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第九章
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時は少し時間を戻し――
プエラリアが座する玉座の前で跪く、地世の七草グラン・ディフロイス。
誠(まこと)を以て目線を伏しながら、
「…………」
捧げるように両手で差し出していたのは、バレーボールほどの大きさの「核(コア)のみ」の、黒球(くろたま)の姿と化したフリンジ。
その憐れな姿を見るなり地世の王たるプエラリアは「キャハハ」と笑い、隣に坐する全身鎧に同意を求めるように、
「グランくんもぉ全く無意味なことをするよねぇ~♪ そんなモノぉ捨ておけば良かったのにねぇ♪」
「…………」
嘲笑いに反論することも、表情を変える事も無いグラン・ディフィロイス。
変わらぬ姿勢で目線を伏していると、彼の両手に乗った黒球フリンジが「カッ」と単眼を見開き口早に、
『御言葉ですが魔王様ぁあぁ!』
話に割って入り、
「中世を目にして来た事で当方には「次なる策」があります! 故に何とぞ! 何卒ぉ信頼回復の機会ぉおぉ!」
必死に懇願したが、玉座のプエラリアは、
「クスッ♪」
「?!」
愉快そうに小さく笑い、
「キミはさぁ~賭けに負けたんだよぉ♪」
「!」
「自分の命を対価とした「最期の大勝負」にねぇ♪」
「そっ、それは……」
次の機会は「永遠に無い」のを悟り、
(武人としての責……)
不可避となった死を受け入れた。
(お慕いするプエラリア様の手で逝けるのなら……)
邪な想いも交えつつ。
ところが達観した筈の彼は、
『なぁっ!?』
グラン・ディフィロイスの手の上で驚愕の声を上げた。
その理由とは、死刑執行人として立ち上がったのがプエラリアではなく、
「何故にオマエがぁ立ち上がぅうぅ!」
隣に坐していた、正体不明の全身鎧であったから。
性別すら判別できない程に体躯を鎧で覆い隠し、一歩ごとに鎧を「ガシャンガシャン」と軋(きし)ませ近付く、死神の如き恐怖を振り撒く姿に、
『ちょ、ちょぉ! おぉ、お待ち下さぁいぃ魔王様ぁあ!』
フリンジは堪らず声を上げたが、そこに感じたのは「死を目前にした恐怖」と言うより、全身鎧に対する「激しい怒り」と「激しい嫌悪」。
中の人物が何者であるのか分かっている様子で全身鎧を睨み付け、スグさまプエラリアに、
『せぇ、せめてぇ貴方様の御手で当方に最期ぉおぉ!』
懇願したが、嘲笑いで以て、
「…………」
玉座から動く素振りも見せない魔王。
戦友の死を前にしてもなお閉ざされたままの眼差しは、まるで「目にする価値も無い」と言っているようであり、
「そんな……」
判定は「覆らない」と改めて悟った彼は、近付きつつあった全身鎧に呪いをかけるが如くに、
『キサマなぞに当方がぁ! キサマなぞにぃ当方がぁああぁぁあっ!』
シャアァァァン!
稚拙な連呼は全身鎧の真横一閃により、
「…………」
黙らされ、
「おのぉれぇ……ら……」
短い恨み節が、彼の最期の言葉となった。
プエラリアが座する玉座の前で跪く、地世の七草グラン・ディフロイス。
誠(まこと)を以て目線を伏しながら、
「…………」
捧げるように両手で差し出していたのは、バレーボールほどの大きさの「核(コア)のみ」の、黒球(くろたま)の姿と化したフリンジ。
その憐れな姿を見るなり地世の王たるプエラリアは「キャハハ」と笑い、隣に坐する全身鎧に同意を求めるように、
「グランくんもぉ全く無意味なことをするよねぇ~♪ そんなモノぉ捨ておけば良かったのにねぇ♪」
「…………」
嘲笑いに反論することも、表情を変える事も無いグラン・ディフィロイス。
変わらぬ姿勢で目線を伏していると、彼の両手に乗った黒球フリンジが「カッ」と単眼を見開き口早に、
『御言葉ですが魔王様ぁあぁ!』
話に割って入り、
「中世を目にして来た事で当方には「次なる策」があります! 故に何とぞ! 何卒ぉ信頼回復の機会ぉおぉ!」
必死に懇願したが、玉座のプエラリアは、
「クスッ♪」
「?!」
愉快そうに小さく笑い、
「キミはさぁ~賭けに負けたんだよぉ♪」
「!」
「自分の命を対価とした「最期の大勝負」にねぇ♪」
「そっ、それは……」
次の機会は「永遠に無い」のを悟り、
(武人としての責……)
不可避となった死を受け入れた。
(お慕いするプエラリア様の手で逝けるのなら……)
邪な想いも交えつつ。
ところが達観した筈の彼は、
『なぁっ!?』
グラン・ディフィロイスの手の上で驚愕の声を上げた。
その理由とは、死刑執行人として立ち上がったのがプエラリアではなく、
「何故にオマエがぁ立ち上がぅうぅ!」
隣に坐していた、正体不明の全身鎧であったから。
性別すら判別できない程に体躯を鎧で覆い隠し、一歩ごとに鎧を「ガシャンガシャン」と軋(きし)ませ近付く、死神の如き恐怖を振り撒く姿に、
『ちょ、ちょぉ! おぉ、お待ち下さぁいぃ魔王様ぁあ!』
フリンジは堪らず声を上げたが、そこに感じたのは「死を目前にした恐怖」と言うより、全身鎧に対する「激しい怒り」と「激しい嫌悪」。
中の人物が何者であるのか分かっている様子で全身鎧を睨み付け、スグさまプエラリアに、
『せぇ、せめてぇ貴方様の御手で当方に最期ぉおぉ!』
懇願したが、嘲笑いで以て、
「…………」
玉座から動く素振りも見せない魔王。
戦友の死を前にしてもなお閉ざされたままの眼差しは、まるで「目にする価値も無い」と言っているようであり、
「そんな……」
判定は「覆らない」と改めて悟った彼は、近付きつつあった全身鎧に呪いをかけるが如くに、
『キサマなぞに当方がぁ! キサマなぞにぃ当方がぁああぁぁあっ!』
シャアァァァン!
稚拙な連呼は全身鎧の真横一閃により、
「…………」
黙らされ、
「おのぉれぇ……ら……」
短い恨み節が、彼の最期の言葉となった。
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