700 / 894
第十章
10-51
しおりを挟む
魔王城内を駆ける中世の七草ラディッシュ、パストリス、ターナップ――
上階へ続く階段を駆け上がりながら、
(これで何度目だろ……)
不思議な感覚に囚われていた。
リアルでのラスボスとの対峙は一度きりが普通であり、一度きりであるが故に「ラスボス」なのだが、それが今回で何度目か。
まるでネトゲにおける「レベリング」や「アイテム集めの周回」のような、同じ行為の繰り返しに、
(無限ループみたいだな……どれがいつの記憶なのか分からなくなる……)
同じ体験を何度も何度も際限なく繰り返し体験しているような感覚、デジャヴェキュ(既体験感)にも似た感覚に囚われるラディッシュであったが、
(これを最後にしなきゃ!)
決意を新たにした。
仲間にさえ打ち明けていない「とある覚悟」を以て。
やがて、
「!」
目に飛び込んで来たのは見慣れてしまった豪華な扉。
謁見の間の入り口を示す物であり、勢いそのまま跳ね開け飛び込み玉座の足元まで続く長い長い赤絨毯の先に、
『キッシッシッ♪ ラディだけを招いた筈なんだが、仕方の無いグランさぁねぇ~♪』
小馬鹿にした余裕の半笑いを浮かべる、
(((ラミウムッ!)))
ドス黒い赤紫の髪に、瞳。
時に無邪気な、時に聖母のような輝きを纏っていた彼女は消え失せ、今や眼前に居るのは、人の怨念を貪り生きているかの如き、拒絶と嫌悪を抱かせる佇まい。
そのような形容に変わり果ててしまった彼女は玉座に座って片肘ついて踏ん反り返り、真上から見下ろすように、
「まぁイイさぁねぇ♪ 元よりアタシが招いた失策さねぇ~♪ それにしても、」
緊張を以て慎重に近付く三人に不敵な笑みを向け、
『ドロプはどうしたのさねぇ~♪』
『『『!?』』』
そして白々しくも、
「あぁ~そうだったさねぇ~♪」
たった今気付いた風な口振りで、
『アンタが痴話喧嘩の末に、半殺しにしちまったんださぁねぇ♪』
『『ッ!』』
激しい怒りを覚える、パストリスとターナップ。
心無いからかいに。
足を止めてうつむき、沈黙してしまったラディッシュが、どれほど心を痛めて来たか、その辛さを間近で見て来たから。
昔から「からかい好きな彼女」ではあったが、人の心を傷付けるようなからかいはせず、容姿と同等の「心根までも」の変わりように二人の怒りは、
(((この人・コイツ)は(ラミィじゃ・姐さんじゃ)ナイッ!))
彼女の軽はずみな言動は、侮蔑は、決別を決意させるに十分であった。
それは傷口に塩を塗られ、悲しき過ちをフラッシュバックしてしまったラディッシュも同じ。
単に落ち込んでいるかに見えたが、彼は怒りに満ちた顔をバッと上げ、
『ドロプまで馬鹿にした言い方をするなァ!』
「「!」」
「!」
溜めに溜めた鬱積を一気に爆発。
自身の事より、
《誰かの尊厳を守る為に怒る》
何とも彼らしい怒りようを、玉座のラミウムは愉快げに「キッシッシッ♪」と笑い、
「アンタは変わらないさぁねぇ~♪」
懐かしんでいるのか、馬鹿にしているのか。
皮肉っているようにも聴こえたが、斜に構えた笑顔からでは、その言葉の真意を知る事は出来ない。
そして、
「だがねぇ」
彼女は笑顔の眼の端だけギラリと光らせ、
『アタシがアタシである為に、ラディ!』
「「「!?」」」
「アンタにはアタシの軍門に下ってもらうさねぇえ♪」
「「「!」」」
指先をパチンと打ち鳴らすと、彼女の背後に十体の合成獣が。
人に近い雰囲気を醸し出す佇まいから、階下で遭遇した精鋭合成獣たちと同等のチカラを有しているのは容易に推察できたが、
(((何か違う!)))
それは三人が、数々の過酷な戦場で磨き上げた直感。
反射的に警戒心を増す姿にラミウムは「キッシッシッ♪」と愉快げに、
「流石ぁさぁねぇ♪」
素直に感心した上で、
「コイツ等ぁ、百体近くの合成獣からグランが選んだ「アタシの為の選りすぐり」なのさねぇ♪」
(((百体?!)))
不穏なキーワードが三人の耳に残る。
目の前に現れた、より強大なチカラを持った合成獣たちから感じる脅威よりも。
上階へ続く階段を駆け上がりながら、
(これで何度目だろ……)
不思議な感覚に囚われていた。
リアルでのラスボスとの対峙は一度きりが普通であり、一度きりであるが故に「ラスボス」なのだが、それが今回で何度目か。
まるでネトゲにおける「レベリング」や「アイテム集めの周回」のような、同じ行為の繰り返しに、
(無限ループみたいだな……どれがいつの記憶なのか分からなくなる……)
同じ体験を何度も何度も際限なく繰り返し体験しているような感覚、デジャヴェキュ(既体験感)にも似た感覚に囚われるラディッシュであったが、
(これを最後にしなきゃ!)
決意を新たにした。
仲間にさえ打ち明けていない「とある覚悟」を以て。
やがて、
「!」
目に飛び込んで来たのは見慣れてしまった豪華な扉。
謁見の間の入り口を示す物であり、勢いそのまま跳ね開け飛び込み玉座の足元まで続く長い長い赤絨毯の先に、
『キッシッシッ♪ ラディだけを招いた筈なんだが、仕方の無いグランさぁねぇ~♪』
小馬鹿にした余裕の半笑いを浮かべる、
(((ラミウムッ!)))
ドス黒い赤紫の髪に、瞳。
時に無邪気な、時に聖母のような輝きを纏っていた彼女は消え失せ、今や眼前に居るのは、人の怨念を貪り生きているかの如き、拒絶と嫌悪を抱かせる佇まい。
そのような形容に変わり果ててしまった彼女は玉座に座って片肘ついて踏ん反り返り、真上から見下ろすように、
「まぁイイさぁねぇ♪ 元よりアタシが招いた失策さねぇ~♪ それにしても、」
緊張を以て慎重に近付く三人に不敵な笑みを向け、
『ドロプはどうしたのさねぇ~♪』
『『『!?』』』
そして白々しくも、
「あぁ~そうだったさねぇ~♪」
たった今気付いた風な口振りで、
『アンタが痴話喧嘩の末に、半殺しにしちまったんださぁねぇ♪』
『『ッ!』』
激しい怒りを覚える、パストリスとターナップ。
心無いからかいに。
足を止めてうつむき、沈黙してしまったラディッシュが、どれほど心を痛めて来たか、その辛さを間近で見て来たから。
昔から「からかい好きな彼女」ではあったが、人の心を傷付けるようなからかいはせず、容姿と同等の「心根までも」の変わりように二人の怒りは、
(((この人・コイツ)は(ラミィじゃ・姐さんじゃ)ナイッ!))
彼女の軽はずみな言動は、侮蔑は、決別を決意させるに十分であった。
それは傷口に塩を塗られ、悲しき過ちをフラッシュバックしてしまったラディッシュも同じ。
単に落ち込んでいるかに見えたが、彼は怒りに満ちた顔をバッと上げ、
『ドロプまで馬鹿にした言い方をするなァ!』
「「!」」
「!」
溜めに溜めた鬱積を一気に爆発。
自身の事より、
《誰かの尊厳を守る為に怒る》
何とも彼らしい怒りようを、玉座のラミウムは愉快げに「キッシッシッ♪」と笑い、
「アンタは変わらないさぁねぇ~♪」
懐かしんでいるのか、馬鹿にしているのか。
皮肉っているようにも聴こえたが、斜に構えた笑顔からでは、その言葉の真意を知る事は出来ない。
そして、
「だがねぇ」
彼女は笑顔の眼の端だけギラリと光らせ、
『アタシがアタシである為に、ラディ!』
「「「!?」」」
「アンタにはアタシの軍門に下ってもらうさねぇえ♪」
「「「!」」」
指先をパチンと打ち鳴らすと、彼女の背後に十体の合成獣が。
人に近い雰囲気を醸し出す佇まいから、階下で遭遇した精鋭合成獣たちと同等のチカラを有しているのは容易に推察できたが、
(((何か違う!)))
それは三人が、数々の過酷な戦場で磨き上げた直感。
反射的に警戒心を増す姿にラミウムは「キッシッシッ♪」と愉快げに、
「流石ぁさぁねぇ♪」
素直に感心した上で、
「コイツ等ぁ、百体近くの合成獣からグランが選んだ「アタシの為の選りすぐり」なのさねぇ♪」
(((百体?!)))
不穏なキーワードが三人の耳に残る。
目の前に現れた、より強大なチカラを持った合成獣たちから感じる脅威よりも。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません
ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。
文化が違う? 慣れてます。
命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。
NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。
いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。
スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。
今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。
「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」
ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
【完結】能力が無くても聖女ですか?
天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。
十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に…
無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。
周囲は国王の命令だと我慢する日々。
だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に…
行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる…
「おぉー聖女様ぁ」
眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた…
タイトル変更しました
召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる