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第十章

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 副隊長を伴った親衛隊隊員たちが意識を失った地世信奉者たちを抱えて姿を消し、静寂が訪れ、

{{…………}}

 何か思う所があるのか微動だにしないキーメとスプライツ。
 するとそんな二人に、

(ナカマをイカクしちゃ「メッ」なぉ♪)

 チィックウィードからの愛ある、優しい苦言が。
 しかし二人は態度を軟化させること無く、

{{あのオトコは、どうするつもり(なんぉ・なんのぉ)……}}
(!)

 あの男とは言うまでもなく「トロペオラム達を監視していた男」の事であり、どうするとは「捕縛」または「排除」をしなくて良いかの改めて問う言葉。
 予てより二人から求められていた回答であり、諭す立場が一転、

(…………)

 沈黙してしまうチィックウィード。
 監視男を、生真面目過ぎて不器用な父親(仮)ラディッシュと重ねて見てしまっていた思い入れがあるだけに、

(…………)

 未だ決断を下せずにいた。
 とは言え、先送りももはや限界。
 雇い主である信奉者たちを捕縛してしまったから。

 指示役が居なくなったからと言って、見逃すことも出来ない。

 何故なら、彼が犯罪行為と知りながら地世信奉者に加担したのは紛れもない事実であり、未遂に終わったとは言え「彼がもたらした情報」でトロペオラム達に命の危機が迫り、そして何よりその事実を知っている彼女こそ、

《中世を守る七草の一人》

 外界に対する認識を失ったドロプウォートの介護をする事となり、七草新メンバーも加わった今となっては「元七草」と称するのが正しいかも知れないが。
「…………」
 情(じょう)と責務の狭間で、揺れるチィックウィード。

 答えの先延ばしが無意味である自覚もあり、やがておもむろ意を決し、
(アノヒトのアシタをみてぇ、ケツダンするなぉ)
{{…………}}
 彼女なりの最終決断を二人に確約した。

 そして一夜が明け、
(…………)
{{…………}}
 物陰から窺うチィックウィード、キーメ、スプライツの視線の先に居たのは、
「…………」
 言わずもがな、幼き自警団トロペオラム、オキザリス、フリージアの巡回を密かなつもりの尾行で監視する例の男。

 依頼主である黒ローブの一団が捕縛されたのを未だ知らぬまま。

 下された「監視の命」を今日も生真面目にこなす背からでは、男が何を思っているか不明ではあったが、
(なぁんか、オチツキのナイせなかなぉ……)
{{…………}}
 いつにも増して、しきりに周囲を気にしている様子が見て取れた。

(サンニンがおそわれないか、シンパイしてるなぉ?)
{{…………}}

 安易な同意を避けるキーメとスプライツ。
 彼女には現実を踏まえ、感情論ではなく公正な眼で、決断を下して欲しかったから。
 
 尾行する男が尾行される、何とも奇妙な絵面(えづら)の中、
(!)
{{!}}
 事態は急転の時を迎えた。

 村に不審者が居ないか巡視する子供たちの前に、大男が立ち塞がったのである。
 大男は腹の虫の居所がよほど悪い様子で、不機嫌顔を前面、

『ガキがチョロチョロしてぇんじゃねぇッ!』

 するとトロペオラムは怯えるオキザリス、フリージアを背で庇いながら、自身の恐怖は懸命に押し殺し、

『オレたちはガキじゃねぇし! オレタチなりに村をまもってるんだ! 大人のクセにコドモにからんでぇはずかしくねぇのかよ!』
「ッ!」

 正論の反発に、男は不機嫌であった赤ら顔を怒りで一層の赤に変え、

『ガキが大人に舐めた口を利いてんじゃねぇえ!!!』
「「「!」」」

 大人げなくも丸太のような太腕を振り被り、事態は一刻一秒。
 信奉者たちの企てでは無いと知るチィックウィード、キーメ、スプライツにとっては不測の事態。

 男の性根を知るのも大事ではあるが、トロペオラムたち三人の安全の確保が何より最優先で、
(たすけにいくなぉ!)
{{(なんぉ・なんのぉ)!}}
 即座に救出へ向かおうとしたその時、

『子供を相手に恥ずかしくないんですか!』

 大男に毅然と苦言を呈したのは、三人を尾行していた筈の男。
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