード、幼きチィックウィードが言葉を失う中、特に村の以前の姿を知るリンドウは衝撃の大きさからか顔を真っ青に、
「…………」
今にも嘔吐して倒れてしまいそうな足取りであった。
歩けど歩けど人の気配は無し。
幸運であったのは襲撃の気配が無いことであろうか。
(休ませてあげた方が良いな……)
村の中央まで来たラディッシュは気丈を装い続けるリンドウを気遣い、あえて彼女の名は口に出さず、まるで自身のワガママであるかのような口振りで、
「みんなも疲れたと思うし、幸いここは開けた場所で見通しが利くから、ちょっと休もうよ~♪」
休息の催促をした。
本来ならば家々に囲まれている村の中央で、見通しが利く。
皮肉な話ではあるが、村はそれ程までに徹底的に破壊し尽くされていた。
破壊したのは送り込まれた汚染獣か、合成獣か、はたまた強制合成獣化させられた天世の人の成れの果てか。
情報が著しく不足している中では類推するのも困難であったが、今は何より、
《リンドウを休ませる》
それこそが最優先事項であった。
一先ず、村の中央広場の名残を辛うじて残す場所に陣取り、各々座り、休息を取る。
しかし、
「…………」
ソワソワと落ち着きなく、心が休まる様子の見えないリンドウ。
元気な明るさが服を着て歩いているような彼女が今や、不安げな表情で俯いたかと思えば、拠点があると思われる森の奥に視線を移したりの繰り返し。
長く行動を共にして来たゴゼンは地世に堕とされ、ヒレンは出奔。
加えて百人の天世人の実質的頂点に立ちながら、他の「百人の天世人」の安否も不明のさ中、志を同じく元老院に反旗を翻した仲間たちの安否さえ不明となれば、落ち着きを取り戻せないのも理解でき、
(…………)
彼女の心中の焦りは如何ほどか。
からかいが信条のニプルウォートとカドウィードでさえ迂闊な声掛けを控え、休息を選択したラディッシュは、
(失敗だったかな……)
後悔を覚えた。
そんな中、
(!)
幼きチィックウィードがドロプウォートの座る椅子車を押しながら、不安を拭えぬリンドウの下に。
傍らに近付き、そして不意に、
『!?』
頭を優しく撫で撫で。
あたかも彼女が年下であるかのような、慈愛を以て。
そこは、空がどこまでも青く澄みきった世界。
小鳥たちが美しくさえずり、木々の枝葉の隙間がやわらかに煌めき、春の陽気を思わせる穏やかな陽が降り注ぐ、桃源郷を想わせる天世の世界であったのだが、
「「「「「…………」」」」」
ある者は悲し気に、ある者は怒りに、それぞれ抱く感情は別ながらも、唖然とした表情で何かを見つめていた。
その者たちは、中世の七草ラディッシュたち勇者組。
そして視線の先にあったのは、
《破壊の限りを尽くされた、とある村》
以前に天世で目にした村々と言えば、中世の民からすれば現実離れしたほど穏やかな、牧歌的風景絵画を思わせる光景であったが、今、一行の目の前にあるのは、
「「「「「…………」」」」」
畑は踏み荒らされ、燃えた家屋が炭と化し、村人たちに心地良い木陰を提供していたであろう木々も容赦なくへし折られ、粉砕され、平穏が日常であった筈の世界は、さながら世紀末の様相。
勇者組はリンドウの首飾りのチカラを使った導きにより、無事に天世に到着していたのであった。
彼女が選んだ出現場所は天世の中枢である天宮(てんきゅう)から遠く離れた、元老院に対抗する組織の拠点があった場所の近くであり、ヒレンが渡った場所の近く。
流石に何が待ち受けているか分からない拠点のド真ん中や、ヒレンが渡った場所を出現場所にするのはあまりにリスクが高く、少し離れた森の中を選び、そこから彼女が目指したであろう拠点に徒歩で向かっていたのだが、
「近くの村が気になるから、ちょっとだけ寄り道するのしぃ♪」
リンドウたっての希望で脇道に逸れていた。
そしてこの時の彼女は、楽観していた。
攻撃を加えたのが地世王ラミウムの指示であり、よもや天宮から遠く離れたこの地は、
《さほど大きな被害を受けてはいないだろう》
しかし、その認識は甘かった。
現実は、過酷であった。
目にした光景は戦争の激戦地のような有り様であり、人の存在の消え失せた村の中を、焦げた異臭だけが未だ漂う中を、
「酷い……」
悲嘆に暮れるラディッシュは仲間たちと歩いた。
要所要所に残る地世のチカラの汚染や、獣たちの数多の足跡が、人の手による蹂躙でないのを窺わせる。
あまりに無慈悲で無惨な光景に、
「「「…………」」」
ニプルウォート、カドウィード、幼きチィックウィードが言葉を失う中、特に村の以前の姿を知るリンドウは衝撃の大きさからか顔を真っ青に、
「…………」
今にも嘔吐して倒れてしまいそうな足取りであった。
歩けど歩けど人の気配は無し。
幸運であったのは襲撃の気配が無いことであろうか。
(休ませてあげた方が良いな……)
村の中央まで来たラディッシュは気丈を装い続けるリンドウを気遣い、あえて彼女の名は口に出さず、まるで自身のワガママであるかのような口振りで、
「みんなも疲れたと思うし、幸いここは開けた場所で見通しが利くから、ちょっと休もうよ~♪」
休息の催促をした。
本来ならば家々に囲まれている村の中央で、見通しが利く。
皮肉な話ではあるが、村はそれ程までに徹底的に破壊し尽くされていた。
破壊したのは送り込まれた汚染獣か、合成獣か、はたまた強制合成獣化させられた天世の人の成れの果てか。
情報が著しく不足している中では類推するのも困難であったが、今は何より、
《リンドウを休ませる》
それこそが最優先事項であった。
一先ず、村の中央広場の名残を辛うじて残す場所に陣取り、各々座り、休息を取る。
しかし、
「…………」
ソワソワと落ち着きなく、心が休まる様子の見えないリンドウ。
元気な明るさが服を着て歩いているような彼女が今や、不安げな表情で俯いたかと思えば、拠点があると思われる森の奥に視線を移したりの繰り返し。
長く行動を共にして来たゴゼンは地世に堕とされ、ヒレンは出奔。
加えて百人の天世人の実質的頂点に立ちながら、他の「百人の天世人」の安否も不明のさ中、志を同じく元老院に反旗を翻した仲間たちの安否さえ不明となれば、落ち着きを取り戻せないのも理解でき、
(…………)
彼女の心中の焦りは如何ほどか。
からかいが信条のニプルウォートとカドウィードでさえ迂闊な声掛けを控え、休息を選択したラディッシュは、
(失敗だったかな……)
後悔を覚えた。
そんな中、
(!)
幼きチィックウィードがドロプウォートの座る椅子車を押しながら、不安を拭えぬリンドウの下に。
傍らに近付き、そして不意に、
『!?』
頭を優しく撫で撫で。
あたかも彼女が年下であるかのような、慈愛を以て。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません
ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。
文化が違う? 慣れてます。
命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。
NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。
いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。
スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。
今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。
「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」
ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる