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第九章
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村から南に延びる街道を疾走する一頭の馬の姿に似た動物――
背には、寝巻の上に上着を一枚羽織っただけのラディッシュの姿が。
進行方向の一点を鋭く、射貫くような眼差しで睨み、馬を駆(か)る彼は手綱を握る手にチカラを込め、
(ラミィの身に何かあったら相手がドロプだったとしても!)
逆鱗に触れられた龍が如く、猛り狂っていた。
怒りで冷静を欠きながらも走る馬上で感覚を研ぎ澄ませ、
(何処に居るドロプ! ラミィ!)
全方位に意識を拡散。
そして、
『見つけたァア!』
二人の気配は、
(盗賊村!)
全ての住人が地世に飲まれ廃村となった、パストリスの故郷である、妖人の村。
彼女と初めて出会った思い出深い村でもあったが、懐古の情など今の彼には皆無。
『ドロプウォーーートォオッ!』
駆ける馬上で怒り、猛る彼の眼には、未だ見えぬ逃亡者ドロプウォートの姿しか映って居なかった。
懐かしき「不帰(かえらず)の森」を突っ切り、辿り着いた倒壊家屋だらけの廃村の真ん中で馬を止めた彼は、
『…………』
村の奥の一点をキツク睨み、
『どうして僕たちを裏切った! ドロプウォートッ!』
そこには待ち構えていたように、凛然とした表情で仁王立ちする彼女の姿が。
対峙する、追跡者と逃亡者。
それは血よりも濃い絆である盟約で結ばれていた、勇者と誓約者。
戦友、親友、それ以上の存在である筈の、追跡者として現れた勇者ラディッシュを前に逃亡者である誓約者ドロプウォートは毅然のまま、
(私は「ドロプ」ではなく……もはや「ドロプウォート」ですわのね……)
無感情な、とても小さな呟きは、寂しさの裏返しか。
しかし表情は、むしろ険しさを増し、
『勇者としての自覚をおろそかに! 「ラミィラミィ」と女の尻ばかり追いかけ回す貴方に、ほとほと愛想が尽きたのですわ!』
「んなっ?!」
原因は自分にあったと知らされ慄くラディッシュであったが、
『だ、だからと言ってぇ!』
怯んでしまった弱さ、後ろめたさを振り払い、
『パストやチィちゃんを傷付けて良い理由にはならないでしょぅが! ラミィを返せぇ!』
彼女に右手を突き出した。
返さなければ「容赦しない」と言わんばかりの眼光を以て。
妖精ラミウムの奪還は、ラディッシにとって最優先事項。
これから激しさを増すであろう「地世との戦い」において必須な存在であったが、そこには戦略的意味合いだけではなく、ラミウムに思いを寄せる彼の個人的な心情が多分に含まれ、当然の言動であった。
とは言え、今のドロプウォートにとっては甚(はなは)だ癇に障る行為であり、
(このような時まで「ラミウム」ですわの!)
強い苛立ちを覚えたが、彼女は激怒するどころか、
『笑止ですわぁあ♪』
「!?」
見下した笑顔で彼の言動を笑い飛ばし、
「貴方を見限ったのが「私だけ」とでも思っていますわのぉ!」
「え?!」
問われた意味が、一瞬理解できなかったが、
(まさか誰か他にも!)
仲間たちと築き上げて来た信頼が揺らいだ。
視線は泳ぎ、動揺あらわな彼は、彼女の左肩を瞬間的に凝視し、
『ラミィ!』
驚愕の声を上げた。
舞い降りドロプウォートの肩に座った、拉致された筈の妖精ラミウムに。
背には、寝巻の上に上着を一枚羽織っただけのラディッシュの姿が。
進行方向の一点を鋭く、射貫くような眼差しで睨み、馬を駆(か)る彼は手綱を握る手にチカラを込め、
(ラミィの身に何かあったら相手がドロプだったとしても!)
逆鱗に触れられた龍が如く、猛り狂っていた。
怒りで冷静を欠きながらも走る馬上で感覚を研ぎ澄ませ、
(何処に居るドロプ! ラミィ!)
全方位に意識を拡散。
そして、
『見つけたァア!』
二人の気配は、
(盗賊村!)
全ての住人が地世に飲まれ廃村となった、パストリスの故郷である、妖人の村。
彼女と初めて出会った思い出深い村でもあったが、懐古の情など今の彼には皆無。
『ドロプウォーーートォオッ!』
駆ける馬上で怒り、猛る彼の眼には、未だ見えぬ逃亡者ドロプウォートの姿しか映って居なかった。
懐かしき「不帰(かえらず)の森」を突っ切り、辿り着いた倒壊家屋だらけの廃村の真ん中で馬を止めた彼は、
『…………』
村の奥の一点をキツク睨み、
『どうして僕たちを裏切った! ドロプウォートッ!』
そこには待ち構えていたように、凛然とした表情で仁王立ちする彼女の姿が。
対峙する、追跡者と逃亡者。
それは血よりも濃い絆である盟約で結ばれていた、勇者と誓約者。
戦友、親友、それ以上の存在である筈の、追跡者として現れた勇者ラディッシュを前に逃亡者である誓約者ドロプウォートは毅然のまま、
(私は「ドロプ」ではなく……もはや「ドロプウォート」ですわのね……)
無感情な、とても小さな呟きは、寂しさの裏返しか。
しかし表情は、むしろ険しさを増し、
『勇者としての自覚をおろそかに! 「ラミィラミィ」と女の尻ばかり追いかけ回す貴方に、ほとほと愛想が尽きたのですわ!』
「んなっ?!」
原因は自分にあったと知らされ慄くラディッシュであったが、
『だ、だからと言ってぇ!』
怯んでしまった弱さ、後ろめたさを振り払い、
『パストやチィちゃんを傷付けて良い理由にはならないでしょぅが! ラミィを返せぇ!』
彼女に右手を突き出した。
返さなければ「容赦しない」と言わんばかりの眼光を以て。
妖精ラミウムの奪還は、ラディッシにとって最優先事項。
これから激しさを増すであろう「地世との戦い」において必須な存在であったが、そこには戦略的意味合いだけではなく、ラミウムに思いを寄せる彼の個人的な心情が多分に含まれ、当然の言動であった。
とは言え、今のドロプウォートにとっては甚(はなは)だ癇に障る行為であり、
(このような時まで「ラミウム」ですわの!)
強い苛立ちを覚えたが、彼女は激怒するどころか、
『笑止ですわぁあ♪』
「!?」
見下した笑顔で彼の言動を笑い飛ばし、
「貴方を見限ったのが「私だけ」とでも思っていますわのぉ!」
「え?!」
問われた意味が、一瞬理解できなかったが、
(まさか誰か他にも!)
仲間たちと築き上げて来た信頼が揺らいだ。
視線は泳ぎ、動揺あらわな彼は、彼女の左肩を瞬間的に凝視し、
『ラミィ!』
驚愕の声を上げた。
舞い降りドロプウォートの肩に座った、拉致された筈の妖精ラミウムに。
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